※ 本日、最後の記事のです。
① ""スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」の解説パネルが設置されました””
2020年1月6日
📕 国立天文台水沢キャンパスに,スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」解説パネルが設置され,2019 年 12 月 14 日,お披露目セレモニーが執り行われました.
設置されたのはスーパーコンピュータ室東側の道路脇,見学コースに面した場所です.パネルの大きさは高さ 160 cm(パネル部分 90 cm),幅 180 cmで,スパコン室内で稼働を続けるアテルイⅡの計算能力や名前の由来,天文学研究における役割などの解説が日本語と英語で記載されています.
暖かな日差しの中で行われたセレモニーでは,多くの方々に見守られながら,関係者による解説パネルの除幕が行われました.( 2019 年 12 月 27 日 掲載)
図: 2019 年 12 月 14 日に国立天文台水沢キャンパスでお披露目されたスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」解説パネルと,除幕を行った 6 名.左から,小久保英一郎 国立天文台天文シミュレーションプロジェクト長,本間希樹 国立天文台水沢 VLBI 観測所長,小沢昌記 奥州市長,中野守 クレイ・ジャパン・インク代表取締役社長,大江昌嗣 NPO 法人イーハトーブ宇宙実践センター理事長,田面木茂樹 奥州市教育委員会教育長.Credit:国立天文台
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【解説パネル設置の経緯と運用について】
国立天文台水沢キャンパスに 2013 年に設置された天文学専用スーパーコンピュータは,その愛称を「アテルイ」(NS-04 ATERUI)と名付けられました.
これは今から約 1200 年前に現在の奥州市の地域を治め,朝廷からの軍事遠征に勇猛果敢に立ち向かった蝦夷の英雄・阿弖流為(アテルイ)にちなんだもので,宇宙の謎にも果敢に挑んで欲しいという願いを込めて命名されました.
この「アテルイ」の名は 2018 年から運用が開始された新システムの愛称「アテルイⅡ」(NS-05 ATERUI Ⅱ)として引き継がれ,現在も地域の多くの方々に愛されています.
この地域にちなんだ「アテルイ」の愛称に賛同した奥州市によって,この度,国立天文台水沢キャンパスに「アテルイⅡ」の解説パネルが設置されました.これにより,世界的な研究成果を挙げている学術資源を一般市民の目にも触れるように紹介し,奥州宇宙遊学館などの関連施設の利用促進および満足度向上を図り,市民の生涯学習意欲の啓発などに貢献することを目的としています.
今後の運用は国立天文台が行い,「アテルイⅡ」による最新の研究成果などを盛り込みながら不定期で更新される予定です.スーパーコンピュータが描き出す最先端の宇宙像を,この解説パネルを通して地域の皆様に伝えていきます.
【国立天文台天文シミュレーションプロジェクト長 小久保英一郎 コメント】
現在,アテルイⅡは月一度の保守時間を除いて,1 年 365 日、1 日 24 時間,休みなく計算をし,宇宙の謎に挑んでいます.その計算能力は 1 秒間に 3000 兆回というもので,天文学専用としては世界最速です.今後のアテルイⅡの成果にご期待ください.解説パネルを通して,多くの方にアテルイⅡを知っていただけることを嬉しく思います.設置くださった奥州市に感謝いたします.
現在,アテルイⅡは月一度の保守時間を除いて,1 年 365 日、1 日 24 時間,休みなく計算をし,宇宙の謎に挑んでいます.その計算能力は 1 秒間に 3000 兆回というもので,天文学専用としては世界最速です.今後のアテルイⅡの成果にご期待ください.解説パネルを通して,多くの方にアテルイⅡを知っていただけることを嬉しく思います.設置くださった奥州市に感謝いたします.
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② ""新天文学専用スーパーコンピュータ『アテルイⅡ』始動! ””
■概要
国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(Center for Computational Astrophysics:CfCA)では,天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ」にかわる新たな大規模数値計算専用計算機として Cray XC50 システムを導入し,2018年6月1日より国立天文台水沢キャンパス(岩手県奥州市水沢)にて本格運用を開始します.
新しいスーパーコンピュータシステムは,2013年のアテルイ導入時の約6倍,2014年のアップグレード以降の3倍の理論演算性能である3.087 Pflops(ペタフロップス) に向上しました.この性能によってアテルイではできなかったシミュレーションを行い,「理論天文学の望遠鏡」として新しい宇宙の姿を描き出すことが期待されます.この新システムの愛称は,前システムを引き継ぎ「アテルイⅡ(ツー)」と名付けられました.(2018年6月1日 プレスリリース)
画像1:天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」(クレジット:国立天文台)
■詳細
新型の天文学専用スーパーコンピュータCray XC50,NS-05「アテルイⅡ」が,2018年6月1日より本格稼働を始めます.
アテルイIIは2018年3月まで運用されてきた「アテルイ」と同様に,スカラ型並列計算機と呼ばれるスーパーコンピュータです.計算機の頭脳である「コア」同士をネットワークで繋いで計算情報をやり取りすることにより,大量のコアを同時に使って計算を高速に行います.
アテルイIIには約4万のコアが搭載され,理論演算性能 3.087 PFlops の性能を有します.つまり,1秒間に3000兆回の浮動小数点計算を行うことを表します.これは,2013年のアテルイ導入時の6倍,2014年10月のアテルイアップグレード後の3倍の演算性能になります.
画像2:アテルイⅡの計算ブレード.(a)Ariesネットワークルータ,(b)ノード,(c)CPU.1つのCPUには20コアが搭載されており,2つのCPUで1ノードを構成する.ブレード1枚あたり4つのノードとAriesネットワークルータで構成されている.(クレジット:国立天文台,飯島裕)
アテルイⅡは高速ネットワークで接続され,国内外の天文学者がアクセスし利用することができます.2018年度は約150名の研究者の利用が予定されています.アテルイⅡは,より大規模・現実的なシミュレーションによって,前システムのアテルイでは計算できなかった宇宙の姿を描き出すことが期待されます.
例えば,これまでは実際よりも少ない星の数でしか行えなかった天の川銀河のシミュレーションが,銀河を構成する数千億個の星すべてについて運動を計算することができるようになります.利用者の一人で,シミュレーションによって星の誕生の研究をする法政大学の松本倫明教授は「前システムと比べて約半分の時間でモデルの計算できるようになりました.
これにより,色々な実験的なシミュレーションをすばやくできるようになりました.これは我々のように,観測との比較を視野に入れた研究にとって重要なことです」 と述べています.
天文学は,宇宙を望遠鏡で直接見る「観測天文学」と,物理学と数学によって現象を記述し理解する「理論天文学」を両輪にながらく発展して来ました.
しかし,コンピュータが発達した今,理論だけでは解くことができない方程式を数値的に解き,シミュレーションによってコンピュータの中に宇宙や天体を実験的に作り出し観察する「シミュレーション天文学」が,宇宙を理解するために欠かすことのできない第三の手法となっています.
👤 国立天文台天文シミュレーションプロジェクト長の小久保英一郎教授は,アテルイⅡへの期待を以下のように述べています.「現代天文学におけるシミュレーションの役割はますます大きくなってきています.観測される天体がなぜそのように見えるのか,また,観測できない宇宙や天体では何が起きているのか,など物理に基づいたシミュレーションによって描き出すことができます.
新しい『理論天文学の望遠鏡』として,アテルイⅡが超新星爆発の機構や,銀河の形成と進化,恒星と惑星系の起源などの問題を解き明かすことを期待しています.」
■アテルイⅡの性能諸元
アテルイ (2013.4-2014.9) | アテルイ (2014.10-2018.3) | アテルイⅡ (2018.6-) | |
理論演算性能 | 0.502 Pflops | 1.058 Pflops | 3.087 Pflops |
総主記憶容量 | 94.25 TB | 135.6 TB | 385.9 TB |
CPU | Intel® Xeon®プロセッサ E5-2670 (2.6GHz, 8コア) | Intel® Xeon®プロセッサ E5-2690 v3 (2.6GHz, 12コア) | Intel® Xeon® Gold 6148 プロセッサ (2.4GHz, 20コア) |
全コア数 | 24,192 | 25,440 | 40,200 |
【アテルイⅡデザインコンセプト】
画像3:「アテルイⅡ」筐体パネル正面(クレジット:国立天文台)
アテルイⅡの筐体デザインは,前システム・アテルイの筐体デザインも手掛けた,美術家の小阪淳氏が制作しました.アテルイⅡのデザインコンセプトについて小阪氏は以下のようにコメントを寄せます.
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新しいアテルイが纏うデザインにおける問題は,素地となる筐体そのもののデザインをいかに扱うかというものでした.新たに加えることができるのはプリント部分のみですので,どうしても黒いフレームが視覚的に大きな要素となってしまいます.このフレームはある規則性を持って並んでいますが,今回はさらに細かな分割をかけることによって全体を均質な縦割りのフレームとみなし,そのフレームに従ってデザインを行っています.
「阿弖流為 弐」の文字にあたる部分は,印章などで用いられる「篆書」とよばれる書体をベースにデザインしています.印章が石に刻まれるように,このデザインも石(チップ)を中心に据える物体に刻まれるわけです.(小阪淳)
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