けふのうちに とほくへいってしまうわたしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゆとてちてけんじゃ)
うすあかくいっそう陰惨な雲から
みぞれはびちょびちょふってくる
(あめゆじゆとてちてけんじゃ)
青い蓴菜のもようのついた
これらふたつのかけた陶椀に
おまえがたべるあめゆきをとろうとして
わたくしはまがったてっぽうだまのように
このくらいみぞれのなかに飛びだした
(あめゆじゆとてちてけんじゃ)
蒼鉛いろの暗い雲から
みぞれはびちょびちょ沈んでくる
ああとし子 死ぬといういまごろになって
わたくしをいっしょうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまえはわたくしにたのんだのだ/略
パンデミック時代の記憶を伝える「闘病・介護・看取り・再生詩歌集」より。
1918年から世界的流行のスペイン風邪は東京女子大家政学部に在籍していた宮沢賢治の妹トシも11月頃罹患した。
トシが肺炎で亡くなる遠因をスペイン風邪が引き起こした可能性があるかもしれない。
1933年に亡くなった賢治の頃にはこのスペイン風邪はA型インフルエンザと解明された。
トシを看病していた賢治の肺に何らかの影響を与えたであろうと、賢治が後で肺を病んでいることから・・・
100年前に起こったことと同じことが今パンデミックのコロナ過が4年目になった。
スペイン風邪はほぼ3年で収束、しかし科学文明もより発達している現代で4年にもなろうとしている。
考えさせられますね。表紙の絵はムンクの「病める子」。