ペトレンコ指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィル 2015年来日公演の初日を聴いた。
この日を選んだのは、大宮ソニックシティホールで14時開演というシチュエーションが、長岡帰りに都合が良かったからである。
結論を言えば、指揮、ピアノ、オーケストラ共に素晴らしかった。本当に満ち足りた想いの残るコンサートだった。
辻井伸行のピアノを生で聴くのははじめてであったが、最初の1音で心の全てが奪われた。そう、その音は、我々の暮らす三次元世界ではない、どこか別の世界に鳴っているのだ。そうなると、解釈がどうとかという問題ではなく、その清らかな世界に魅了されてしまう。しかも、打鍵が確かなので音には芯があって、パッセージは美しく煌めいている。
アンコール(曲目は写真参照)もよかったが、次回はリサイタルでじっくり聴きたいと思わせてくれる素晴らしいパフォーマンスであった。
ペトレンコ指揮のロイヤル・リヴァプール・フィルも、憂愁に充ちた音楽。弦の音色には、まるで寒い国の曇り空のような色彩感があって、ラフマニノフにぴったりなのだ。と思いつつ、休憩時間にプログラムを眺めたら、彼らにはラフマニノフの交響曲全曲のSACDがあるではないか! これは、近いうちに注文しなくては!
さて、メインのショスタコーヴィチも出色の出来。漆黒のキャンバスに黒の絵の具を塗りつけていくような第1楽章の美しさから、フィナーレの圧倒的な躍動感まで、とことん音楽を堪能した。これまた、彼らにはショスタコーヴィチの交響曲全集があるようだが、SACDではないのが、少し残念。しかし、ナクソス・ミュージック・ライブラリで聴くことが出来るのは良いことだ。
アンコールの1曲目、ラフマニノフ「ヴォカリーズ」は、歌心、呼吸、音色、すべてが揃った名演で、溜息しか出ない。こうした小品をかくも格調高く演奏できるということは、ペトレンコは本物の芸術家である証だ。
残る公演の全てを追いかけたい衝動に駆られたが、地方を含め1公演も予定が合わない。甚だ残念ではあるが、今日だけでも聴くことができて良かった、と思うことにしたい。
辻井伸行 with ヴァシリー・ペトレンコ
&ロイヤル・リヴァプール・フィル
≪Aプロ≫
ショスタコーヴィチ:祝典序曲(ロイヤル・リヴァプール・フィル創立175年記念演奏)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 [ピアノ:辻井伸行]
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
2015年1月22日 14:00 於・大宮ソニックシティ 大ホール