ゆりさん「はい。」
先生(お,めずらしい。おとなしいゆりさんが,がんばって手を挙げてるぞ。これは当ててあげなきゃ)
「ゆりさん。どうぞ。」
起立するゆりさん。
ゆりさん「2つのビンの水を,コップに移し替えて,何杯入るかを調べるといいと思います。」
先生「なるほど~!」
ゆりさんのナイスアイディア。
でも,発表する声が小さすぎて,全然他の子に聴こえていません。
先生「ゆりさん,とてもいいアイディアだから,みんなに聴こえるように言ってみよう。ほら,みんなはゆりさんの発表をよく聴いてください。」
体をゆりさんの方に向けるクラスの子たち。
でも,ゆりさんははずかしそう。
みんなの方を向くことができず,目の前の先生の方ばかり向いています。
先生「ゆりさん。先生でなくて,みんなの方を向いて言ってごらん。」
ゆりさん「え・・・」
ここで,ゆりさんはギブアップしてしまいました。
ゆりさんにとっては,頼りにしている先生に発表することが精一杯だったのですね。
それでも,よくがんばりました。
こういうときは,ゆりさんに新たなハードルを設けるのではなく,先生が工夫してあげましょう。
子どもの発表を,先生はその子の一番遠い所で聴く!
そうすればいいのです。
要するに,ゆりさんの反対側に移動し,ゆりさんから一番遠いところに位置します。
もしゆりさんが,一番前の,一番右側にいるなら,先生は一番後ろの,一番左側まで移動します。
そうすれば,ゆりさんはそこにいる先生に向かって発表するので,自然と声は大きくなります。
そして,ゆりさんと先生の間に挟まれた他の子たちみんなもその発表に交じることができます。
同時に,先生は発表するゆりさんを受け止めながらも,それを聴く立場の子たちへも注意を向けることができます。
結果,ゆりさんの発表は,単なる先生とのやりとりではなく,クラスみんなへ向けた発表となります。
授業中の基本のテクニックですね。
子どもが発表するとなると,その子のそばで聴いてあげようとする先生は,優しいのかもしれませんが,もう一歩ですね。
もちろん,いつも教卓のあたりにズデンと位置して動かない先生じゃいけません。
フットワーク軽く,そして子どもと授業のことを考えた位置にサッと移動できる先生になりたいものです。