何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

信頼せよ、信頼されるべく努力せよ

2017-12-08 22:25:55 | 
毎年12月8日は、高校の世界史の授業を思い出す。

12月8日、世界史の先生は「今日は何の日だ?」と生徒に問いかけた。
挙手をして答える者はいなかったが、おそらく誰もが思い浮かべたことは同じだったと思うのは、先生の答えに、教室の空気が一瞬にして鼻じらんだものになったからだ。

その世界史の先生的には、今日12月8日はジョンレノンの命日なのだそうだ。

そんなことを思い出しながら、現下の状況には打ってつけ?の物騒なタイトルの本を読んでいた。

「日本核武装」(高嶋哲夫)
本の帯より引用
『尖閣諸島を巡って海上自衛隊と中国の艦船の睨み合いが続く中、国内では日本の核武装に向けた詳細な計画書が見つかった。表沙汰になることを恐れた政府は、防衛省の真名瀬に秘密裏に全容解明するよう指示。真名瀬は計画に携わる大手企業や元自衛隊幹部、政界重鎮を突き止め、核爆弾完成が間近に迫っている事実をつかんだ。そのとき、東シナ海では日中の艦船が衝突。北朝鮮は核実験を実施し、弾道ミサイルが日本上空を通過する。
『M8』『TSUNAMI』の著者、構想15年、戦慄の予言小説! 』


本の帯に「戦慄の予言書」とあるように、高嶋氏の自然災害を扱った作品には予言的・啓示的作品と思われるものが何作かある。
特に2005年に出版された「TSUNAMI 津波」は、地震と津波にやられた原子力発電所が水蒸気爆発をおこすという作品だが、出版当時に読んだ時は理解できなかった本の内容が、東日本大震災後に再読すると、さながら福島原発事故のドキュメンタリーのように思えてきたものだ。
そのような作品を高嶋氏が書けるのは、高嶋氏が核融合の研究者として日本原子力機構に勤務されていたからだと思われるが、そうであれば一研究員が想定しうる危機管理を、なぜ政府や原発関連企業がしてこなかったのか?という根本的な問題にぶち当たるし、そもそも科学を万能だとする高嶋氏の作品に見られる僥倖(とびきり優秀な人や物の偶然の出会いで危機が回避される)は、現実を知ってしまった者からすると、非現実的にも思えてしまう。
だが、そのような忸怩たる思いを別にしても、高嶋作品は考えさせられる課題が多く含まれる、やはり読んでおくべき良書だと思っている。

前置きはそれぐらいにして、本書「日本核武装」は、日本が独立国家として自国の平和をいかに築いていくべきかということをストレートに問うている。

被爆三世の主人公(防衛相キャリア官僚)は、平和を堅持するためには非核三原則を守るべきだという信念を持っていたが、親友(一等海尉)が尖閣沖で任務中に無念の死を遂げたことから、立ち位置を変える。
本書の大部分は、原子力爆弾と諜報活動の指南書かと思えるものだが、そのなかに領土問題について素人にも分かりやすい例が、一つある。(『 』「日本核武装」より引用)
『でかくて腕力の強い いじめっ子に消しゴムを盗られた。大したものじゃないからいいや、と与えるか。
 次は鉛筆を要求してくる。それに応じれば、さらに筆箱を盗られる』

これを、単純な領土面積の問題と捉えてはならないのだという。
『その消しゴムがレアもので一万円の価値があるかもしれない。
 相手はそれを知ってて、自分のだと要求してくる』

では、何が其処を、一万円のレアものに なさしめているのか?
日本が世界第六位の排他的経済水域を有する国、という事実だという。

この問題について、楡周平氏は「ミッション 建国」で全く異なる解決策を示していた。「ミッション 崩壊」
氏は、現在日本が直面している年金などの福祉問題や領土問題よりも、人口減少問題に強い危機感を有し、グレートリセットなる物騒な考えを提示していたが、氏が領土問題に比較的ドライな対応をとるのは、外国企業でグローバルな活躍をされた経験があるからかもしれない。

両作品を読んだ後でも、何が正しいのか私には分からないが、本書で紹介されているIAEAの理念や態度は、領土問題であれ経済摩擦であれ、大問題に立ち向かう時に指針となる言葉だと思っている。

『信頼せよ、されど検証せよ』(核に対するIAEAの態度)
『信頼せよ、しかし、手を抜くな』(IAEA査察国の理念)


中東で、極東で、不穏な動きが満ち満ちている今12月8日、祈りをこめてイマジンを聞きたいと思う。