以前,とある研究発表大会に参加した時の話です。
体育の大会でした。
各学校の発表者がそれぞれの実践を発表する中で,ある先生の発表が印象に残りました。
まず,体育の発表だというのに,その先生自体が,(失礼な話ですが)体育の雰囲気がない先生でした。
ぽっちゃりとしていて,おそらく40代くらい。
とても優しく,温かい雰囲気のある先生で,その先生自身も,発表の中で
「私が体育の発表をするなんて,場違いなのですが」
「専門は音楽で,まさか体育の研究をすることになるなんて」
「めっきりの運動オンチです」
と繰り返していました。
他の参加者は,やっぱりそれなり「体育やってます!」って感じの先生が多い中で,その先生の発表は,一味違う感じがして,注目を集めていたように思いました。
「体育は苦手」
と言いながらも,その先生の発表は内容がしっかりとしていて,きちんとした成果も表れていました。
その先生の発表が終わり,質疑応答へ。
参加者の一人が,手を挙げました。
「とてもいい実践がされていて,子どもたちものびのびと育っている様子が伝わってきましたが,それは何より,先生のその温かい人柄が為すものでは」
私もこの発言に
(うんうん)
と聞いていました。
「特に,運動が苦手な下位の子たちへのサポートが手厚く丁寧になされていた点が印象に残りました。」
(うんうん)
「先生は,ご自身が運動が苦手とおっしゃっていましたが,だからこそ,そんな子たちへのサポートがしっかりとできるんでしょうね。」
(うんうん・・・ ん?)
「きっと,できない子の気持ちがよく分かる先生なんだと思います。私にはそれがなかなかできなくて。とても参考になりました。ありがとうございました。」
(・・・あ)
最後まで聞いて,ずしんと胸の奥に来るものがありました。
「できない子の気持ち」
という言葉です。
(今の先生は,「私にはそれができない」と言ったけど,それって… 思い切り自分にもあてはまるのでは)
(私は,できない子の気持ちが分からない先生なのでは)
それ以降の話はあまり耳に入らないほど,考え込んでしまいました。
(続きは次回)