昨日の衆議院本会議で日本共産党志位和夫委員長が代表質問をしました。
「ISを名乗る過激武装組織への対応について」を抜粋します。
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私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
この間、ISを名乗る過激武装組織によって、2人の日本人の命が奪われるという事態が起こりました。残虐で卑劣なテロ行為を断固糾弾するとともに、ご家族に心からの哀悼の意を表します。
ISへの対応で、いま求められているのは、国際社会が一致結束して、一連の国連安保理決議に基づき、外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断ち、テロ組織を武装解除と解体に追い込んでいくことであります。
この点で、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が「あらゆる対テロ行動は、国際人権法・人道法と合致したものでなければならない」と述べていることは重要です。相手が最も野蛮で無法な組織であるからこそ、国際社会の側が、国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動することが何よりも重要であり、そういう態度を堅持することこそテロ組織を追い詰めていく一番の力になると考えます。総理の見解を求めます。
こうした悲劇を繰り返さないためにも、この間の日本外交の対応について、冷静な検証が必要です。私は、三つの問題点を指摘しなければなりません。
第一は、総理が、「テロに屈する」の一言で冷静な検証を拒否する態度をとっていることです。国会質疑で、わが党議員が、総理の中東歴訪での言動を指摘し、「そういう言動をとれば、2人の日本人に危険が及ぶかもしれないという認識があったのか」とただしました。総理は、質問に答えず、“そういう質問をすること自体が、テロに屈することになる”と答弁しました。「テロに屈する」の一言で、異論を封じ、冷静な検証を拒否するという態度でいいのか。私は、こうした態度をあらためることを強く求めます。2人の日本人が拘束されてから今日にいたるまでの政府の対応について、国民に納得のいく説明を行うとともに、検証にとって必要不可欠な情報を公開することを強く求めるものです。
第二に、総理は、米軍が行っているISへの空爆への支援について、「政策的にはやらない」としながら「憲法上は可能だ」と述べました。さらに、日本人人質事件と絡めて、「このように海外で邦人が危害に遭った時、その邦人を救出するため、自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない。そうした法制も含めて法整備を進める」と述べました。しかし、そもそも「救出作戦」とは、相手を制圧する軍事作戦です。それは人質の命も自衛隊員の命も危険にさらすことになります。自衛隊がそうした作戦を行うことは、憲法違反の武力行使にあたることは明白ではありませんか。今回の事件を機に、「海外で戦争する国」づくりを進めるなどということは、断じて許されるものではありません。
第三に、ISのような過激武装組織がどうして生まれたか。そのきっかけとなったのが、2001年、米国が開始したアフガニスタン報復戦争でした。「テロへの対抗」を名目にした戦争は、テロを根絶するどころか、その温床を広げる結果となりました。さらに2003年のイラク侵略戦争は、「地獄の門」を開き、泥沼の内戦を引き起こしました。これらの戦争が引き起こした混乱のなかから、モンスターのようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大していったのです。それは、マレーシアのナジブ首相が、「1人の悪魔を攻撃して、より大きな悪魔が現れた」と批判している通りであります。戦争でテロはなくせない、法と理性にもとづく世界の一致結束した行動によってこそテロは根絶できる、これこそ真の歴史的教訓ではないでしょうか。アフガン・イラク戦争に、日本政府は支持を与え、自衛隊を派遣しました。世界から無法なテロを一掃するためにも、アフガン・イラク戦争と日本政府の対応についての真摯(しんし)な歴史的検証を行うべきではないでしょうか。
以上、3点について、総理の見解を求めるものであります。
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上記質問の中で触れられている「国連安保理決議」の「2170号」について、管理人が質問をした日本共産党国際委員会からの回答文書を転載します。
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国連広報センターは2015年02月16日「安保理決議2199を邦訳しました。」
この決議は2月12日、全会一致で採択されたもので、国連憲章第7章のもと、ISILなどのテロ組織の資金源遮断のための措置を承認。人質の身代金支払いなどをしないよう求めています。全文テキスト → こちらをクリック[PDF]どうぞ、ご活用ください。
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「イスラム」国に関する国連安保理決議2170(2014年8月15日採択)
イラクとシリアの国境をまたいだ地域を支配下に置いているイスラム教スンニ派の過激武装集団「イスラム国」に関して国連安全保障理事会が全会一致で採択した決議2170の抄訳を紹介します。
決議は、「イスラム国」(決議ではその前身の名称「イラクとレバントにおけるイスラム国」(ISIL)としています)の残虐な行動を「人権侵害、国際人道法違反」として強く非難し、暴力やテロ行為の中止、イスラム国の武装解除、解散を要求しています。
「国連憲章第7章のもとで行動し」との一節がありますが、イスラム国掃討のために武力行使を認める表現はありません。具体的には、外国人戦闘員の参加を阻止する措置や資金源を断つ措置が決議されています。今後の対応については、監視チームが90日以内に、イスラム国の動向、脅威とさらなる対処のための勧告を含む報告を制裁委員会に提出するよう指示し、委員会での討論の内容を安保理に説明するよう求めています。国連ウェブサイトから。
安全保障理事会は、
その決議1267(1999年)、1373(2001年)、1618(2005年)、1624(2005年)、2083(2012年)、2129(2013年)、2133(2014年)、2161(2014年)およびその関連議長声明を再確認し、
イラク共和国およびシリア・アラブ共和国の独立、主権、統一および領土保全を再確認するとともに、さらに国連憲章の目的と原則を再確認し、
イラクおよびシリアの一部の領域が「イラクとレバントにおけるイスラム国」(ISIL)およびヌスラ戦線(ANF)の支配下に置かれていることに重大な懸念を表明するとともに、両者の存在、その暴力的な過激イデオロギー、その行動がイラク、シリアおよび地域の安定に及ぼす否定的影響―何百万人の強制退去につながっている、文民への破壊的な人道上の影響を含む―について、ならびに、宗派間の緊張を煽っている彼らの暴力行為について、重大な懸念を表明し、
文民の死やその他の犠牲、資産や文化的宗教的施設の破壊を引き起こして安定をほりくずすことを目的にした現在進行中の複合的な犯罪的テロ行為に関して、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体にたいする非難をあらためて強調するとともに、決議2161(2014年)にある資産凍結、渡航禁止、武器禁輸の要請がISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体に適用されることを想起し、
ISILの行為を含めテロリズムは、いかなる宗教、国籍、文明とも関連付けることはできないし、関連付けてはならないことを再確認し、
テロリズムは、テロの脅威を妨げ、撃退し、孤立させ、無力化するための、すべての国家、国際組織および地域組織の積極的参加および協力をともなう持続的で包括的なアプローチによってのみ打破することができることを強調し、
加盟国は、本決議を履行する場合を含め、テロリズムとたたかうためにとられるいかなる措置も、国際人権法、難民法、国際人道法をはじめ国際法上のすべての義務に合致するようにしなければならないことを再確認するとともに、効果的な対テロリズム措置と人権の尊重、基本的自由、および法の支配は相互補完的で相互に強め合うものであり、対テロリズムの取り組みが成功するための不可欠の部分であることを強調し、テロを効果的に防止してそれとたたかううえで法の支配を尊重する重要性に注目し、
〔……〕
すべての関係者にたいし、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体による暴力行為や、とりわけあらゆる形態の性暴力を受ける、女性および子どもをはじめ、文民を保護するよう勧奨し、
国連憲章および適用可能な国際人権法、難民・人道法を含む国際法に従って、テロ行為による国際の平和と安全にたいする脅威にたいして、あらゆる手段でたたかう必要を再確認するとともに、この関連でこうした取組みを主導して調整するうえで国連の果たす重要な役割を強調し、
ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が国際の平和と安全にもたらす継続的な脅威に懸念をもって注目するとともに、この脅威のすべての側面に対処する安保理の決意を再確認し、
国連憲章第7章のもとで行動し、
1、ISILのテロ行為とその暴力的な過激イデオロギー、目に余る系統的で広範な人権侵害の継続、国際人道法の蹂躙をもっとも強い言葉で非難し、糾弾する。
2、とりわけシリアのラッカ、デリゾール、アレッポ、イドリブ県、イラク北部のタミム〔キルクーク〕、サラヘディン、ニーナワー県における、無差別の殺害や文民を意図的に標的とする行為、多数の残虐行為、集団処刑、兵士を含む裁判なしの殺害、宗教あるいは信仰にもとづく個人や地域社会の迫害、文民の誘拐、少数派構成員の立ち退き強制、子どもの殺害や致傷行為、子どもの新兵採用と利用、レイプやその他の形態の性暴力、恣意的な身柄拘束、学校・病院への攻撃、文化的宗教的施設の破壊、教育の権利を含む経済・社会・文化的諸権利の行使の妨害を強く糾弾する。
3、民族的あるいは政治的背景を理由として文民の住民を対象にして行われる広範囲または系統的な攻撃は人道に対する罪になることを想起し、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が確実に人権侵害と国際人道法違反の責任をとるようにする必要性を強調し、すべての国家に対して、こうした違反・侵害を阻止するよう求める。
4、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体がすべての暴力とテロ行為を中止し、直ちに武装解除し解散することを要求する。
5、すべての国家に対して、決議1373(2001年)のもとでの義務にしたがって、テロ行為を実行・組織し、これに資金提供しているISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体を見いだし、法の裁きにかける活動で協力するよう求め、この点で、地域的な協力の重要性を強調する。
6、ISIL、ANF、アルカイダと連携している個人および団体が行っている、過激主義と不寛容によって動機づけられるテロ行為の扇動に反撃し、テロリストとその支持者たちによる教育・文化・宗教機関の破壊活動を予防するため、すべての国家にたいして、国際法のもとでの義務に従って必要かつ適切なあらゆる措置をとるよう改めて呼び掛ける。
外国人テロリスト戦闘員
7、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体による外国人テロリスト―その存在は紛争を激化させ、暴力の過激化を助長している―の徴募を非難するとともに、ISILその他のテロ集団と連携しているすべての外国人テロリスト戦闘員が直ちに退去するよう要求する。アルカイダ制裁態勢のもとで、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の活動のために徴募している、あるいは、同活動に参加している者のリスト作成を検討する用意があることを表明する。これには、ISILまたはANFのための外国人テロリスト戦闘員の渡航の資金調達や支援活動によるものを含む。
8、すべての加盟国にたいし、外国人テロリストの流入を抑制し、適用可能な国際法に従って、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の外国人テロリスト戦闘員を法の裁きにかける国内措置を講じることを求める。さらに、テロリストやテロ集団の移動を、適用可能な国際法に従って、とりわけ効果的な国境管理によって防止し、この関連で、主管当局間で情報を迅速に交換し、テロリストおよびテロ集団の自国領域への/からの移動、テロリストへの武器の供給ならびにテロリストを支援する資金調達を防止するための協力を改善するうえでの、加盟国の義務をあらためて強調する。
9、すべての加盟国にたいし、自国領内で徴募や暴力的過激化の危険のある者に関与し、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の支援や戦闘参加の目的でシリアやイラクに渡航するのを思いとどまらせるために関与するよう勧奨する。
10、各国は、自国領からの、または、自国領外の自国民による、または、自国の船舶や航空機を利用しての、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体にたいする、武器およびあらゆる種類の関連物資―武器・弾薬、軍用車両、軍用装備、準軍用装備、これらの交換部品、および、軍事活動に関係する技術的助言、援助または訓練を含む―の直接または間接の供給、販売、移転、を防止するとの安保理の決定を再確認するとともに、兵器取引に関する実際的な情報の交換を強め、加速する方法を見いだし、国内・準地域・地域・国際レベルでの取り組みの連携を強化するよう求める安保理のよびかけを再確認する。
テロリストの資金調達
11、決議1373(2001年)、とりわけ、すべての国は、テロ集団の構成員の徴募を抑圧し、テロリストへの兵器供給をなくすことを含めて、テロ行為の資金調達を防止・抑止し、テロ行為に関与している団体や個人にたいする、積極的であれ消極的であれ、あらゆる形態の支援提供を控えるとの安保理の決定を再確認する。
12、すべての国は、いかなる資金や金融資産、経済資源も、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の利益のために、直接であれ間接であれ、自国民あるいは自国領内にいる人物によって、利用されないよう保証するとの決議2161(2014年)の決定を想起しつつ、すべての国は、自国民または自国領土内の人物や団体が、テロ行為を実行、あるいは実行を試み、あるいは実行の支援や加担を行う人物の利益のために、あるいは、こうした人物が所有または、直接・間接にコントロールしている団体や、こうした人物を代表して、あるいは、その指揮のもとに活動する団体の利益のために、直接であれ間接であれ、資金や金融資産、経済資源または金融関連サービスを利用可能にすることを禁止するとの決議1373(2001年)の決定を再確認する。
13、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が支配している油田と関連インフラが、彼らの徴募活動を助け、テロ攻撃を組織・遂行する作戦上の能力を強化する収入を生み出していることを懸念しつつ注目する。
14、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が関わる直接・間接の貿易への関与を糾弾しつつ、こうした貿易は、決議1267(1999年)と1989(2011年)にもとづいた委員会が指定する団体への資金援助になること、また、委員会による指定団体リストの拡充につながることを改めて強調する。
15、自国民あるいは自国領内の人物が、委員会によって指定された個人や団体、あるいは指定団体を代表し、またはその指揮のもとに活動する者に寄付を行わないようにすることを保証する義務をすべての加盟国が順守する重要性を強調する。
16、ISILが支配する領域内を出発した航空機やその他の運搬手段が、国際市場での売却をめざす金などの高価な品目や経済資源の運搬のために、あるいは、資産凍結違反となりかねない他の活動に利用されている可能性があることに懸念を表明する。
〔……〕
制裁措置
18、ISILはアルカイダの分派集団であり、ISILとANFはアルカイダ制裁リストに含まれていることを想起しつつ、この点で、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体のために資金調達や武器供与、作戦提供や徴募活動を行っている者など、インターネットやソーシャル・メディアなどの通信技術やその他の手段を通じて、ISILあるいはANFに対して支援を供給している個人、集団、事業および団体のリスト作成を検討する用意があることを表明する。
19、本決議の付属文書において特定する個人が、決議2161(2014年)の第1段落で示される措置の対象となり、アルカイダ制裁リストに加えられることを決定する。
〔……〕
報告
22、監視チームに対して、ISILとANFによる脅威―地域全体に対する脅威も含めて―、彼らの武器・資金・徴募・人員数情報、脅威に対処するための追加的行動の勧告についての報告を、90日以内に委員会に提出するよう指示するとともに、この報告に関する委員会での討論の後、その主要な結果について委員長が安保理に説明するよう要請する。
「ISを名乗る過激武装組織への対応について」を抜粋します。
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私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
この間、ISを名乗る過激武装組織によって、2人の日本人の命が奪われるという事態が起こりました。残虐で卑劣なテロ行為を断固糾弾するとともに、ご家族に心からの哀悼の意を表します。
ISへの対応で、いま求められているのは、国際社会が一致結束して、一連の国連安保理決議に基づき、外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断ち、テロ組織を武装解除と解体に追い込んでいくことであります。
この点で、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が「あらゆる対テロ行動は、国際人権法・人道法と合致したものでなければならない」と述べていることは重要です。相手が最も野蛮で無法な組織であるからこそ、国際社会の側が、国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動することが何よりも重要であり、そういう態度を堅持することこそテロ組織を追い詰めていく一番の力になると考えます。総理の見解を求めます。
こうした悲劇を繰り返さないためにも、この間の日本外交の対応について、冷静な検証が必要です。私は、三つの問題点を指摘しなければなりません。
第一は、総理が、「テロに屈する」の一言で冷静な検証を拒否する態度をとっていることです。国会質疑で、わが党議員が、総理の中東歴訪での言動を指摘し、「そういう言動をとれば、2人の日本人に危険が及ぶかもしれないという認識があったのか」とただしました。総理は、質問に答えず、“そういう質問をすること自体が、テロに屈することになる”と答弁しました。「テロに屈する」の一言で、異論を封じ、冷静な検証を拒否するという態度でいいのか。私は、こうした態度をあらためることを強く求めます。2人の日本人が拘束されてから今日にいたるまでの政府の対応について、国民に納得のいく説明を行うとともに、検証にとって必要不可欠な情報を公開することを強く求めるものです。
第二に、総理は、米軍が行っているISへの空爆への支援について、「政策的にはやらない」としながら「憲法上は可能だ」と述べました。さらに、日本人人質事件と絡めて、「このように海外で邦人が危害に遭った時、その邦人を救出するため、自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない。そうした法制も含めて法整備を進める」と述べました。しかし、そもそも「救出作戦」とは、相手を制圧する軍事作戦です。それは人質の命も自衛隊員の命も危険にさらすことになります。自衛隊がそうした作戦を行うことは、憲法違反の武力行使にあたることは明白ではありませんか。今回の事件を機に、「海外で戦争する国」づくりを進めるなどということは、断じて許されるものではありません。
第三に、ISのような過激武装組織がどうして生まれたか。そのきっかけとなったのが、2001年、米国が開始したアフガニスタン報復戦争でした。「テロへの対抗」を名目にした戦争は、テロを根絶するどころか、その温床を広げる結果となりました。さらに2003年のイラク侵略戦争は、「地獄の門」を開き、泥沼の内戦を引き起こしました。これらの戦争が引き起こした混乱のなかから、モンスターのようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大していったのです。それは、マレーシアのナジブ首相が、「1人の悪魔を攻撃して、より大きな悪魔が現れた」と批判している通りであります。戦争でテロはなくせない、法と理性にもとづく世界の一致結束した行動によってこそテロは根絶できる、これこそ真の歴史的教訓ではないでしょうか。アフガン・イラク戦争に、日本政府は支持を与え、自衛隊を派遣しました。世界から無法なテロを一掃するためにも、アフガン・イラク戦争と日本政府の対応についての真摯(しんし)な歴史的検証を行うべきではないでしょうか。
以上、3点について、総理の見解を求めるものであります。
・・・・・・・・・・・
上記質問の中で触れられている「国連安保理決議」の「2170号」について、管理人が質問をした日本共産党国際委員会からの回答文書を転載します。
・・・・・・・・・・・
国連広報センターは2015年02月16日「安保理決議2199を邦訳しました。」
この決議は2月12日、全会一致で採択されたもので、国連憲章第7章のもと、ISILなどのテロ組織の資金源遮断のための措置を承認。人質の身代金支払いなどをしないよう求めています。全文テキスト → こちらをクリック[PDF]どうぞ、ご活用ください。
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「イスラム」国に関する国連安保理決議2170(2014年8月15日採択)
イラクとシリアの国境をまたいだ地域を支配下に置いているイスラム教スンニ派の過激武装集団「イスラム国」に関して国連安全保障理事会が全会一致で採択した決議2170の抄訳を紹介します。
決議は、「イスラム国」(決議ではその前身の名称「イラクとレバントにおけるイスラム国」(ISIL)としています)の残虐な行動を「人権侵害、国際人道法違反」として強く非難し、暴力やテロ行為の中止、イスラム国の武装解除、解散を要求しています。
「国連憲章第7章のもとで行動し」との一節がありますが、イスラム国掃討のために武力行使を認める表現はありません。具体的には、外国人戦闘員の参加を阻止する措置や資金源を断つ措置が決議されています。今後の対応については、監視チームが90日以内に、イスラム国の動向、脅威とさらなる対処のための勧告を含む報告を制裁委員会に提出するよう指示し、委員会での討論の内容を安保理に説明するよう求めています。国連ウェブサイトから。
安全保障理事会は、
その決議1267(1999年)、1373(2001年)、1618(2005年)、1624(2005年)、2083(2012年)、2129(2013年)、2133(2014年)、2161(2014年)およびその関連議長声明を再確認し、
イラク共和国およびシリア・アラブ共和国の独立、主権、統一および領土保全を再確認するとともに、さらに国連憲章の目的と原則を再確認し、
イラクおよびシリアの一部の領域が「イラクとレバントにおけるイスラム国」(ISIL)およびヌスラ戦線(ANF)の支配下に置かれていることに重大な懸念を表明するとともに、両者の存在、その暴力的な過激イデオロギー、その行動がイラク、シリアおよび地域の安定に及ぼす否定的影響―何百万人の強制退去につながっている、文民への破壊的な人道上の影響を含む―について、ならびに、宗派間の緊張を煽っている彼らの暴力行為について、重大な懸念を表明し、
文民の死やその他の犠牲、資産や文化的宗教的施設の破壊を引き起こして安定をほりくずすことを目的にした現在進行中の複合的な犯罪的テロ行為に関して、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体にたいする非難をあらためて強調するとともに、決議2161(2014年)にある資産凍結、渡航禁止、武器禁輸の要請がISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体に適用されることを想起し、
ISILの行為を含めテロリズムは、いかなる宗教、国籍、文明とも関連付けることはできないし、関連付けてはならないことを再確認し、
テロリズムは、テロの脅威を妨げ、撃退し、孤立させ、無力化するための、すべての国家、国際組織および地域組織の積極的参加および協力をともなう持続的で包括的なアプローチによってのみ打破することができることを強調し、
加盟国は、本決議を履行する場合を含め、テロリズムとたたかうためにとられるいかなる措置も、国際人権法、難民法、国際人道法をはじめ国際法上のすべての義務に合致するようにしなければならないことを再確認するとともに、効果的な対テロリズム措置と人権の尊重、基本的自由、および法の支配は相互補完的で相互に強め合うものであり、対テロリズムの取り組みが成功するための不可欠の部分であることを強調し、テロを効果的に防止してそれとたたかううえで法の支配を尊重する重要性に注目し、
〔……〕
すべての関係者にたいし、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体による暴力行為や、とりわけあらゆる形態の性暴力を受ける、女性および子どもをはじめ、文民を保護するよう勧奨し、
国連憲章および適用可能な国際人権法、難民・人道法を含む国際法に従って、テロ行為による国際の平和と安全にたいする脅威にたいして、あらゆる手段でたたかう必要を再確認するとともに、この関連でこうした取組みを主導して調整するうえで国連の果たす重要な役割を強調し、
ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が国際の平和と安全にもたらす継続的な脅威に懸念をもって注目するとともに、この脅威のすべての側面に対処する安保理の決意を再確認し、
国連憲章第7章のもとで行動し、
1、ISILのテロ行為とその暴力的な過激イデオロギー、目に余る系統的で広範な人権侵害の継続、国際人道法の蹂躙をもっとも強い言葉で非難し、糾弾する。
2、とりわけシリアのラッカ、デリゾール、アレッポ、イドリブ県、イラク北部のタミム〔キルクーク〕、サラヘディン、ニーナワー県における、無差別の殺害や文民を意図的に標的とする行為、多数の残虐行為、集団処刑、兵士を含む裁判なしの殺害、宗教あるいは信仰にもとづく個人や地域社会の迫害、文民の誘拐、少数派構成員の立ち退き強制、子どもの殺害や致傷行為、子どもの新兵採用と利用、レイプやその他の形態の性暴力、恣意的な身柄拘束、学校・病院への攻撃、文化的宗教的施設の破壊、教育の権利を含む経済・社会・文化的諸権利の行使の妨害を強く糾弾する。
3、民族的あるいは政治的背景を理由として文民の住民を対象にして行われる広範囲または系統的な攻撃は人道に対する罪になることを想起し、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が確実に人権侵害と国際人道法違反の責任をとるようにする必要性を強調し、すべての国家に対して、こうした違反・侵害を阻止するよう求める。
4、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体がすべての暴力とテロ行為を中止し、直ちに武装解除し解散することを要求する。
5、すべての国家に対して、決議1373(2001年)のもとでの義務にしたがって、テロ行為を実行・組織し、これに資金提供しているISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体を見いだし、法の裁きにかける活動で協力するよう求め、この点で、地域的な協力の重要性を強調する。
6、ISIL、ANF、アルカイダと連携している個人および団体が行っている、過激主義と不寛容によって動機づけられるテロ行為の扇動に反撃し、テロリストとその支持者たちによる教育・文化・宗教機関の破壊活動を予防するため、すべての国家にたいして、国際法のもとでの義務に従って必要かつ適切なあらゆる措置をとるよう改めて呼び掛ける。
外国人テロリスト戦闘員
7、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体による外国人テロリスト―その存在は紛争を激化させ、暴力の過激化を助長している―の徴募を非難するとともに、ISILその他のテロ集団と連携しているすべての外国人テロリスト戦闘員が直ちに退去するよう要求する。アルカイダ制裁態勢のもとで、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の活動のために徴募している、あるいは、同活動に参加している者のリスト作成を検討する用意があることを表明する。これには、ISILまたはANFのための外国人テロリスト戦闘員の渡航の資金調達や支援活動によるものを含む。
8、すべての加盟国にたいし、外国人テロリストの流入を抑制し、適用可能な国際法に従って、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の外国人テロリスト戦闘員を法の裁きにかける国内措置を講じることを求める。さらに、テロリストやテロ集団の移動を、適用可能な国際法に従って、とりわけ効果的な国境管理によって防止し、この関連で、主管当局間で情報を迅速に交換し、テロリストおよびテロ集団の自国領域への/からの移動、テロリストへの武器の供給ならびにテロリストを支援する資金調達を防止するための協力を改善するうえでの、加盟国の義務をあらためて強調する。
9、すべての加盟国にたいし、自国領内で徴募や暴力的過激化の危険のある者に関与し、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の支援や戦闘参加の目的でシリアやイラクに渡航するのを思いとどまらせるために関与するよう勧奨する。
10、各国は、自国領からの、または、自国領外の自国民による、または、自国の船舶や航空機を利用しての、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体にたいする、武器およびあらゆる種類の関連物資―武器・弾薬、軍用車両、軍用装備、準軍用装備、これらの交換部品、および、軍事活動に関係する技術的助言、援助または訓練を含む―の直接または間接の供給、販売、移転、を防止するとの安保理の決定を再確認するとともに、兵器取引に関する実際的な情報の交換を強め、加速する方法を見いだし、国内・準地域・地域・国際レベルでの取り組みの連携を強化するよう求める安保理のよびかけを再確認する。
テロリストの資金調達
11、決議1373(2001年)、とりわけ、すべての国は、テロ集団の構成員の徴募を抑圧し、テロリストへの兵器供給をなくすことを含めて、テロ行為の資金調達を防止・抑止し、テロ行為に関与している団体や個人にたいする、積極的であれ消極的であれ、あらゆる形態の支援提供を控えるとの安保理の決定を再確認する。
12、すべての国は、いかなる資金や金融資産、経済資源も、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体の利益のために、直接であれ間接であれ、自国民あるいは自国領内にいる人物によって、利用されないよう保証するとの決議2161(2014年)の決定を想起しつつ、すべての国は、自国民または自国領土内の人物や団体が、テロ行為を実行、あるいは実行を試み、あるいは実行の支援や加担を行う人物の利益のために、あるいは、こうした人物が所有または、直接・間接にコントロールしている団体や、こうした人物を代表して、あるいは、その指揮のもとに活動する団体の利益のために、直接であれ間接であれ、資金や金融資産、経済資源または金融関連サービスを利用可能にすることを禁止するとの決議1373(2001年)の決定を再確認する。
13、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が支配している油田と関連インフラが、彼らの徴募活動を助け、テロ攻撃を組織・遂行する作戦上の能力を強化する収入を生み出していることを懸念しつつ注目する。
14、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体が関わる直接・間接の貿易への関与を糾弾しつつ、こうした貿易は、決議1267(1999年)と1989(2011年)にもとづいた委員会が指定する団体への資金援助になること、また、委員会による指定団体リストの拡充につながることを改めて強調する。
15、自国民あるいは自国領内の人物が、委員会によって指定された個人や団体、あるいは指定団体を代表し、またはその指揮のもとに活動する者に寄付を行わないようにすることを保証する義務をすべての加盟国が順守する重要性を強調する。
16、ISILが支配する領域内を出発した航空機やその他の運搬手段が、国際市場での売却をめざす金などの高価な品目や経済資源の運搬のために、あるいは、資産凍結違反となりかねない他の活動に利用されている可能性があることに懸念を表明する。
〔……〕
制裁措置
18、ISILはアルカイダの分派集団であり、ISILとANFはアルカイダ制裁リストに含まれていることを想起しつつ、この点で、ISIL、ANF、その他アルカイダと連携しているすべての個人、集団、事業および団体のために資金調達や武器供与、作戦提供や徴募活動を行っている者など、インターネットやソーシャル・メディアなどの通信技術やその他の手段を通じて、ISILあるいはANFに対して支援を供給している個人、集団、事業および団体のリスト作成を検討する用意があることを表明する。
19、本決議の付属文書において特定する個人が、決議2161(2014年)の第1段落で示される措置の対象となり、アルカイダ制裁リストに加えられることを決定する。
〔……〕
報告
22、監視チームに対して、ISILとANFによる脅威―地域全体に対する脅威も含めて―、彼らの武器・資金・徴募・人員数情報、脅威に対処するための追加的行動の勧告についての報告を、90日以内に委員会に提出するよう指示するとともに、この報告に関する委員会での討論の後、その主要な結果について委員長が安保理に説明するよう要請する。