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■ 休符の価値

活動再開なった西野カナの曲をあらためて聴き込んでみたら、抜群に休符のつかい方が巧い。
そこで、何曲かの名曲について「休符」に注目して聴いてみました。
「休符の価値」、やっぱり大きいと思う。

■ 君って - 西野カナ

意識的に含蓄のある”間”をつくりだしていることがわかる。

■ 恋におちて -Fall in love- 小林明子(Covered)

イントロのサビメロ(ピアノソロ)と1:11~の「手をとめた」のあとの”間”を聴き比べると「休符」のもたらす力がわかる。

■ First Love - 宇多田ヒカル

「休符」のつかい方がもっとも巧いシンガーのひとり。

■ This Love - アンジェラ・アキ

アンジェラ・アキの休符のこなしも一級品。
1:06~「ある時から(休符)無口になり」
1:19~「この恋が(休符)引き裂かれそうになった」

■ メディテーション - 松田聖子

0:58~
「もしもあなたが(休符)夜だったら 星座になりたい」
「道に迷った(休符)旅人なら 光をあげたい」
聖子ちゃんの休符はヒーカップが絡んだりしてオリジナリティ抜群。
それに、作曲の上田知華も休符づかいの名手だから・・・。

■ 朧月夜~祈り - 中島美嘉

やっぱり歌の名手は休符の扱いが巧い。
絶妙にゆらぎをのこした休符(というか”間”)。たまらん。

■ One Reason - milet (映画「鹿の王 ユナと約束の旅」主題歌)

久しぶりに聴いた「休符」を思いっきり活かした曲。
とくに2:52~。

■ 【カラオケバトル公式】佐久間彩加:Crystal Kay「君がいたから」/2020.12.13 OA(テレビ未公開部分含むフルバージョン動画)

佐久間彩加ちゃんの歌がキレッキレなのは、繊細な休符のこなしが抜群に巧いこともあるかと。

■ 桜ノ雨 - +α/あるふぁきゅん。【歌ってみた】

ボカロ曲にもしっかり「休符」を活かした曲はある。
1:48~
「大人になれたのかな_教室の窓から桜ノ雨_ふわりてのひら_心に寄せた_」
(_が休符がよく効いているパート)

■ far on the water - Kalafina

梶浦由記さんと歌姫が繰り出す休符は唯一無二。
3:20~「はじめての(休符)うたのように(休符)僕たちは」
完璧なコーラスのなかに散りばめるられる休符が、抜群のキレをもたらす。

■ 栞天野月 feat.YURiCa/花たん

花たんは超ハイトーンビブが決め手のように思われがちだが、休符のつかい方も絶品。
1:41~「かなしい過去を(休符)忘れてしまえば(休符)わたしが消えるような気がした」

歌(花たん)にしても楽曲(天野月)にしても、才気のかたまり。
こういう人たちが、もっともっとメジャーになってもいいと思う。


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2024-01-27 UP

最近の曲を聴くと”疲れる”と感じる人は少なくないのでは?
これは単にノイジーなフレーズやビートの音圧、そしてせわしい4つ打ちによるものだけではないと感じていました。

芥川也寸志先生の『音楽の基礎』(昭和46年初版)を読んでたら、示唆に富んだ文章がありましたのでご紹介します。

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真の静寂は、連続性の轟音を聞くのに似て、人間にとっては異常な精神的苦痛をともなうものである。
(略)
真の静寂は、日常生活のなかには存在しないまったく特殊な環境ではあるが、この事実は音楽における無音の意味、あるいは、しだいに弱まりつつ休止へと向う音の、積極的な意味を暗示している。

休止はある場合、最強音にもまさる強烈な効果を発揮する。

われわれがふつう静寂と呼んでいるのは、したがってかすかな音響が存在する音空間を指すわけだが、このような静寂は人の心に安らぎをあたえ、美しさを感じさせる。

音楽はまず、このような静寂を美しいと認めるところから出発するといえよう。
作曲家は自分の書いたある旋律が気にいらないとき、ただちにそれを消し去ってしまうだろう。
書いた音を消し去るということは、とりも直さずふたたび静寂に戻ることであり、
その行為は、もとの静寂のほうがより美しいことを、みずから認めた結果にほかならない。

音楽は静寂の美に対立し、それへの対決から生まれるのであって、音楽の創造とは、静寂の美に対して、音を素材とする新たな美を目指すことのなかにある。
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前々から漠然と感じていたのですが、最近の曲は休符がすくなく、音で隙間を埋め尽くしていくような曲調が多い。
その結果として、サウンドの音圧が上がっているのでは・・・。
(ここでいう「休符」とは譜面上の休符ではなく、むしろ静寂や ”間” に近いものです。)


【休符がすくない例】

■ You Spin Me Round - Dead Or Alive (1984年)

POPSを休符の支配から遠ざけた張本人SAW (Stock Aitken Waterman)。
個人的にはいまのPOPシーンは、いまなおこの曲の流れのうえにあると思う。

■ New Jack Swing The Best Collection

休符の世界からさらに離れていった(と思っている)NJS(New Jack Swing)。
跳ねてるようだけど、じつは4つ打ちやタテノリとの親和性が高い。

■ U.S.A. - DA PUMP (2018年)

↓ と聴き比べてみると、この曲がユーロビート(SAW)の流れのうえにあることがわかる。

■ ダンシング・ヒーロー(Eat You Up) - 荻野目洋子 (1985年)

この曲調でなんと洋楽カバー
ユーロビートには、ヨコノリがまったく乗らないことがわかる(笑)
でもって、この先も「洋楽の歌謡曲化(ベタメロ化)」が進みタテノリ4つ打ち全盛の時代へ・・・。

■ 天体観測 - BUMP OF CHICKEN (2002年)

後の世代に大きな影響を与えたといわれる期を画した曲。
いまもこの系統のバンド・サウンドは腐るほどある。

■ 'Dynamite' - BTS (2020年)

いまでもこのフォーマットは、世界のPOPシーンのメインストリーム。


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【休符を活かした例】

■ Lowdown - Boz Scaggs (1976年)

1983年までの洋楽に休符は欠かせないものだった。
休符が創り出す”音のキレ”と”グルーヴ”はウエストコーストミュージックの身上だった。

■ 16ビートDr&Bass リズム音源

16ビート裏拍(アップビート)+シンコペーション。
休符が思いっきり存在を主張していたフォーマット。

■ Let's Celebrate - Skyy (1981年)

”休符”というか、”音の隙間”と洒落っ気が身上だった往年のBCM(ブラック・コンテンポラリー)。


■ 童謡で比較 裏拍と表拍 ーメリーさんのひつじ編

1970~1980年代前半の音楽好きはほとんど洋楽を聴き込んでいたから、知らず知らずに裏拍(アップビート)&休符の洗礼を受けていた。
これをベースにシティ・ポップが創り出された。

■ ベルベット・イースター - 荒井由実 (1973年) 【Covered】

荒井由美時代のユーミンの曲はどこか凜とした空気感を帯びている。
これも静寂(休符)のなせるワザか。

■ 水銀燈/Mercury Lamp - 杏里 (1984年)

静寂から立ち上がるインストとボーカル。
そして静寂を活かした”キメ”と"グルーヴ"。
1980年代のシティ・ポップは16ビートシンコペ絡みで、休符のつかい方がすこぶる巧かった。

■ I Need You - 角松敏生(1984年)

休符や”間”の価値を知り尽くしていた角松敏生。

■ YES MY LOVE - 矢沢永吉 (1982年)

休符が創り出す”オトナの余裕”。

■ Everlasting Song - 梶浦由記(FictionFunction&Kalafina) (2009年)

休符(静寂)の活かし方が抜群に巧い梶浦由記さん&歌姫&FBMの名テイク。

■ 花降らし - pazi(歌ってみた)

音圧高いけど、絶妙に休符が効いている例。
ブレイクビーツ系4つ打ちと、アップビート系のグルーヴと変拍子が混在してる。
1980年代では表現することができなかった音世界。
こういう曲聴くと、J-POPは確実に進歩していると思う。
でも、メジャーシーンに出てこれない。


■ Leave the Door Open - Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic (2021年)

”休符の魅力”&”ヴォーカルの力量”を取りもどしたBruno Marsのディレクション。
彼らが世界中の音楽好きから愛される理由がわかる気がする。


■ 4つ打ちとグルーヴ (音のスキマ論-0)
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