私は長年この街に住んでいますし、長年この街で仕事もしてきました。





学生時代もこの街にある大学に通っていたので、すでに40年以上になります。
このマーケットの名前は、ウワサでは聞いたことがありましたが、行ったこともありませんでしたし何処にあるかも知らなかったのです。
耳に入ってくるウワサは悪いものではなく “穴場の店がある” といった、食通には聞き逃せないグルメ情報でした。
スマホの地図アプリで『◯◯精肉店』を検索し、スマホの地図とにらめっこしながら近くまで行ってみたもののお店はすぐには見つかりませんでした。
何度も通ったことのある道でしたが、それらしき精肉店が見当たらないのです。
それもそのはず、その精肉店は道に面した狭くて暗い入口を入って行った奥にあるのです。
同じ道を何度か行ったり来たりしているうちに、やっと『△△マーケット』の入口に気が付きました。

そして、狭くて暗い通路を恐る恐る進んで行きました。

散髪屋の女主人からの話とこれまで何度か耳にしていた “穴場の店がある” という『△△マーケット』の噂話が何十年の時を経てやっと私の中で重なったのでした。
ただし、戦後のドサクサに紛れて造られたマーケットを思わせるような雰囲気が漂っています。

もはや “レトロ” を通り越し、
『21世紀の現代に、再開発の波から免れてこんなマーケットが残されていたのか… 』
と思うほどの、まるで昔にタイムスリップした感じのマーケットだったのです。

マーケットの通路は両手を広げた程の幅しかありません。
現在、お店は数店しか営業しておらず、シャッターが降りた店舗が目立ちます。
昔ながらの喫茶店や定食屋さん、餃子屋さん、精肉店が数店がんばって店を開いているのでした。
