昨夜のサイモン&ガーファンクルのコンサートの酔い醒めやらず、もうちょい書きたい気分(ってもう書いてる…)。
昨夜つくづく思ったのは、S&Gのコンサートが「懐メロ大会」ではなくコンテンポラリーな良さを発散していたということと、ポール・サイモンの音楽性とアート・ガーファンクルのそれとが、かなり方向性を異にしているということでした。
S&G解散の直接的な原因の一つとして伝えられる「Bridge Over Troubled Water」の曲づくりを巡る対立なんぞは、その象徴なんだと思います。アートは、アルバム「Bridge Over Troubled Water」に収録された「朗々と歌い上げられる壮大なバラード」を、ポールはゴスペル調のものにしたかったんだそうな。
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明日に架ける橋 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2003-12-17 |
仮に、ポールの意見が通ってこの曲がゴスペル調で収録されていたら、好みは別として、現在のような普遍的な人気を得ることができたのだろうかとちょいと「?」に思います。
でも、ポールは世界中のさまざまな音楽を取り込んで、自分の音楽を造りあげていくことを身上とする人、その場に立ち止まることを潔しとしない人です。
遅かれ早かれ、別の音楽の道を歩むことになっていたのだろうと思います。
「赤い鳥」(フォークグループね)が解散して、「紙ふうせん」と「ハイ・ファイ・セット」になったのと、なんとなく感覚が似てるかも…。
そういえば、MISIAが一度だけライヴで「Bridge Over Troubled Water」を歌ったんですよね(2006年8月19日の「星空のライヴⅢ」播磨初日のスペシャル)。聞くところによると、その時のアレンジはゴスペル調だったとか。聴きたかったなぁ
またいつか、どこかで、、また歌ってほしいぞ ただし、私が参加した時にね
上に「ポールは世界中のさまざまな音楽を取り込んで…」と書きました。
例えば、英国の古いバラード(Scarborough Fair)、フォルクローレ(El Condor Pasa)、レゲエ(Mother and Child Reunion)とか…。
ですから、アルバムに1~2曲ほど目新しいジャンルの曲が混じっていても、驚きはしないのですが、86年に発表された「Graceland」には、心底驚かされました。
アルバムのタイトルと表題曲こそ、ポールにとってアイドルだったエルヴィス・プレスリーの「邸宅」から採られているものの、アルバムのほぼ全編が南アフリカでした。生まれて初めて聴くサウンドに衝撃を受け、気に入って、何度も繰り返し聴いた記憶があります。
当時、南アはアパルトヘイト(人種隔離政策=人種差別政策)を採っていて、世界各国はそれに反対して南アの孤立化を図っていました。そんな状況で、南アのミュージシャンと共にアルバムを造ったポールは、「孤立化政策に反する」とか「南アの黒人ミュージシャンを利用して金儲けをしようとしている」と非難を浴びたんだとか。
ポールは「Graceland」で、音楽家としての名声を高めたし、お金も儲けたでしょうが、私にしてみれば、このアルバムのおかげで、StimelaというすごいバンドやLadysmith Black Mambazoという信じられないボーカルグループ(日本公演を聴きに行きました)を知ることができたし、現代のアフリカ音楽の素晴らしさを知ることができたわけで、ポールには尊敬と感謝の念しか持ちません。
ちなみに、私、Stimelaのアルバムを2枚持っています。
こちら「Trouble in the land of plenty」は国内盤ですが、どうやら廃盤の模様。
そしてこちら「Live!」は輸入盤。今でも手に入れることができるのかな…?
Stimelaのリーダー、Ray Phiriのギターが何とも不思議で、そして、心地良い
階段を、気ままに2段、たまには3段とばして駆け下りるような感じ…(理解していただけますか?)
ちなみに、今回のS&Gの日本ツアーには南アのミュージシャンも参加しています。昨夜はポールのソロ・セクションで「The Boy In the Bubble」を聴けて、ブガジャガしたアコーディオンの音に打ち震えました
「Gradeland」で良い意味であ然とさせられた私は、自作の「The Rhythm of the Saints」でも度肝を抜かれました
今度は、ブラジルの打楽器です。
ブラジルといえばボサノバとサンバしか知らなかった私にとって、アルバム冒頭の「The Obvious Child」で鳴り響くど迫力のドラムの合奏は衝撃以外の何者でもありませんでした。
そして、ひたすら前進あるのみのポールの姿勢に感服するのでありました。
ただ、その後のポールの作品は、私にはピンと来ないものが続いています。
でも、何かのきっかけでそれらが大好きになるかもしれません。
かつて、「There Goes Rhymin' Simon」がそうだったように。