毎日新聞 2015年10月07日 22時39分(最終更新 10月07日 23時05分)
米連邦捜査当局に収賄に絡む容疑で逮捕された元国連総会議長のジョン・アッシュ容疑者(61)には中国人ビジネスマンらから得た賄賂の一部を出身国であるカリブ海の島国アンティグア・バーブーダの首脳に分配した疑いも浮上、当局は徹底捜査の構えだ。国連は24日に創設70年を迎えるが、全加盟国を代表したこともある大物逮捕にニューヨークの国連本部には衝撃が走った。
当局の発表によると、贈収賄があったとされるのは2011~14年で、贈賄側などとしてマカオの不動産開発業者、呉立勝容疑者(67)ら4人とドミニカ共和国の次席国連大使も訴追された。アッシュ容疑者の直接の逮捕容疑は脱税。脱税では容疑発生時も外交官の不逮捕特権が適用されないという。
ニューヨーク連邦地検のバララ検事は6日のコメントで、「アッシュ(容疑者)はロレックス、オーダーメードのスーツ、自宅のバスケットボールコートと引き換えに自分と自身が導いた国際機関を売り渡した」と断罪し、13~14年の総会議長時だけでなく、国連大使時の容疑も捜査対象だと言明した。アッシュ容疑者はアンティグア・バーブーダでの利権獲得に関心を持っていた呉容疑者と首相の面会の橋渡し役も担ったとされる。
当局の発表によると、呉容疑者は「国連マカオ会議センター」を建設するため、アッシュ容疑者に50万ドル(約6000万円)以上を提供。同容疑者は見返りに、建設の必要があると指摘する文書を潘基文(バンキムン)事務総長に提出、便宜を図った疑いがある。
事件を聞いた欧州外交官は「恥ずかしいの一言だ」とぽつり。アッシュ容疑者には「賄賂を渡せば推進したい政策を後押ししてくれる」とのうわさもあったという。別の外交筋は、米司法当局が国際サッカー連盟(FIFA)汚職事件など国際的な汚職に厳しい姿勢であることを挙げ「国連も例外ではないということだろう」と分析した。(共同)