エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

弱さの強さ

2015-02-12 07:07:58 | エリクソンの発達臨床心理

 

 弱さの強さ。形容矛盾に見えますね。何を言いたいのか分かりません。不思議!

 バイブルには、こういう不思議な言葉がたくさんあります。

 これは、パウロの手紙の一つ「コリント人への第2の手紙」第12章10節にでてきます。新共同訳では「なぜなら、わたくしは弱いときにこそ強いからです」と訳されています。パウロ自身が幾多の苦難、病気を経験していたことと、この件は関係しています。盗賊にあったり、海難事故にあったり、友達に裏切られたり、貧乏のどん底を経験したり…。そういう弱さをパウロは誇りだ、ってんですからね。一般常識で言ったら、ここに挙がっていることは、恥にはなっても、誇りになるはずないのにね。何故でしょう? 負け惜しみ?

 私は、アルコール依存症回復者と関わりがあります。常々、アルコール依存症回復者の人たちは、尊敬に値する人たちだと思います。アルコールを断ち続けることは、並大抵の力ではできないはずなのに、それを生涯続けているからです。また、毎月断酒会の通信を読ませてもらうと、真摯に自分と向き合い続けている姿が手に取るように分かるからでもありますね。

 先日「ハートネットテレビ」で、依存症の人の家族のための「クラフト」を紹介していました。

http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2014-11/12.html

その番組で、あるアルコール依存症+薬物依存症回復者がハッキリと次のように言ってまして、「弱さの強さ」のパウロの言葉を思い出したんですね。「仲間」と自分の経験を分かち合う、ピア・グループを作っている、その回復者の言葉は、次のようなものでした。

「自分のすべての恥が、誰かのためになる、っていう、逆転することがすごいですよね。」「自分の経験がヒドければヒドイほど、誰かの役に立つわけですよ。それを個人のものにしておくと、すごくヒドイ経験なんだけど、それをみんなの前で話すと、それは普遍的なものに変わっていって、誰かの希望に変わる、ってことを何度も味わうんですね」

 パウロも自分の弱さに普遍性があり、それが人様のお役に立つことがあること、自分の弱さが人様の「救い」に繋がっていること、そこには、 “神様の力が働いている”、としか言えない “力” が働いていることを、肌身に感じていたんですね。

 もちろん、その “力” は、権力や暴力や支配力などのような、世間の「強者」の力とは全くの別物。愉快で楽しく、深い喜びに結びついてる “力” です。ヨチヨチ歩きの子でも、すぐにそれと気付き、真顔で、あるいは、嬉しそうに、歩み寄ってくる “力” です。

 あなたも、今日、そんな “力” を体験してみてくださいね。

 


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