(アブラコウモリ)
(セアカゴケグモ)
(ニホンザル)
① ""東京にいる害獣 歌舞伎町にコウモリ、ビッグサイトに毒グモ""
2018/10/27 16:00
大都会を“コンクリートジャングル”と呼ぶ意味が変わるかもしれない。多くの野生動物が、都心で繁殖を続け、人間の生活に害をもたらしているという。
現代社会においては大都市こそ害獣が増えやすい──そう指摘する専門家は少なくない。日本野生生物リサーチセンター代表の里中遊歩氏の話。
「多くの野生生物にとっての天敵である『野犬』が都内や関東近郊で減ったため、野生動物が街へと降りて来やすくなってきていると考えられます」
ネズミやハクビシンといった野生生物が老朽化した空き家などを棲家としているケースは多いが、それ以外にも都内では害獣による被害や目撃例が相次いでいる。
◆歌舞伎町で「アブラコウモリ」
「アブラコウモリは、家屋の瓦の下や天井裏、換気口などに棲み着きます。人家なら天敵のイタチやヘビが入りにくいので安全なんです」(里中氏)
近頃では歌舞伎町に進出。大量のフンをするため、悪臭被害が出ているという。
「繁華街は夜間も灯りがついているため、アブラコウモリの餌となる昆虫が豊富なことが棲み着いた原因ではないでしょうか」(同前)
◆国際展示場で「セアカゴケグモ」
“害虫”のセアカゴケグモはオーストラリア原産の毒グモだ。昨年8月には江東区の東京国際展示場(東京ビッグサイト)付近で34匹が発見された。
「4年前には都内で初めて三鷹市で見つかって大騒ぎになり、殺処分されましたが、根絶できずに繁殖を始めていると推測されている。セアカゴケグモは地上を徘徊しているアリなどを食べるので、ベンチの裏や自動販売機の下などで繁殖した可能性が高い」(里中氏)
メスに猛毒があり、咬まれると発熱や吐き気に襲われ筋肉麻痺に至ることもある。海外では死に至ったケースも報告されている。
◆六本木で「ニホンザル」
2017年12月、都内各所でニホンザルが目撃され、警察などが捜索にあたる騒動が起きた。六本木のスペイン大使館では屋根の上にいるところを警備員が発見。その後、新宿御苑にも出没した。
「ボスになれなかったオスは群れから離れて単独行動する習性があることに加え、天敵である野犬が減ったことにより都心まで出てきたと考えられます」(里中氏)
害獣対策が一筋縄ではいかない事情について、東京野生生物研究所・小堀睦氏が語る。
「『害獣』の厳密な定義は存在せず、駆除できるものとそうでないものに分かれます。例えば、アライグマは特定外来生物に定められているので捕獲や捕殺が認められていますが、ハクビシンは許可がなければ捕獲できない。そのため、一度増えると数がなかなか減らせない。山林へ誘導したり、ペットが逃げ出して野生化したりしないよう、人間が努力することが必要です」
人間と動物の距離感は実に難しい。
※週刊ポスト2018年11月2日号