エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

けしからんことこの上なし の研究

2015-12-31 02:19:41 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの

 

 

 
突き抜けた悦び
  転移と逆転移の問題は、臨床の基本です。 p236の第3パラグラフ。   非常に広大で、難解な分野に入っていくのに必要な動機...
 

 トラウマ治療に、CBT認知行動療法は効かないのは、発達トラウマ治療に、日本のトラウマ研究者の心理教育が効かないのと、同じです。

 ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の第13章 Healing from trauma : Owing your self 「トラウマから癒されること :本当の自分を生きること」p.224の、第2パラグラフから。

 

 

 

 

 

 クライアントがトラウマを生き直して、良かった、と思えるのは、トラウマに圧倒されない場合だけなんですね。その良い証拠に、1990年代初頭、私の同僚の、ロジャー・ピットマンが行った、ヴェトナム帰還兵の研究があります。私は、当時、毎週のように、ロジャーの研究室に通っていました。というのも、私どもは、第二章で議論した、PTSDの人達の脳のオピオイド(訳注:脳内麻薬)を研究していたからです。ロジャーは、セラピー場面のヴィデオを見せてくれて、私どもは、観察したことを議論したのでした。ロジャーと彼の仕事仲間たちが帰還兵たちにベトナムで経験したことを事細かに話すように、繰り返し促しました。ところが、この研究者たちは研究を中止しなくてはなりませんでした。というのも、たくさんなクライアントたちが、フラッシュバックでパニックになったからでしたし、恐怖がセッションの後も、執拗に残ってしまったからでした。2度とセッションに戻ってこない人もあったくらいです。ただし、研究に戻ってくれた者も、その多くが、鬱も、暴力も、恐怖も、ひどくなってしまいました。なかには、ますますひどくなる症状を、アルコールをさらにたくさん飲むことで抑えようとする者もいましたね。そんなことをすれば、結局、暴力をふるうことが増えてしまいますから、増々恥をかくことになります。その家族は、警察を呼んで、クライアントらは強制入院ということにもなります。

 

 

 

 

 こういう研究は、やってはなりません。まあ、ロジャーさんたちも、分からなかったんでしょうから、仕方がない面もあります。クライアントや被験者の福祉の反する研究ですから、やってはならないんですね。

 でも、相当怪しい研究もあります。クライアントの福祉には反さなくっても、クライアントの利益にならない研究は相当数あるからですね。その種の「研究」は、研究者の福祉と利益になっているので、今回のロジャーさんの研究みたいに、なかなか「中止」にしない場合があまりにも多いんですね。けしからんことこの上なしです。

 

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