明鏡   

鏡のごとく

図書館にて

2015-10-14 23:28:13 | 詩小説
図書館にて借りし、古き映像をかへりみるにつけて、ひとつふたつ、おもふことあり。

「夜と霧」は未だ、熟読にいたらず、いめいじのむこうにはいたらず。

霧のたちこめる夜であろうと、朝であろうと、目の前にあらわるる亡霊の群れであろうと。

いきのこるためのひとすくいのすーぷがひつようなのだとおもふ。

私はいま、いきているのであろうかというまえに、借りてきた黒猫のように、踵を返し、図書館の中のはばかりにいきつく。

やりのこしたことをやりおえたように、ようをたしたところで、図書館の人がやってきて、はばかりながら、はばかりを確認していた。

いじょうなし。

とばかりに、てんこされたみとしては、ここはひとつのはんせいべや、ろうごくなのだとおもいいたる。

私はいま、いきているまえに、しんだようなきになる。

いっぽんのしんだようなきになり、図書館の人を見送り、そこにじっとつったてさえいたのだ。