エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

「≪私≫という感じ」を育ててくれる、いろんな≪あなた≫

2014-08-03 05:48:13 | アイデンティティの根源

 

 エリクソンが、いろんな苦難の中で≪私≫をハッキリすることができました。エリクソンにとっては、その苦難は文字通り耐えがたいものだったはずです。しかし、その耐えがたい苦難に踏みとどまってくれたおかげで、人類に貢献するような、ノーベル賞級の発見をしてくれたのです。≪私≫を確かにする筋道、光の道としてのアイデンティティです。

 p330の第3パラグラフ。

 

 

 

 

 実際に、≪私≫という感じをまじめに取り上げた人たちは、まずはじめに、何が≪私≫の遊び相手なのかを問うことになるでしょう。彼らは、実際には、2人称、≪あなた≫から始めるかもしれません。それで、魂という意味での、神なる≪汝≫でおしまいになるのかも分かりません。私の発達上のオリエンテーション、方向性にとって、≪私≫という感じの発達を描くのに最も雄弁な「地図」は、人称の全リスト、つまり、≪私≫から≪彼(女)ら≫になるでしょうね。その人称の全リストのひとつひとつは、はじめは子どものころに正しく発音し、正しく理解するようになるのですが、その後、人生を通して、その人称の一つ一つを、意義深く、繰り返し繰り返し、経験するんですね。≪私≫という感じそのものの初めは、母親のように世話をする人のなかに感じる一人の≪あなた≫とやり取りする(共に遊ぶ)ことから、赤ちゃんの中に現れるんですね。この母親のような世話をする人を、私どもは「重要な他者」と呼びます。この重要な他者、いや実際には、関わりのある重要な他者たちが、同様に、その人の≪私≫という感じを高めた≪実在感≫として新たな存在を経験することが、生死を分けるほど大事だと思われますよね。もともとあった≪私≫という感じが、徐々に、もう一人の根源的な遊び相手、すなわち、≪自分のセルフ≫、それはほとんど、≪内なる重要な他者≫ですが、その遊び相手と向かい合うのを助けてくれるのが、この最初のやり取りだと私は考えます。しかしながら、もともとの≪あなた≫と≪私≫のやり取りは、生涯を通して、お互いに認め合うモデルであり続けます。それは、ある一定の見通しまで、そうなんですけどね。その見通しに、聖パウロが、究極的な出会いというハッキリとした宗教的な形を与えていますよね。その出会いとは、今はおぼろげに「ガラス越しに、ぼんやりと」感じる(その時には、≪究極的に重要な他者≫との)出会いなんですね。

 

 

 

 

 

 ここも、非常に重要なところです。以前、この文書には二つの非常に重要なところがあると申し上げましたが、三つに訂正して、ここをその最も重要な3か所の一つとしたいと思います。

 オリエンテーション。それには、人称のすべてが必要なようです。でも、それはどの人称も、2人称の≪あなた≫という形で関わることのなる。

 最初が、普通は母親であり、母親の中にある≪私≫という感じ。その母親と、母親の中にある≪私≫という感じが、最初の≪あなた≫になる。

 大事なのは、その≪私≫と≪あなた≫が、生涯を通して認め合う関係の元型、ひな型になる、ということです。最初の出会いが、深く認め合う関係ならば、この世は天国。その赤ちゃんは、老人になって死ぬまで、出会った人と、深く認め合う関係、≪真の関係≫を結び続けることができる。

 逆に、最初の出会いが、その真逆で、認め合うんじゃなくて、敵意を向けられていたら…? この世は戦場です。自分が上か、勝つか、相手を下にできるか、やっつけることができるか、手下にできるか・・・。認め合わない、どころじゃぁなくなりますよね。こうなるとね。老人になって死ぬまでこれじゃぁ、生きた心地でもないはずなのに・・・。でもね、それが当たり前になっちゃって、「慣れる」と、結構「これもあり」って感じになるのが、この手の人の感性と、人生の慣性の恐ろしいところです。

 最初の出会いが、深く認め合う関係ですと、内的な重要な他者である「セルフ」、ユングの言うセルフですが、その光に気付くんですね。すくなくても、それに気付きやすくなる。フロムとシンクロしてきますが、そのセルフを眼の見えない人が見つけて、光と感じたんですね。ですから、この光をメッケタ人は、その光と対話する、自己内対話を繰り返すことになります。それが、ソリチュードであり、陽気で明るく、悦びに満ちて生きる基盤です。

 その光の延長に、神なる≪あなた≫もおられるから、人生は実に深く、実にうまくできている、と言わざるを得ませんね。 

 

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