朝の放送なのでテレビ内蔵のハードディスクに録画して、夜、ヨメさんと二人で見ました。
あまり期待していなかったのですが、宙トップになった実咲凜音がクリスティーヌをどう演じていたのかと
いう興味だけで見始めました。
ところが、もちろんクリスティーヌは期待にたがわぬ上々の歌と演技でしたが、エリックがこれまた素晴ら
しい出来!二人のデュエットたるやもう圧巻です。望外の収穫でした。
で、最初夕刊を読みながら画面をチラ見していた私ですが、途中から新聞は投げ捨てて眼は画面に釘づけ。
主役二人だけでなく、キャリエールやカルロッタを始め主だった配役がこれまたよくやっていて、到底
「新人公演」のレベルではなかったですね。
見ていて、もうただただ二人で感嘆するばかりでした。
まずクリスティーヌの実咲凜音。期待以上の出来で、ファントムに鍛えられて歌がうまくなっていくところ
とか、最初の見せ場のビストロで、遠慮がちな頼りない歌声から、エリックのサポートで一変して俄然その
場を圧倒する歌唱力を見せつけるところなど、歌ウマぶりを存分に発揮しています。
歌声の変化が痛快で、こちらの期待に十分応えてくれる場面になっています。まったく本役形無しです。
恵まれた容貌ですが、感情表現も豊かで、まなざしだけでも感情を訴えることもできたり、このとき研3
だそうですが、大した演技力です。
エリックの鳳真由もはまり役でした。この人も表情が豊かで、演技に力があります。
大体私はこの「ファントム」という題材は、容貌で人を怪物扱いして差別するような話なので、これまでも
観ていてかなり違和感があったのですが(クリスティーヌがエリックの顔を見て逃げ出すところとか)、
今回初めて感情移入できるファントムになっていました。
彼女も歌唱力があるので、声を張り上げない歌い方でもよく気持ちが伝わってきます。そして張り上げる
ところになったら、もう圧倒的です。これまた本役さんの顔色なしですね。
これまで見た中でもっとも完成度の高いファントムだと思います。「ファントム」で涙ぐみそうになった
のは今回が初めてです。
あと目についたのがこの人↓。ジェラルド・キャリエールです。
本役は壮一帆で、この人の演技はもちろん申し分なく、本公演で唯一安心して観られた登場人物でした
が(笑)、今回の真瀬はるかも大したものでした。安定していて、とても新人公演とは思えません。
よく老けていて感心しました。余裕と貫禄が感じられて、後半エリックとの対話の場面では、歌もセリフ
も本当に切々とした哀感がよく伝わってきます。演技の完成度は高いです。
そしてこの人↓。カルロッタ役の仙名彩世。
どの組でもちょっとオーバー気味な演出が気になる役で、この人もその傾向がありますが(笑)、臆すること
なく堂々と演じていて、繰り返しますが、新人公演離れした出来栄えです。こういう役どころがしっかり
してこそ、舞台が締まりますね。
そのほかのメンバーも短時間の練習なのによく役をこなしていて、本当に感心しました。
最後の舞台挨拶もよかったです。
鳳真由はこの新人公演が最後ということでしたが、落ち着いたいい挨拶でした。よくある「お世話になった
人列挙パターン」ではなく、真情がよく伝わってくるオリジナリティのある(笑)挨拶で、話しぶりも落ち着
いていて好印象でした。
見終わって、本公演との「逆落差」にため息が出ました。こんなこともあるんですね。
宝塚というのは、独自の本格的な養成システムを持っているおかげで、いつのまにかいい人材が育って
きていますね。
素質のある生徒を早くから見つけて、その成長をひそかに楽しみにするというのも観劇の醍醐味だそう
ですが、不勉強な私などはその点全く疎く、今回のような発見があって初めてそのことに気付かされて
います。
歌劇団も、この組に限りませんが、旬のうちに実力のある人材をタイムリーに登用していってほしいと