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原発事故関連雑記2:放射線リスクに関するICRPモデルとECRRモデル

2011年06月17日 23時32分28秒 | 生命生物生活哲学
2011年6月17日-1
原発事故関連雑記2:放射線リスクに関するICRPモデルとECRRモデル


 日本学術会議は2011/6/17づけで、「日本学術会議会長談話「放射線防護の対策を正しく理解するために」」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d11.pdf

を出した。

  「私たち日本学術会議は、日本の放射線防護の基準が国際的に共通の考え方を示す ICRP の勧告に従いつつ、国民の健康を守るためのもっとも厳しいレベルを採用していることを、国民の皆さんに理解していただくことを心から願っています。」

と述べている。この文中には、ICRPに対しては

  「ICRPのモデルは放射線リスクを過小評価している」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A

と批判的なECRR(欧州放射線リスク委員会)の報告については、

  「英国健康保護局(en:Health Protection Agency)はECRRについて「公的機関と関わりのない独自(self-styled)の組織」とした上で「恣意的であり、十分な科学的根拠を持たず、ICRPについては多くの曲解が見られる」と批判」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A

があるらしいことや、「非公式な委員会」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A

だからだろうか、出てこない。

 さて、ICRPの防護基準の3つの原則には、

  「第2に、今回のような緊急事態に対応する場合には、一方で基準の設定によって防止できる被害と、他方でそのことによって生じる他の不利益 (たとえば大量の集団避難による不利益、その過程で生じる心身の健康被害等)の両者を勘案して、リスクの総和が最も小さくなるように最適化した防護の基準をたてること」

という、第2の原則があるらしい。「大量の集団避難による不利益やその過程で生じる心身の健康被害等」をどう算定するのか知らないが、余計なお世話といいたくなる。推定値次第で、放射線リスクを相対的に考慮しないことになる。

 このICRPの防護基準の原則を適用して、

  「今回のような放射性物質による環境汚染が発生した場合にも、年間 1mSv と いう平常時の線量基準を維持するとすれば、おびただしい数の人が避難しなければならないことになり、かえって避難者の多くにそのことによる身体や心の健康被害などが発生する危険性があります。」(日本学術会議会長談話「放射線防護の対策を正しく理解するために」)

となったらしい。転倒している。避難による身体や心の健康被害などが発生しないように避難する算段を、日本学術会議は提案してもらいたい。

 ところで、日本学術会議緊急講演会「放射線を正しく恐れる」が開催される予定らしく、

  「◆日 時: 2011年7月1日(金)10時00分~12時30分
   ◆場 所: 日本学術会議 講堂
   ◆主 催: 東日本大震災対策委員会
     〔略〕
   第二部 放射線から身を守る仕組み
    講演3.国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告の意味
        佐々木康人 (社)日本アイソトープ協会常務理事(連携会員)
    
    講演4. 非常事態にどうすべきか
      柴田徳思 
日本原子力研究開発機構J-PARCセンター客員研究員(連携会員)」

とあり、質問をぶつければ、きわめて有意義に参加できるのではないだろうか。放射線を「正しく」「恐れる」ことができるそうである。

 
 さて、ECRRのクリス・バズビー博士によれば、

 1a. ICRP(国際放射線防護委員会)は、内部被曝をリスクモデルの計算に入れていない。
 1b. ECRR(欧州放射線リスク委員会)、内部被曝をリスクモデルの計算に入れている。

となるだろう。あるいは、

 1a. ICRP(国際放射線防護委員会)は、内部被曝をリスクモデルの計算に少ししか入れていない。
 1b. ECRR(欧州放射線リスク委員会)、内部被曝をリスクモデルの計算に大きく入れている。

となるのかもしれない。

 
  「ICRPやECRRの学者・研究者の間では、「被曝線量」に安全値はない、できれば自然の放射能も避けるべきだという医学的知見がコンセンサスになっていることを考えれば、ICRPの主張は原発存続発展のためには少々の放射線被害者がでてもやむを得ない、という主張に他ならない。

 もう少しわかりやすく平たく説明すれば、京都大学・原子炉実験所、助教・小出裕章が次のように言うとおりである。

『 (放射線被曝の安全値)そんなものはない。今日本の放射線被曝線量限度は、国際放射線防護委員会(ICRP-International Commission on Radiological Protection)の勧告を基にして基本的には決められていますが、そのICRPも一貫して「絶対安全な被曝量」はない、と云っています。
ただし彼らは(ICRPは)、原子力産業界の片棒を担ぐ立場ですから、被曝線量基準値を決めて、それを守りなさいという風な勧告を出す。そしてそれがあたかも安全値であるかのように装っているわけです。その彼らも言うように、被曝線量に関して絶対安全値はありません。』
(小出裕章インタビュー第2回②の「被曝に絶対安全値はない」の項を参照のこと)」
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/fukushima/yamauchi_ECRR2003.html

 
 ところで、ECRRによれば、

 「1955年以降、放射線の放出で死んだ人の総数は6000万人を超えている」

というらしいが、どういう算定方法によるのだろうか?


 
 「<参考資料>欧州放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Risk ? ECRR)2003年勧告(ECRR2003翻訳委員会-改訂版)」は、
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/fukushima/yamauchi_ECRR2003.html

 「ECRRのクリス・バズビー博士がICRPモデルの一面性を批判、内部被曝を考慮すべき」は、
 http://makikoi.blog47.fc2.com/blog-entry-184.html
 http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/286.html

 「福島原発事故:小出裕章インタビュー第2回」は、
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/fukushima/20110413_2.html