エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

第2の見方 生き直し

2013-08-22 01:29:58 | エリクソンの発達臨床心理

 

 能動的再体験が、激しい怒りと恥も笑に変えてしまう、なんと素晴らしいことでしょうか!エリクソンの夢解きが続きます。

 

 

 

 

 しかし、私が辿ってきたのは、この患者が多言語の夢のパズルで示した思いの、主な傾向の1つでしかありません。フランス語を話せる方なら、少なくとも自由連想によって、seinという「乳房」を示す言葉を参照するのを見逃していることに、お気づき気でしょう。そして、実際、彼女は、衝撃を受けたもう1枚の絵を、最終的に思い出したのでした。その絵はルーベンスの手になるものでしたが、彼女は、6つの胸のある女神を思い出しました。それは、「割礼」の絵とは対立的な絵であることは明らかです。というのも、この絵は、最高の豊かさというテーマを新たにもたらしたからですが、このテーマは、割礼の絵のテーマが著しく減じるものでした。しかし、このテーマは、この若い女性をあまりに肉体的に肯定するものでしたから、女性のドレスを性的に強調すること(décolleté 胸の谷間)と、パリジャンの暮らしにあった、人を誘惑する男性的な習慣は、魅力を感じると同時に、不安も感じるものだったのです。それで、最初の絵が特別な赤ちゃんの時期に苦しんだ、赤ちゃんのトラウマを指し示していたのですが、他方で、第2の絵は、文化的な雰囲気を象徴していました。その文化的雰囲気は、青年期の女性にあっては、のぞき見をしてみたいような、自分をあらわにして見せたいような気持を呼び起こすものでしたし、全体的にトラウマになるような、いわば、繰り返し抑圧される経験に本能的な基調をもたらすものでした。いまや、それは、精神分析の場で生きなおされることになったのです。

 

 

 

 

 

 第2の絵は肉体的な女性性を肯定する絵です。若い女性の患者が魅力を感じると同時に、不安になるのも、今よりもお堅い時代だったことを考え合わせれば、うなずけます。しかし、彼女が暮らしていたパリは、そのお堅さを打ち破る方向に文化が動いていたのですね。この第2の絵が示す、女性性に対する肯定とその抑圧という、アンビバレントな心も、精神分析の場によって、生き直すことが可能になります。 何故なんでしょうか?

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