<「水素社会」の実現めざす日本勢>
無公害燃料が家庭や乗り物の電力をまかなう「水素社会」の実現を国家目標に掲げ、その一環として燃料電池車(FCV)の技術やインフラ整備に重点的に投資している。
日本側は今週、一段と大きな賭けに出た。ホンダ(7267.T)は東京モーターショーで燃料電池を使う水素自動車の量販モデルを発表。日本では来年3月に発売し、主要市場の米国と欧州でも順次売り出す。「クラリティ・フューエル・セル」と名付けたこの新モデルを同社は一般消費者が手の届く価格設定で発売する予定だ。
同社執行役員の三部敏宏氏はロイターとのインタビューで「水素社会を実現するには絶対に車(水素自動車)が必要」と述べ、一般ユーザーに受け入れやすい価格での提供が「水素社会を実現する着火剤になる」との期待を示した。
同社によると、クラリティはセダンタイプで、政府による補助金を抜いた小売価格は766万円。トヨタの「ミライ」に続く水素自動車の市販モデルとなるが、トヨタとの技術面の違いは燃料電池スタック(燃料電池、モーター、変速機を一体化したもの)の小型化で、08年に米国の一部ユーザーに試験的に販売したモデルより約30%のサイズ縮小を実現した。
チーフエンジニアである本田技術研究所四輪R&Dセンターの清水潔主任研究員によると、クラリティでは燃料電池スタック全体をボンネットの下に格納し、大人5人が快適に座れるスペースを確保した。水素パワートレインをさらに小型化することで既存の商品への展開が楽になり、「フィット」や「オデッセイ」などにも水素自動車モデルが実現できる可能性があると清水氏は指摘、「そこにこだわって車を作ってきた」と成果に自信を見せた。 政府支援も強化されており、安倍晋三首相は成長戦略に水素自動車の購入への補助金や税制優遇措置、水素燃料ステーションに対する規制緩和など水素エネルギーを促進する様々な措置を盛り込んだ。トヨタの「ミライ」には、政府は約200万円の購入補助金を出し、神奈川県などでは自治体として補助金の上乗せも行っている。政府は3月までに水素自動車がまず導入される都市部で、水素燃料ステーションを100カ所整備する目標を掲げている。 「水素自動車は当然ながらインフラの整備が必要。国レベルの推進策がないと難しいが、日本は相当に政府が投資しており、(水素自動車への支援は)世界でも圧倒的に進んでいる国だ」と三部氏は話す。 <いずれにも大きな課題> 次世代車の動力源をめぐる覇権争いは、日中間だけでない。水素自動車の開発では、米ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)がホンダと、BMW はトヨタと提携