私は今まで自分から進んで家で料理する事はありませんでした。
連れ合いが風邪などで寝込んだ時に、それこそカレーとかシチューとかを昔の登山合宿を思い出しながら作った事はありましたが… 。
スーパーなどではちゃんとトレーに入っているので適当に手にとればいいのですが、ここは精肉店です。
「⬜︎⬜︎肉を▽▽g」という風に注文しなければいけません。
「カレーに入れたいのですが… 」と、聞いてみました。
「 “カレー・シチュー用牛肉” がありますよ」と、その店員さんが教えてくれたので、迷う事なくその肉を買いました。
SH▲RPのホットクックメニュー表に記してある4人分の牛肉の分量です。
その価格がスーパーなどで買う肉と比べて高いのか安いのかもよく分かりませんでした。
男性店員さんは「一口大に切っておきますか?」と、尋ねてきました。
私は何も分からず、「あー…、お願いします… 」としか答える事ができません。
これでは、初めてのお使いに行った子どもと同じだなー、と情けなく思ったものです。
その1週間後も、またその1週間後もその精肉店に通いました。
そのうちにカレー以外の料理にも挑戦してみたくなり、私の大好物のトンカツや角煮の材料の豚肉やチキンカレーやハンバーグを作る為に鶏肉や合い挽き肉、はたまたスペアリブや焼き肉用のお肉まで購入するようになったのです。
何回かその精肉店を尋ねた時でした、その店の年配の店主が私に声を掛けてきたのです。
「あら、いらっしゃい!」
「いつもありがとうございます。今日は何にしましょうか?」
私が何にしようか考えていると、年配のご主人は缶コーヒーを持って来て、
「いつもありがとうございます。これどうぞ!」と言いながら私に手渡されたのです。
私はビックリしてしまいました。
『人のいいご主人だなぁ… 』と思い、断る理由もなかったので愛想笑いしながら有り難く頂きました。
そんな事が数回か続いたのでした。