AIRWORK日記

愛知県渥美半島の パラグライダー&ハンググライダースクール 「エアワーク」の日記です。

海を渡る蝶

2010年10月23日 | 仕事
 昨夜までは南東の風になるという予報だったのでなんとか高塚で飛べるかと思っていましたが、今朝になって予報を確かめると東南東になるという悪いほうに変わってしまいました。昨日の時点で「明日は高塚に集合」と練習生の皆さんに通知してしまってあるので、とりあえずダメモトで高塚へ。到着するとやはり風向は東~東南東でやや強め。しばらく待ってみることにすると・・・おや、この時期に衣笠山ではよく見かけるアサギマダラが一匹、この高塚でもひらひらと飛んでいます。
 この蝶は春に日本で卵から生まれ秋に成虫となって海を渡り、遠く沖縄八重山諸島や台湾、南の小笠原諸島まで行って産卵して一生を終え、そしてかの地で生まれた子供がまた海を越えて日本に戻ってきて・・・というサイクルを繰り返して生息しているそうです。つまり、渡り鳥のように同一の個体が往復しているのではなく、羽化してからの寿命が短い蝶は一方通行の片道飛行で海を渡って行くそうです。
 衣笠山ではよく『日本アサギマダラの会』(私が想像で勝手につけた団体名称です)の年配の人達がこの蝶を捕まえて、捕獲地や日付などの記号をサインペンで羽に記入してからリリースしてるのを見かけます。研究や保護のためのデータ収集としてやっているのでしょうが、羽に記入されたアサギマダラが死んで地面に落ちているのも見かけますので、捕まえ方が下手で弱って死なせてしまう人もいるのでしょうか。ウチの子たちの100円ショップで買ったプアな作りの虫取網とは違って、かなり高額であろうプロ仕様(?)の捕虫専用網を手に追っかけているので、実はひそかに私は「ああいう虫取網が欲しいな~」と羨ましがっているのですが、どうか日本アサギマダラの会(仮称)の皆さんは道具の品質・性能にのみ目を向けることなく、蝶にダメージを与えない捕獲技術の向上にも切磋琢磨し、今後も日々の精進に各人が鋭意励んでいただきつつ、将来的には全員がスイングの軌道に無理がない確実で洗練された捕虫網ワークを身につけていただきたい、って、何を言ってるのだ私。でも、きれいな羽にラクガキ(失礼)された蝶が落ちて死んでいるのを見るのは、目的はともかくナンダカナ~・・・と思ったりします。
 そういえばまだアサギマダラは捕まえたことがありません。とてもきれいなのでいちど捕まえてじっくり間近で観てみたいのですが、さすがに飛んでいる蝶は網がないと無理だよな~、とか思っていたら黄色い花にとまって蜜を吸い始めました。むむ、これは誘いのスキなのか、はたまたからかわれているのか? いや、ひょっとしたら素手でもいけるかもしれないと、私の生来からの特技である『気配霧散の術』を駆使しつつ静かに接近。オーラがないことにかけては日本一を自負する私、逃げられることなく両手で包むように捕獲できました。

             
              (↑ とてもキレイで上品な色の羽です)

 捕まえられたとたんにこの蝶、脚を縮めてピタッと動かなくなってしまいました。へえ~、この虫も死んだフリをするんですね~。暴れられると羽が傷んでしまうかもしれないのでちょうどいいし、この後で海を渡る長距離飛行に挑むのでしょうから羽は大事ですもんね。動かないうちに写真もマクロで撮らせてもらいましょう。
 アサギマダラという名のとおり、羽に淡い水色の紋様が入ったとても美しい羽をしています。この写真では水色に写っている部分は半透明で反対側が透けて見えますが、光線のかげんや角度によってはガラスかフィルムのようにほとんど無色透明に見えたりするようです。多くの蝶や蛾のような鱗粉が羽にないため触っても指に粉がつかないのも特徴ですが、こんなに弱々しい羽の小さな生き物が1000キロ以上ものロングディスタンス(?)が可能な飛翔能力を持っているなんて不思議。風の力も借りているのかもしれませんが、目的地へのナビゲーションはどうしているのでしょうか。あてずっぽうで飛んでいくとは思えないし、ある種の鳥のように星を観ているわけでもないでしょうし、おしえて日本アサギマダラの会(仮称)のえらいヒト。
 渥美半島からは、南西方向の沖縄や台湾ではなく南の小笠原方面に渡る固体がいるらしいので、こいつも父島や母島あたりに飛んでいくのかもしれません。沖縄方面には行ったことがあるけど、小笠原諸島は飛行機の航路がなく船での往復は日数もかかって大変らしいので、ずっと憧れているだけでいまだ未踏の地です。いいな~、私も行ってみたいな~、代わりに行ってきてね~と思いながらリリース。というか、やがて死んだフリをやめて、サッサと元気に飛び去って行きました。

 どうやら風は好転しないようなので店に戻り仕事をすることにして、まだ箱に入って梱包されたまま置いてある新品のハングをスクールのお二人に手伝っていただいて運び出し、輸送時の都合で短く分解してある部分の部品をセット、点検作業もしておくことに。

             
            (↑ イエローただ一色なので、飛んでいると目立つかも)

 ん、まてまて、なんか部品が外れたけど・・・って、お~い、オーストラリア人、なんでアルミパイプとプラスチック部品を両面テープなんかでとめて済ませるんだ! 紙飛行機じゃないんだから、ネジとかポップリベットで固定しないと外れるだろう普通~! だいたいからしてオーストラリアという国は・・・(←この後、反捕鯨国であるオーストラリアの日本へ対する姿勢についてや、そのくせカンガルーは害獣として駆除していることなどに罵詈雑言を発していましたが割愛)外れた部品は、30分ほど苦労して正常な状態に。あ~ヨカッタ、壊れたのかと思って一瞬あせりました、両面テープはダメだってばホントに。
 この機体は、飛びはじめて30数年というベテランの長野のKさんが注文したものです。経験を積んで飛ぶのが上手くなっていくにつれ、どんどん高性能な上級機種に乗り換えていく人が多い中、Kさんはあえてこの初級機を選んで買うことにしたのでした。性能よりも手軽さや安全を求めたということで、ミエもはらずなんだかとてもカッコイイことだと私は思います。この黄色もKさんが指定したオーダーカラーですが、そういえばKさん、初めに乗っていた機体も黄色だったのを思い出しました。ハングをはじめた頃の初心に帰って、これからもまだまだ飛び続けるということなんでしょうか。お~い、Kさん観てる~? この色で注文どおりかな、OKかな~? 新しいマイウイングを早く引き取りに来てやってね~。