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日本酒-7 / 6.滓澱(オリ)引き、濾過

6.滓澱(オリ)引き、濾過 - 生酒(なましゅ)、無濾過酒 -

上槽した酒をタンクのなかで数日おくと、固形物が沈澱して上部が澄んできます。
このあいだに糖分が増加して味に”慣れ”が出るとされます。
これが”滓澱(オリ)引き”で”滓下げ”ともいいます。

ふつうタンクの下のほうに呑穴という取出口がふたつあり、 上を上呑、下のを下呑といいます。
「上呑」というサブタイトルもあったような気もしますが、さだかではありません。

上澄みの部分を「生酒」(なましゅ)といい、「生酒」(なまざけ=”火入れ”していない酒)とは意味が異なります。
上澄み部分を「原酒」として出荷することもあるようで、「原酒」の定義はいささか混乱しています。

濾過工程はふつう滓澱引きのあとに入ります。
活性炭やフィルターををつかい、色や雑味を取り除く方法が一般的ですが、「生酒」系では”限外濾過”(げんがいろか・UF/ultra-filtration)という酵母さえも濾過する方法で”火入れ”をせずに出荷されるものもあります。

濾過用活性炭には多くの種類があり、とくに淡麗度に影響を与えるとされていることから、独自のノウハウをもつ蔵元も多いようです。
濾過以降の工程をせずに出荷する酒は「無濾過酒」といわれます。
ふつう濾過は”火入れ”の前工程なので、「無濾過生(原)酒」とされることもあります。



〔家にある日本酒たち-2〕

純米吟醸 山古志(お福正宗) お福酒造(株)/新潟県長岡市 山古志産棚田栽培米 精米歩合60%

川鶴 吟醸 川鶴酒造(株)/香川県観音寺市 麹米 山田錦 掛米 オオセト 精米歩合50% 9号酵母

純米吟醸 以津美 鈴木酒造(資)醸造・月山酒造(株)瓶詰/山形県寒河江市 出羽燦々 精米歩合50% 山形酵母

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日本酒-1
日本酒-2 / 1.玄米
日本酒-3 / 2.精白
日本酒-4 / 3.蒸米・麹・酒母
日本酒-5 / 4.もろみ(仕込み・造り)
日本酒-6 / 5.搾り
日本酒-7 / 6.滓澱(オリ)引き、濾過
日本酒-8 / 7.火入れ ・ 8.貯蔵・熟成
日本酒-9 / 9.濾過・火入れ(2回目) ・ 10.割水
日本酒-10 / ■味覚からのネーミング
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日本酒-6 / 5.搾り

5.搾り - 新酒、原酒、搾り、雫酒、新走り、中汲み -

アルコール発酵がよわまってくると、これを圧搾機で搾って、新酒(原酒)と酒粕にわけます。”上槽(じょうそう)”ともいいます。
搾りやこのあとの濾過をおこなわないものが”にごり酒”や”どぶろく”です。
ふつう、発泡性のものを”どぶろく”、そうでないものを”にごり酒”とよぶようです。

その年にはじめて搾った新酒を「初搾り」といい、”初搾り式”がおこなわれるほど大切なものです。
厳密な意味での「初搾り」は杜氏さんがその年のお酒の出来を確認するのにつかわれますが、つづいて搾られたものが「初搾り」、「一番搾り」として出荷されることもあります。
このように、”搾り”は日本酒のイメージがつよい工程なので、キリンの”一番搾り”がでたときは違和感を感じた業界関係者もいたそうです。

圧搾機をつかわず、もろみを袋に吊るして滴らせる方法もあります。こうしてとられた酒は「雫酒(しずくざけ)」と呼ばれて珍重されます。

伝統的な圧搾機は船底のようなかたちをしていたので、”槽(ふね)”とよばれ、搾り口を”槽口(ふなくち)”といいます。
槽口からの搾りたては「搾りたて」「新酒」などとネーミングされます。新酒特有の炭酸含みの爽やかな新酒香と酸味が特徴で、早春が旬とされます。
ただし、日本酒の製造年度は毎年7月から翌年6月で、製造年度内に出荷されたものを「新酒」と銘打つこともあります。

新米をつかった槽口からの搾りたて酒をとくに「新走り(あらばしり)」と区別する蔵元もあるようです。
「新酒」系の酒はたいてい若々しく荒削りな飲み口を供するので、それを受けてか「荒走り」とされることもあります。

初搾りや新走りのつぎに中間層から搾られる酒を”中汲み(なかぐみ)”、”中垂れ(なかだれ)”、”中取り(なかどり)”などといいます。
味や香りはこなれてバランスがとれているとされ、「中汲み」「中取り」と銘打たれることがあります。

上槽時、最後に出てくる部分は、”責め”、”押し切り”などといわれ、アルコール度数が高く濃い酒質となりますが、これはサブタイトル化されることはあまりないようです。



〔家にある日本酒たち-1〕

李白 特別純米酒 李白酒造(有)/島根県松江市 島根県産酒造好適米 精米歩合58%

梅乃宿 純米吟醸酒 梅乃宿酒造(株)/奈良県葛城市 精米歩合50%

越乃四季 純米大吟醸 柏露酒造(株)/新潟県長岡市 精米歩合40%

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日本酒-5 / 4.もろみ(仕込み・造り)

つづきです。

4.もろみ(仕込み・造り) - 小仕込み、樽仕込み、段仕込み -

もろみとは酒母に麹、蒸米、水を加えたもので、これが酵母の働きで発酵して原酒をつくりだします。
日本酒づくりで重要な発酵工程で、”仕込み”ともいい、「一麹、二酛、三造り」の”造り”にあたります。
このもろみを”仕込む”ときにつかう蒸米が”掛け米”です。

ふつう、発酵に充分な酵母を育て活性を保つため、酒母に蒸米、水を一気に加えず何回かにわけて加えられるので、「段仕込み」ともいわれます。
一般的なのは3回で、これを「三段仕込み」といい、1回目から3回目までそれぞれ”初添”、”仲添”、”留添”という名がついています。
2日目に”踊り”という発酵調整期間をはさみ、仕込み工程は4日ほど。
”留添”のあとに、蒸米を糖化して4回目の仕込みをしたものを「四段仕込み」といい、ふつう甘口の酒質になるとされます。
「五段仕込み」など段数を多くした表示もみられますが、酵母の活性を保つには「三段仕込み」で充分とされ、段数の多さは酒質に比例しないという見方が一般的です。

どういうタイミングでどの程度の麹、蒸米、水を加えていくかはまったくの職人技で、これにより酒質が大きくかわるそう。杜氏さんの力量が問われるところです。
なにしろ相手は酵母なので、気温や湿度などでデリケートに変化するうえに、蒸米や麹、酒母の仕上がり具合までもふまえ長年の感覚でこなしていくので、その難易度はただごとではなく、コンピューター化するとしたらいったいどのくらいのパラメーター(変数)が必要なのか、ちょっと想像がつきません。(完全な置き換えはできないと思う。)

この”仕込み”を小ロットで丁寧におこなうのが「小仕込み」、仕込みを樽の容器でおこなうのが「樽仕込み」です。


加賀の銘酒・常きげん 鹿野酒造(株)/石川県加賀市 純米酒

”留添”のあとはもろみをじっくりとアルコール発酵させ、20日ほどで約18度くらいの度数になります。
アルコール発酵は二酸化炭素を生むので、ふつう、もろみには”水泡”、”かに泡”、”玉泡”など、発酵状況に応じた泡が発生しますが、泡の管理を省いたり、仕込み量を増すため、”泡なし酵母”という泡を発生させない酵母もつかう蔵元もあります。
ただし、これはサブタイトルとして記載されることはあまりありません。

また、”搾り”の前に醸造用アルコールを添加すると、すっきりとした辛口に整い香りを引き出すとされ、必ずしも「純米」にこだわる必要はないという見方もあるようです。

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