うれしいニュースが飛び込んできました。
朝日新聞の記事を転載しますと、
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に、世界の絹産業の発展に重要な役割を果たしたとして政府が推薦していた「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)が登録される見通しとなった。ユネスコの諮問機関が勧告した。6月15日からカタールのドーハで開かれる世界遺産委員会で最終的に決まる。
だそうで、まことにめでたい
私が旧富岡製糸場に出かけたのはもう6年前の2008年6月で、そのときのことは、こちらの記事でチラリと書きましたが、世界文化遺産登録が確実になったことをお祝いして、撮ってきた写真
を紹介しましょう。
日本史の授業では、明治初期の「殖産興業」の一例として必ず登場する「富岡製糸場」、その設立は明治5年(1872年)のこと。
西洋の進んだ機械式製糸を日本に移植することと、製糸工女を指導・育成する人たちの訓練する施設だったのですから、いわば「製糸業のトップガン」とも言える場所だったわけですな。
という近代日本の足がかりとなった重要な施設が、140年以上の時を超えて良好に維持・保存されていたことが感動的
ですらありました。
しかも驚くことに、1987年まで現役の製糸場として使われていたとのこと。
けさのNHKニュースでは、昭和末期の操業中の工場の様子も紹介されていました。
新しい機械を導入する際などには、新しい建屋に建て替えたい気持ちもあったでしょうけれど、よくぞ使い続けてくれたものです。
Wikipediaには、
(直前の所有者)片倉工業は富岡工場(旧富岡製糸場)を閉業した後も一般向けの公開をせず、「貸さない、売らない、壊さない」の方針を堅持し、維持と管理に専念した。富岡製糸場は巨大さゆえに固定資産税だけで年間2000万円、その他の維持・管理費用も含めると最高で1年間に1億円以上かかったこともあるとされる。また、片倉は修復工事をするにしても、コストを抑えることよりも、当時の工法で復原することにこだわったという。こうした片倉の取り組みがあったればこそ、富岡製糸場が良好な保存状態で保たれてきたとして、片倉の貢献はしばしば非常に高く評価されている。
とありますが、ホント、強い「意志」がなければとっくに建て替えられていたに違いありません
旧富岡製糸場に限ったことではありませんが、文化財を後世に伝えるということは、基本的に「意志
」と「財力
」が伴わなければ無理なんだろうなと常々考えています。
美術品の場合は、「所有者の趣味」の側面も多分にあるでしょうけれど、旧富岡製糸場のような産業遺産や古民家
のような建造物の場合は、特に「意志
」と「財力
」が重要でしょう。
ところで、Wikipediaの「片倉工業」の記述を見ますと、冒頭に、
片倉工業株式会社(かたくらこうぎょう)は、東京都中央区に本社を置くショッピングセンター等の不動産運営・賃貸、自動車部品等の機械製造販売、繊維製品の製造販売を行う企業である。
とあります。さいたま新都心駅前にあるショッピングセンター「コクーン新都心」は、片倉工業の大宮工場跡地にあって、同社が管理・運営しています(まだ行ったことはないけど)
「コクーン(=繭)」という名前は、片倉工業の礎となった製糸業にあやかったものなのでしょうねぇ
ちなみに片倉工業(連結)のセグメント別売上高(2013年12月期)はこんな具合。
Wikipediaは、片倉工業の事業の主体は不動産事業に変わってしまったかのような記述ですけれど、実はそんなことはなかったりして…。
ところで、博物館明治村(訪問記はこちら)には、旧富岡製糸場で使われていた蒸気機関が展示されていました。
説明板によれば、これは片倉工業から寄贈されたもので、
この蒸気機関は、官営富岡製糸場の繰糸機の原動力として使用されたものである。同製糸場の建設を進めていたお雇外国人ブリューナ(P. Brunat、フランス人)によって輸入されたことからブリューナ・エンジンとも呼ばれている。
蒸気機関は繰糸工場に隣接する「汽罐・汽機室」に据付けられ、動力はシャフトを通して繰糸工場内の繰糸機に伝達され大正中頃に電動機に変わるまで使用された。
本機にはフライングボール式の調速機や「マイヤー式二重弁」と呼ばれる蒸気分配装置などが採用された。
現存する国内最古の蒸気機関である。
とのこと。
110年以上も建物が現役の工場として使われてきたことも驚きながら、使われなくなってもなお約90年も機械が保存されていたことも驚きです。
素晴らしいなあ…
旧富岡製糸場といえば、レンガ造りの繭倉庫(東と西の二棟)が印象的で、洋風のイメージをお持ちの方が多いと思います。
実際、ぱっと見は洋風なのですが、屋根をよくよく見ると
、、、
こりゃ和風テイストですな。
こんなところも魅力的な建物群です。
きょうのニュースをきっかけに、このゴールデンウィークには多くの観光客が押しかけることでしょう。
となれば気になるのが、周辺の交通渋滞です。
旧富岡製糸場には専用の駐車場はなく、市内の時間貸し駐車場
にクルマ
を停めて歩いて行くしかありません。
市内では交通規制も敷かれているようですので、お出かけの際にはご注意を!
駐車場探しを別にすれば、首都圏からクルマ
で行くのは結構簡単
です。
上信越道の富岡IC(練馬ICから約100km)で下りて、ちょっと走ればすぐに富岡の市街地に到着しますよ。
ぜひお出かけくださいませ
お薦めデス