① ""地上と宇宙を結ぶ輸送システム ;イプシロンロケット""
(1) 2018年1月18日 更新
イプシロンロケット3号機 打ち上げ成功!
2018年1月18日(木)6時6分11秒、内之浦宇宙空間観測所から高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)を搭載したイプシロンロケット3号機が打ち上げられました。
イプシロンロケット3号機は正常に飛行し、打ち上げから約52分35秒後に予定の軌道でASNARO-2を分離、打ち上げは無事成功しました。
(2) イプシロンロケットとは
ロケットの打ち上げを日常的なものに
イプシロンロケットはロケットの打ち上げが日常的になり、宇宙がもっと身近に感じられる時代の実現を目指した固体ロケットです。組立・点検などの運用を効率化することにより、運用コストの低減を実現し、コンパクトな打ち上げシステムを構築しました。
2013年9月14日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたイプシロンロケット試験機は惑星分光観測衛星「ひさき」を正常に分離し、打ち上げに成功しました。JAXAでは、将来の小型衛星の需要拡大および多様化に対応していくために、イプシロンロケットをさらに進化させるための改良開発に取り組んでいます。
(3)試験機からその先へ
試験機ではH-IIAやM-Vからの技術を継承することで短期間・低コストでロケット機体の開発を行いました。ロケットの打ち上げシステムは機体・設備・運用からなっていますが、試験機では自動点検などを導入し、地上設備のコンパクト化と運用性の革新を果たすことができました。試験機の打ち上げを成功させた後に、機体の性能の最適化を図るために更なる改良開発(強化型開発)に取り組んでいます。
(4) イプシロンロケットの改良にむけた取り組み
強化型開発の大きな目的は「打ち上げ能力の向上(試験機に比べて30%向上)」と「搭載可能な衛星サイズの拡大」です。試験機ではフェアリングの中に覆われていた2段モータを大型化してフェアリングの外に出すことによって推進薬量を約1.4倍に増加させることが可能となり、また、フェアリング内部に衛星と3段のみを格納することで、より大きな衛星が搭載できるようになりました。さらにロケット構造や電子機器の軽量化を図っています。
(5) イプシロン構造
② イプシロン (wkipedia)
(発射台上のイプシロンロケット2号機)
イプシロンロケット(Εロケット、英訳:Epsilon Launch Vehicle)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とIHIエアロスペースが開発した小型人工衛星打ち上げ用固体燃料ロケットで使い捨て型のローンチ・ヴィークル。当初は次期固体ロケット (じきこたいロケット)の仮称で呼ばれていた。
③ 概要[編集]
イプシロンロケットは、2006年(平成18年)度に廃止されたM-Vロケットの後継機として2010年(平成22年)から本格的に開発が始まり、2013年(平成25年)に試験1号機が打ち上げられた固体ロケットである。
M-VロケットとH-IIAロケットの構成要素を流用しながら、全体設計に新しい技術と革新的な打ち上げシステムを採用することで、簡素で安価で即応性が高くコストパフォーマンスに優れたロケットを実現することを目的に開発されている。開発が開始された2010年(平成22年)時点では、2段階開発によりM-Vロケットの約3分の2の打ち上げ能力と約3分の1の打ち上げ費用(30億円以下)を実現することが目標とされ、開発第1段階の機体での定常運用で38億円、2017年(平成29年)度頃の開発第2段階の低コスト化機体で30億円以下での打ち上げを目指すとされた[4][6]。初代プロジェクトマネージャ(PM)はM-VロケットのPMを務めた森田泰弘である。
その後、イプシロンロケットの3段階開発構想が持ち上がったこともあったが[脚注 1]、2017年(平成29年)時点では前構想とは異なる3段階での開発計画に変更されている。2013年(平成25年)に打ち上げられた試験機の太陽同期軌道打ち上げ能力は450kg、2016年(平成28年)度に打ち上げられた強化型イプシロンロケットとなる2号機からは同打ち上げ能力が3割向上され590kg以上となった[7]。そして2020年代前半にH3ロケットと技術を共有するシナジーイプシロンを完成させて30億円以下での打ち上げの実現を目指す計画となっている[8]。
試験機の標準型の機体は3段から構成される。第1段にはH-IIAロケット等に使用されているSRB-Aを改良したものを、第2段と3段にはM-Vロケットの第3段とキックステージを改良したものを流用する(試験機の構成と諸元を参照)。強化型では第2段を新規開発し、第3段を中心に試験機の改良型を使用する(強化型の構成と諸元を参照)。
イプシロン (Ε) の名前は、ラムダ (Λ) ロケット・ミュー (Μ) ロケットなど日本で開発されてきた固体ロケット技術を受け継ぐ意味を込めギリシア文字が用いられた[9]。公式には「Evolution & Excellence(技術の革新・発展)」「Exploration(宇宙の開拓)」「Education(技術者の育成)」に由来する。
また試験1号機の打ち上げ後の記者会見で、「ε(イプシロン)」が数学で小さい数字を表し、イプシロンロケットが、ミュー (M) ロケットを受け継ぎながら、全く別次元に変身したロケットなため「m(ミュー)」を横倒しにした「ε(イプシロン)」と命名されたことが明らかにされている[10]。正式な名称のない頃から、一部報道で名称は「イプシロン(エプシロン)ロケット」が有力候補とされていた[11]。
また、ISASのOBなどが参加するトークライブなどでは、「いいロケット」の駄洒落で「Eロケット」→「イプシロンロケット」になったと言う話が公式決定前からアナウンスされていた。
④ 月惑星探査の可能性[編集]
小型衛星打上げ用に計画されているイプシロンロケットであるが、衛星同様に探査機も小型化を進めている中で、月惑星ミッションに挑戦することも十分に可能とされ、4段ロケットに相当する推進薬質量700kg程度の超小型キックモータにより格段に性能は向上、火星や金星に200kgの打上げ能力で惑星探査が十分に視野に入るとされた[24]。
2015年(平成27年)1月に定められた宇宙基本計画の工程表では、「戦略的中型」と呼称される将来の宇宙科学・探査分野での衛星の打ち上げではH3ロケットを優先使用すると定められ、イプシロンロケットは「公募型小型」「革新的衛星技術実証」分野でのみ打ち上げに使用されることが定められた[脚注 7]。
実際、これに沿う形で、3か月後の2015年4月には小型の月面着陸機SLIMをイプシロンロケット5号機で2018年度に打ち上げる計画が示された[25]。打ち上げ時期についてはその後、計画を確実に進めるために2019年度に変更された[26]のち、2016年のX線天文衛星ひとみの喪失事故が遠因となり、結局SLIMの打ち上げにはイプシロンを利用しないことになった[27]。
※ これ[25]が実施されていたら本当に快挙だったのに残念です。