希少な夏休みの1日、市立大町山岳美術館を目指したのは、山岳画家・藤江幾太郎の「ヒマラヤの山村」という油絵を見るためであった。
藤江幾太郎の山の絵こそ、高田博厚の裸婦像と並び、いま、もっともわが心に響く芸術作品なのである。
自宅を出てから途中休憩を含めておよそ5時間のドライブ、ようやく到着した目的地ではあったが、こともあろうか、企画展のためにすべての絵が収蔵庫に仕舞われていて、お目当ての作品を拝むことは出来なかった。
しかし、ロケーションの良さや、常設展示の充実から大きな落胆はなかった。上の写真は同博物館3階から眺める北アルプスの山嶺。今日は雲が厚く、山頂はほとんど隠れていたが、それでもこの美しさ!
気を取り直して、向かった先は安曇野市穂高の碌山美術館。平日の午後4時過ぎの入館ということで、他に鑑賞者は数組のみ、実に静かに作品と対話することができたのは嬉しいことであった。
空の青が清らかで美しい。
このような空の下で、ブルックナーを演奏できたなら、どんなに素敵なことだろう!
この夏休み中は、高村光太郎の企画展「彫刻と詩」もあり。ボクの心を捉えたのは、どこかに甘さの残る彫刻よりも、ひたむきで、真っ直ぐで、暖かで、鋭く美の本質を突いた、美しい詩作の方であった。