12月14日、ヘンデルの「メサイア」を聴きに行くことになった。
二十数年前、合唱団にいた時歌った曲だ。
あまりにも長いため、合唱部分は何曲かカットされた。
しかし、思い出に残る曲だった。
この時、有名な「ハレルヤ」に進んだが、
客席のあちこちで、席を立って聴く人が現れた。
だいたい2~3割・・だったろうか。
私は驚いたが、とにかく歌い終えると拍手が起こり、
立っていた人々は、また着席した。
終了後、団の仲間に聞いた。
「ハレルヤで立ち上がった人、あれ何ですか?」
その時、初めてこの曲のエピソードを知った。
1743年、『メサイア』がロンドンで初演された際、
この「ハレルヤ」が演奏されると、客席で聴いていたジョージ2世が
感動のあまり立ち上がった。
これにつられ、聴衆も立ち上がった。
そして、拍手をもって讃えたという。
当時イギリスでは、 全知全能の神を讃える歌が演奏される時は、
起立して聞く習慣があった。
「ハレルヤ」は、それに匹敵した曲だったのだろう。
しかし、疑問もわく。
ジョージ2世が立ち上がったのは、曲の途中だったようだ。
なので、聴衆も次々に立ち、終了と共に拍手といういきさつだが、
・・初演である。初めて聴いた曲の途中で、
全能の神を讃えるにふさわしい、と判断できたのだろうか。
だとしたら、この王は大変な感性と耳の持ち主である。
結局今では、このエピソードも本当ではないといわれている。
だが日本では、これに倣って、
「ハレルヤ」の際は聴衆が起立するという現在に至っている。
おそらく、クラシックの曲の中で、
途中で聴衆が立ち上がる(しかも全員ではなく「希望者」)というのは
この曲だけではないか?
でも、エピソードの真偽はともかく、こういう倣わしがある曲もいいな、と思う。
立ち上がることで、「私は知識があるんです」と、
アピールする嫌味、と感じる人もあるようだが、
270年前の話が続いているのも良いではないか。
私は当日どうしようかな・・。
でも、あの二十数年前の、自分が歌ったときの驚きと感動を思うと、
そっと立って、じっと聴いて、拍手を送りたいな・・と考えている。
演奏者、合唱団と、私達聴衆が、
この曲の歴史を共にしていることを感謝して・・。