何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

見えないものを瞳に映して

2016-02-18 12:30:00 | 自然
「空の星にも庭の草木にも」のつづき

最近あまり良いニュースがないので、国産ロケット打ち上げ成功のニュースは嬉しかった。

<天体観測衛星の打ち上げ成功 「ひとみ」と命名>NHK2月17日 20時19分配信より一部引用
ブラックホールなど宇宙の謎に迫る日本の新しい天体観測衛星が17日午後5時45分、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケット30号機で打ち上げられ、打ち上げは成功しました。JAXA=宇宙航空研究開発機構は、これまで「アストロH」と呼んでいた衛星の名前を17日夜、新たに「ひとみ」と命名しました。
JAXAは、「ひとみ」と名付けた理由について、宇宙を見る新しい目としてさまざまな発見を期待したいという思いを込めたとしています。
地球上では大気に吸収されて観測できない「エックス線」を、これまでより最大100倍高い感度で捉えることができ、ブラックホールの成り立ちなど宇宙の謎の解明につながると期待されています。


14日(日曜)NHKラジオで「見えないものを見る」というテーマで重力波についても語られていたと書いたが、「14歳のための時間論」(佐治晴夫)を注意して読んでいると、やはり「見えないものを見る」という表現に出くわした。
物理学や天文学を修めると、目の前に見えている事象だけでなく、今は見えてはいないけれど現実・現在を成り立たせている根本的原理を見たくなる(知りたくなる)のかもしれない。
物理学にも天文学にも縁がない私なので、宇宙の原理は分かるはずもないが、それでも夜中にワンコのチッチで夜空を見上げたとき、そこに永遠の時間を感じ(例え現世でワンコと別れる時が来ようとも)何時か必ず夜空でワンコに出会える日がくると信じることができたのは、見上げた先にあるのが犬星だったからばかりではないことが、相対性理論によって裏付けられたと云えば、曲解・誤解・我田引水と方々からお叱りを受けるだろうか。
「14歳のための時間論」によると、宇宙や原子が解明されるに従い、時間を空間と関係のない「絶対的時間」とするニュートンの論理では無理が生じてきた、そこで生まれたのが、アインシュタインの時間と空間を結び付けた「相対性理論」だったそうだ。
見ることの出来ない時間を空間の変化により感じること、それが、膨張する宇宙(空間)と時間の原理の根っこにあるようだ。

だから、夜空を見上げると誰しも、ただ星が美しいと感じるだけではなく、永遠の時間までも感じるのかもしれない。
だから、ワンコと夜空を見上げる度に、永遠に時間を共有していけると感じたのかもしれない。
如月の宵の犬星を仰ぎ見て、ワンコと語り合う

「14歳のための時間論」より
『私たちが夜空を見上げるとき、そこにはたくさんの星が見えます。赤い星、青い星、明るい星、暗い星…、その姿はさまざまです。しかも、遠い星、近い星も、同時に見ています。 そして、遠 い星ほど、より昔に 、その星を旅立った光を、私たちは見ていることになります。
ですから、いま、この瞬間に、たくさんの星を同時に見ているということは、遠い過去から近い過去までの時間の「ひろがり」を、いまという瞬間に見ているということになります。
その一方で私たちは、遠いところにある星と、近いところにある星を、“いまという瞬間”に見ています。ですから、遠いところから近いところまでの、宇宙という空間の「ひろがり」を、見ていることにもなります。
そこで、ひとつの結論です。
星を見上げるということは、広大無辺な宇宙の「時間」と「空間」を、“いまという瞬間”にまとめて体験している、ということにほかならないのです。』

ところで、皇太子ご夫妻の趣味の一つに天体観測があることは、雅子妃殿下が誕生日の会見で何度か述べておられる。
夜空を見上げ永遠の時間を体感しておられるお二方だから、長きにわたる病の時・苦しみの時を、静かに穏やかに受け留めておられるのかもしれない。
それは、もちろん辛く苦しい時間であるに違いないが、時間の長さを人の営みと権力の儚さという点から学んでおられる歴史学者の皇太子様と、地球規模の視野と物理を解する頭脳を有する雅子妃殿下だからこそ、御自身の苦しみや困難の意味を長い歴史的時間と地球的摂理に照らしあわせて考えておられるのだと思っている。
だからこそ、のたうちまわりたくなるような苦しみの連続のなかにあって、知性と品格の砦を守りとおしておられるのだと思う。
春はあけぼの ジュピターに皇太子御一家のお幸せを祈っている。

ところでpart2
アメリカの研究チームが米国2カ所にある装置「LIGO(ライゴ)」の性能を大幅に高めて、昨年9月から今年1月上旬まで観測・分析してきた結果、アインシュタイン最後の宿題ともいえる重力波をとらえたことを、ノーベル賞級だとニュースが伝えている。
岐阜県飛騨市の神岡鉱山跡に建設中の大型低温重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」が稼働さえしておれば、後塵を拝することはなかったろうにと悔しいが、失望することなかれ、(NHKラジオによると)「LIGO」が二点で測量しているため重力波の存在しか証明できていないのに対して、来月15日に試運転を開始する「KAGRA」は三点測量の原理を用いて、重力波の存在だけでなく、その出所まで明らかに出来るというのだ。
夜空を見上げ、見えないものを見るべく探究する人々の健闘を祈っている。

「ひとみ」(ASTRO-H)




写真出展
宇宙航空研究開発機構JAXA http://www.jaxa.jp/
http://www.jaxa.jp/topics/2016/index_j.html#news6956