AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

ゲゲゲのくとぅるう

2014年10月05日 | ルルイエ異本
読書の秋ということで、連続してマンガの紹介。
久々にクトゥルー神話に関する興味深い資料的文献をブックオフで入手したので。

まぁ、近年のクトゥルーぷちブームに便乗してPHPから刊行された陳腐極まりないクトゥルフ神話シリーズコミックは別にして、昨今日本の漫画家がクトゥルー神話をベースにマンガを描くってのは珍しくなく、当ブログでも紹介した諸星大二郎、、夜魔峰央・・・中でも室山まゆみ先生がかつて『あさりちゃん』の中でクトゥルー神話を盛り込んだエピソードを描いていたという記事には、かなりの反響があった。
でも、やっぱり日本を代表するような巨匠クラスの作家になると、なかなかそういった作品にはめぐりあえない。

ところが!妖怪描かせたら右に出る者はいない、あの巨匠水木しげる大先生が、過去にクトゥルー神話をベースにどころか、ラヴクラフトの小説をまんまリメイクした作品を描いてらっしゃるというのを皆さんはご存知であったか!!
(って、大声張り上げちゃったけど、クトゥルー神話関連のガイドブックにけっこう紹介されているので知ってますよね)



初期の頃、水木しげるが貸本時代に描いた短編名作選『魍魎』の中に収録されてある「地底の足音」(1963年)は、まぎれもなく「ダンウィッチの怪」の日本を舞台にした翻案ものである。
これは私のいつものコジツケやホラ話でもなんでもない!マジな話である。
これはおそらく、日本マンガ史上最古のクトゥルーマンガであろう。

まぁ私自身、水木しげる関連のアイテムや妖怪図鑑的なものは幼少の頃から数点所持はしているものの、コミックスとなると『ゲゲゲの鬼太郎』すら購入したことがない。
水木作品はあまりおもしろいと思ったことがないのだ。妖怪画は天才的で魅力的なんであるが、物語運びがテンポ悪いというか、画風がどうも苦手。
だから今回の短編集が私の初購入水木しげるコミックスとなったわけだ。

『妖怪大図鑑』なんかは、今見てもワクワクするね。



さて、この『地底の足音』は、ラヴクラフトの原作をほぼ忠実にマンガ化したものであるといっていいが、ちょっとしたジャパネスクな土着風味のアレンジも施されている。
まず、舞台が水木先生の生まれ故郷の鳥取県であり、八つ目村という寒村で怪事は起こる。鳥取大学は、アーカムのミスカトニック大学にあたる。
この大学の民俗学研究室の金庫には、ペルシャの狂人アトバラナ(あるいはガラパゴロス)が書いた『死霊回帰』のポルトガル語版が所蔵されているが、これはおそらくアルハザードのおそるべき『ネクロノミコン』の写しであろう。
八つ目村には、ウィルバー・ウェイトリーにあたる怪童蛇助が祖父の足立文造とともに住んでいる。
この蛇助、けっこうカワイイ顔をしているのだが、ウィルバー・ウェイトリー顔負けの凶暴さで、質問に答えないとその人間を殺しかねない気性の荒さを持っていて、その容姿と気性のギャップがかえって得体の知れない邪悪さを醸しだしている。



そして、蛇助の父である邪神<ヨグ=ソトース>であるが、これがなんとここでは「ヨーグルト(ソース?)」になってるという、水木流?の安直なノンセンスユーモアが含まれている。
このヨーグルト退治に際して、鳥取大学の白井博士が「ポークショ」やら「KOTOSOTOKO」なる呪文を唱えているのも、水木先生の我流アレンジか?

ちなみに、姿が見えない巨大な怪物が村中を破壊して歩き回るという原作のオリジナル設定は、『ゲゲゲの鬼太郎』の「朝鮮魔法」に登場するぬっぺふほふの話にリライトされているとのこと。
ぬっぺふほふの4兄弟のうち、一体だけ巨大で姿が見えない特異体質の持ち主で、村人から“アリランさま”と恐れられているのだとか。
妖怪大図鑑では、単に「古寺付近をただ歩き回るだけの妖怪」って解説だっんだけど、ひょっとしたらこの妖怪、ヨグ=ソトースの血を引いているのでは・・・・・?


ぬっぺふほふ。ウィンクしたりと見た目はかわいらしい。

効能 / 痩せているひとも太れる。ハァ?


しかし、生きていらっしゃるうちに、水木しげる先生の筆による『クトゥルー邪神大図鑑』の作製がなんとか実現しないものだろうか・・・・・




今日の1曲:『ダンウィッチの怪』/ 人間椅子
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クトゥルフ神話検定 その他の恐怖

2013年12月08日 | ルルイエ異本
いよいよ戦慄すべき『第1回 クトゥルフ神話検定』3級試験の火ぶたが切って落とされた。

五芒星の印の入った護符を忘れてきたことでかなり動揺したが、問題用紙を開いて解いていくうちに徐々に平常心を取り戻すことができた。
特に1ページ目の問題はおそろしく基本的な設問で、なんの迷いもなく解くことができた。
いや、昔いくつかの大学を受験したが、ここまでスラスラ解けるのは今回が初めてだ。それはまさに水を得たディープ・ワンのごとき爽快な気分だった。
これは90点以上もありえるんじゃないかと有頂天になったのもつかの間、中盤になってちょっとやっかいな設問が出はじめだした。
特にダーレス作品関連の設問が多くなってきて難儀した。いや、ダーレス作品はいくつか読んではいるのだが、いかんせんどれも退屈で陳腐極まりない内容のが多いため、軽く読み流す程度で、作品名すら記憶が曖昧なのだ。細かいことなど無論覚えているわけがない。
あと、私はやっぱり数字モノに弱い。不覚だったのは、ラヴクラフトの誕生日を把握していなかったこと。いや、死んだ年は覚えてたんやけどね。連邦政府がインスマウスを襲撃した年なんかわかるかいな。
クッソー、ルルイエの正しい位置は必死で覚えたのになー、「南緯47度9分なんでか死なないクトゥルー」とか工夫してよぉ。
それからジャパネスククトゥルーもんの細かい設問はカンベンしてーって感じだった。「『妖神グルメ』で、ダゴンに襲われたアメリカ海軍空母は?」て、神話的な設問からかけ離れすぎてるやろ!この作品自体はおもしろくて2回ほど読んだが、軍事オタク的な設問はよそでやってくれって感じ。

全くわからなかった問題は全部で20問くらい。多分これやと思うがちょっと自信なかった問題が10問くらい。70点以上が合格圏内なのでけっこうギリギリ。自信のない問題にはチェック入れといて、問題解き終わって30分以上時間が余ったので、さっきチェックしといた設問をジックリ吟味することができた。あとで答えを書き直して間違ってしまったのもあったが、書き直したことで4問くらい助かったのはデカかった。
いや、今回は設問の中に、けっこうヒントや答えが見え隠れしていたんですわ。
問006の「『クトゥルフの呼び声』で、ルルイエらしき謎の島に上陸し、手記を残したオスロ出身の船員は?」という設問で、最初③ヨハン・ゲレラにしていたが、問044にも『クトゥルフの呼び声』関連の設問が出てきて、その4択の中にグスタフ・ヨハンセンの人物名があったので「あ、さっきのはこっちやった!」と書き直すことができた。
あと、ついさっき発見したのだが、問023の「『狂気の山脈にて』で、太古の南極に住んでいた知的種族の別名は?」という設問。問002の問題文で答えゆーてもーてるがな!


試験終了後、こういった常軌を逸した検定を受ける類の人間に話しかけてはならないと自分に言い聞かせてはいたが、試験前にこの大学の跳ね上がり椅子のシステムに戸惑っていた私に、親切に座り方を教えてくれた後ろの席の青年に、オッサン特有のふてぶてしさでついつい「今日の試験どないでしたか?」と話しかけてしまった。
その後話をいろいろ聞いてみて、彼が実は17才の高校生だったことを知り驚いてしまった。その歳にしては話し方に落ち着きがあり、胸元のシャツからチラと見えた胸毛がボーボーすぎだったからだ。
彼は実はクトゥルー神話に最近興味を持ちだしたばかりだという。関心を持ったキッカケは、彼の友人でクトゥルーTRPGにハマっている者がおり、仲間同士でゲームに興じているところを側で見ていて、この一種異様な独特の世界観に魅了されたのだという。
このTRPG仲間のうち、プレイ中にSAN値が0をきったとき、「ロデリック・アッシャーだ!!」などと叫んで本当に発狂したのではないかというくらいの真に迫った演技をする者もいるのだという。その際どさくさに、横の女子プレイヤーに抱きついたりするという話を聞いて、はっはーん、実はこれにあやかりたいのだなと、すぐに察知した。
いや、男子が新たに物事を始める動機なんて、だいたいこんなもんですわ。私だってあやかりたい。



しかし、さっきから彼がクトゥルー神話のことをくぐもった声で「クトゥルフ」と発音するのには、なにかしら名状しがたい不吉な違和感を覚えていた。それに彼の足をひきずるような歩き方も気になった。人間ではない、他の異界的ななにかを思わせた。
その訝しげな私の視線に気づいたのか、彼は「いや、実は先日足を怪我してしまいましてね」などと、聞いてもいないのに白々しい説明をはじめたのだ。
そして次の瞬間「あ、だから親に車で迎えに来るよう頼んでるので、ちょっと電話しますね」とケータイをとりだしいそいそと電話をかけはじめたとき、「あ、これはいけない、仲間を呼ぶ気だな!」と私はすぐに察知し、「すみません、もう電車がくる時間なんでこの辺で失礼します」と一目散に駅の方向へと駆けていき、すぐさま電車に飛び乗った。
危機一髪だった。一瞬だが、背後で彼が人間の発音器官から発せられる言語とは全くかけ離れた言葉で、なにかを叫んでいる声を耳にしたような気がした。
はぁはぁ息を切らせながら電車の座席にドカっと腰をおろし、この暗澹たる古さびれた街から離れていく景色を窓越しに見やった時、やっと安堵のため息をついたのであった。


今回の記念すべき『第1回 クトゥルフ神話検定』、こんなものを受験してほんとによかったのだろうか?と、後悔の念が日増しに募ってくる。
私はそれから、外出するときは必ず古代の地ムナールで採掘されたという灰白色の石でできた五芒星の護符と、試験会場で参加特典として受験者に配布された紙製の「ネクロノミコン風ブックカバー」(せめて人皮装丁にしろよ)を肌身離さず持ち歩くようにしている。




そして、京都の最果ての地キヅイエで、名誉あるクトゥルフ神話検定3級の合格通知が届くのを、夢見ながら待っている。



今日の1曲:『2度目の最後の晩餐』 / 10cc
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クトゥルフ神話検定 始動

2013年12月07日 | ルルイエ異本
オールナイトでメタルDJでフィーバーした後の日曜、私にはもうひとつの異界的なイベントが待ちうけていた。

そう、『第1回 クトゥルフ神話検定』である。

明け方メタルバーを出て、家に帰ってまた大阪出てくんのもあれなんで、そのまま河内の試験会場まで直行することにした。
といっても、試験は12時からなのでそれまでマクドで仮眠をとることに。
DJのための大量のCDをカバンにパンパンに詰め込んでいたため、クトゥルフテキストは軽量の廉価コンビニ本『本当に恐ろしいクトゥルフ神話』一冊しか持ってきていなかった。



『クトゥルフ神話検定』なるものの存在を知り、受験を決意してから約1ヵ月、ほとんど勉強は手に着かなかった(「とか言ってるやつに限って必死こいてやってるんだー」みたいな憶測は断る!)。まぁこんなもの受けてなんになるんだ!?というモチベーションの低さも原因だが。
本屋で『クトゥルフ神話検定公式テキスト』の巻末に掲載されていた練習問題に目を通して、半分くらい答えられたので勉強せんでも3級くらいならいけるんちゃうかーっていう自信もちょっとあった。
高い受験料に少し躊躇ったが、主催者側さんの今後のクトゥルー神話布教活動資金として、えいままよ!と思い切って振り込んだ。

試験会場は、梅田から電車で30分もかからないところだったので、ゆとりを持って赴けた。駅に近づくにつれ周囲の人間が気になってくる。このスマフォの時代に、向かいに座っているきれいなおねえさんが手に持って読んでいる分厚い書物は、ひょっとしてアブドゥル・アルハザードの『ネクロノミコン』?あるいはリン・カーターの『クトゥルー神話全書』・・・・?などという甘美な幻想を抱きながら、駅に着き電車を降りる。やはり向かいのおねえさんは電車を降りることはなかった。世の中そんなに甘くない。

降りた駅の街は植民地時代の雰囲気をそのまま色濃く残しており、古さびれたビルや商店が立ち並びやけに閉塞感を漂わせていた。

でもこの「レッド小阪」っていうネーミングはなんかカッコいいね。



このビルディングに施されたレリーフは、私が夢の中で見た未知なるカダスに住むといわれる大地の神々の姿におそろしくも似通っていた・・・・
やはり、この街には何かある。




試験会場である大学に着く。
なんと、我々が異界的な試験を受けようとしている階の下では、どうやらもうひとつの『日本城郭試験』なる名城しがたい試験が執り行われるようであった。
まぁお互い「なんやねん、この検定!」と思っていたのだろう。




オオオ・・・この古色蒼然たる石碑に刻まれた象形文字には一体なんの意味が・・・・
やはり、この大学には何かある。




受験票の案内地図に従って校内を進んでいき、試験会場である4号館に着く。
入口には、禍々しい不吉なシンボルと我々を試験会場へといざなう矢印がプリントされた貼り紙がしてあった。
開始番号00001~終了番号00047とあり、どうやら受験者数は47人程度。教室ひとつ分くらいか。
それに対し、「日本城郭検定」の方は教室3つ分くらいの人数であったろうか。
まだ時間があったので、1階のロビーでマズいカフェオレをチビチビやっていると、あのおそるべき『図解クトゥルフ神話』を片手に、勇ましくも試験会場へと向かう者の姿が!
私もカフェオレを飲み干し、あわててエレベーターで5階へと向かう。




エレベーターを降りると、やはりなにやら異階的な暗澹たる瘴気がたちこめているような気がした。
貼り紙の矢印にいざわなわれるまま、おそるおそる教室に入ると、もうほとんどの受験者が着席している様子だった。
女性の試験官がふたりいたが、別段浅黒い肌をしているとか、目が異様に開いているというようなこともなかった。
自分の席に着席して、もう今さらジタバタしても始まらないので、私はいざという時の脱出経路を確認してから、受験者ウォッチングにいそしむことにした。
年齢層はアラサーが割合をしめてたと思うが、中には50過ぎのおじさんおばさん、高校生くらいの少年もいた。女性受験者は5、6人程度。服装はみないたって地味で、まぁメタルDJ帰り風の格好をしているのは私ぐらいだったか。
みな熱心にテキストに目を通している。私のななめ向かいのおばちゃんはルーズリーフにクトゥルフ神話まとめ書きみたいなんを作成してきているみたいだった。律儀に『クトゥルフ神話検定公式テキスト』を購入して、高校の期末テスト勉強さながら赤マーカーで線ひきまくり(緑のクリアシートでマーキング箇所が消えるあれね)の人も見かけた。シナリオライター志望とか、ゲームクリエイターの類の人たちだろうか?私みたいにフラフラ雰囲気を楽しみにきたってのはあまりいなさそうだ。


そして、午後12:00。
試験官の「カモグ!カモグ!」という合図とともに、『第1回 クトゥルフ神話検定』の試験がスタート。

そのとき私は、五芒星の印の入った護符を忘れてきていたことに気づいたのであった!


つづく・・・・


今日の1曲:『YOU KEEP ME HANGING ON』/ VANILLA FUDGE
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アパートに残されたアーマ=スィンの日記

2013年11月30日 | ルルイエ異本
下記の記述は、すべてアーマ=スィンの『ニンギジッダ通信』から抜粋し、転載したものである。


10月24日
『クトゥルフ神話検定公式テキスト』てまた何出してんねん。大そうなタイトルつけてからに・・・・と、本屋でニヤニヤしながら本を手にしたら、ホ、ホンマに実施されるのね・・・・

10月24日
【クトゥルフ神話検定練習問題】
問1.日本のハードロックバンド、人間椅子のクトゥルフ神話曲で、次のうち題材に使われていないラヴクラフト作品はどれか。

1.狂気の山脈にて 2.ピックマンのモデル 3.ダンウィッチの怪 4.時間からの影


答 2.ピックマンのモデル

10月24日
【クトゥルフ神話検定練習問題】
問2.ハスターを召喚するときの呪文は、次のうちどれか。

1.イア、イア、ハスター 2.イヤン、バカん、ハスター3.いや~、その~、ハスター 4.よよよい、よよよい、よよよい、よい!

問2の答→該当なし。

[解説] 消去法でいくと、1.イア、イア、ハスターを選択してしまいがちだが、これはバイアクヘーを召喚するときの呪文。つまり、これはひっかけ問題である。というか、私の出題が間違っていた(はずかピー)。


10月29日
第1回クトゥルフ神話検定3級を・・・・・申し込んでしまったー、しまったー、シマッター、シマッター・・・・・・・マツシター・・・・・


11月13日
私以外に、Perfume「1mm」のサビの歌詞のところ、「もういい もういい・・・」の次の「くないよぉ」のところを、どうしても「くなんしょ」と歌ってしまう者はおるか?


11月13日
ヨグ・ソトホーホケキョ。


11月24日
クトゥルフ神話検定の受験票が届く。なんと試験場が東大阪にある私立大学の館内。いや、せいぜいまんだらげあたりの一室で軽いノリでやるのかと思ってた。それとも、この大学がミスカトニック大学ばりの暗黒神話の宝庫的アカデミーだとでもいうのか。


11月25日
クトゥルフ神話検定試験受けてる夢を見た。萌え系の出題ばっかで「うわあああ~~~~!!」と発狂しかけて目が覚めた。


11月25日
クトゥルフ神話検定の試験日まで一週間をきった。さぁやるぞ!これらの冒瀆的書物を読み解いていって、SAN値すり減らして、ホップ、ステップ、ナイアルラトホテップ!!



私が受けるのは3級だが、2級とか合格しちゃう人って、たぶん正気とか失ってるんだろうなぁ~


さて、床に就いて浅い眠りの中で巨大な階段を70段下りてって、<焔の神殿>セミナーでナシュト先生とカマン=ター先生のご教授でも受けにいってくるか。




11月30日
さて、大阪にいくか・・・・まてよ、あの手はなんだ?

窓に!窓に!


今日の1曲:『Dream Land』/ Perfume
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グラーキの黙示録 その他の恐怖

2013年09月09日 | ルルイエ異本
昨夜、期限切れ間近のドリンクバーの無料クーポンを消化すべく、仕事帰りにガストに寄った。
店内はちょうど夕食時で家族連れなどで喧々としており、ひとりドリンクバーでまったり過ごすには環境が劣悪だったが、私には春に手に入れた耳栓代わりのi-phone(ただし電話、メール機能は使用不可にしてある)と、そして2ヵ月前に購入して忙しさの中なかなか読むことができなかった扶桑社刊行の『古きものたちの墓 クトゥルフ神話への招待』があった。

このアンソロジーは、クトゥルフ神話にまつわる英国作家の作品が4編オムニバス形式で収録されており、コリン・ウィルソンの表題作をはじめ、ブライアン・ラムレイの作品が一点。そして、ラムジー・キャンベルの長年未訳であったブリチェスターもの2作品「ムーン・レンズ」、「湖畔の住人」が収録されていることがなによりも心騒がされる。
「ムーン・レンズ」は先月すでに読了しており、シュブ=ニグラスの化身にまつわる奇譚だが、これはラヴクラフト御大がもし読んだなら、床に投げ捨てていた(もしくは大幅に添削していた)であろう陳腐極まりない内容であった。
その夜、ドリンクバーのホットミルクをすすりながら私が熟読したのは、本オムニバス大本命の「湖畔の住人」。そう!いよいよあの淡水のオールド・ワン、“グラーキ”が登場するのである。

ま、話は病んだ画を得意とする幻想画家が、霊的インスピレーションを求め人里離れたいわくつきの土地に引っ越し、そこで毎夜不気味な出来事(悪夢、物音など)に見舞われるといったよくあるパターンの話。今回の舞台はイギリスのセヴァーンヴァレーの湖畔。
その土地の朽ち果てた一軒家に、前の住人が残した手記や書物などが見つかり、その中のひとつが、あのおぞましい『グラーキの黙示録』という訳だ。

『グラーキの黙示録』は全部で十一巻あり、原本を旧式のルーズリーフに複写したもので、さながら許可なく写し取った海賊版といったところ。しかし、これが世に出た唯一の完全版らしい。
本書には、グラーキの生態のほか、「ヴルトゥームはまだ幼年期にある」という種族のことや、吸血鬼の起源や、月の裏側にある黒い都市を歩きまわる青白い亡霊のこと、スグルーオ人との交信を可能にする異次元通信機のことなどが詳しく述べられているという。
『グラーキの黙示録』は1800年頃から勢力をのばしはじめた異教徒たちの間で代々書き継がれ、1865年頃、欠落のある九巻本の海賊版が出版されたものの、組織の外に出ることはなくほとんどが信者の手に渡り、その九巻本も今ではほとんど入手困難だという。
問題の異教団体はセヴァーン湖に棲んでいる何かを崇めていた。その崇拝している対象については、詳しい説明はあまりない。玉虫色の生物という描写があるだけで、イラストなどもついていなかった。トマス・リーによる図を参照のことと脚注があったが、イラストははぎ取られてしまったらしい。鋭い棘を生やしているという説明が繰り返され、それについては何人もの人間が詳しく語っていた。
実は、私はこの湖に棲んでいる何かの似姿の図を、偶然立ち寄った書店の棚にあった『クトゥルフ神話超入門』という書物の中で目撃しているのだ!

    

地球にグラーキが出現した経緯については、周辺の住民の話によると、数世紀前、宇宙空間をさまよっていた隕石とともに地球に落下してきたというのが通説になっている。あのセヴァーン湖は、その時の隕石落下によってできたクレーターに数世紀に及び水が溜まったものだという。
一方『グラーキの黙示録』には、「さまざまなエジプトのミイラにあの棘が埋め込まれているのが発見されているので、古代エジプトのセベク神殿やカルナック神殿の司祭たちが<タグ=クラターの逆角度>と呼ばれる呪文によってグラーキの潜む小惑星を呼び寄せグラーキが大昔から地球に飛来していた」と主張する異端の説も書かれている。

『グラーキの黙示録』には、グラーキがいかにそこに棲む民をゾンビ化させ、おのれの僕と化していくかがこと細かに記されている。
グラーキはまず、湖に近づいてきた者に睡眠中、波動を送って夢を見させ、疑似体験をさせるのだという。その夢にはある異教団体の入信儀式の光景が映し出される。
グラーキ崇拝に参加する新人は入信の儀式をおこなう決まりで、魔女のしるし伝説にも似た、独自の信教上の段取りを踏まねばならなかった。
新入りは(望むと望まざるとにかかわらず)グラーキが水の底から現れるまで湖畔で信者たちに捕えられている。グラーキは棘のひとつを生贄の胸に突きたて、怪物の体内からそれを経由して体液が流し込まれる。生贄となった新入りが注入を拒んで棘を抜けば、どうにか人間として死ぬことができるが、もちろん怪物はそれを許さない。注入された体液は全身にまわると棘は抜け、刺さった部分から出血することはない。グラーキの脳から発生する電波が磁力の働きにより、生贄の人間は生きながらも完全に怪物に操られてしまうのだ。
『グラーキの黙示録』によると、怪物が電波を発していないときは、生贄はわずかながら自発的に行動できるという。半分死んでいるような状態が60年もたつと、強い日光にさらされたときに<緑色崩壊>が起きるような体質になってしまう。
あと、ハイチのゾンビ話も、グラーキの僕になった初期の信者が太陽の光を浴びたときの恐ろしい姿がもとで誕生したものではないか、とも書かれているそうな。

近年のゾンビ映画ってのは、ほとんどが米軍かどっかの組織が秘密裏に開発した人間をゾンビ化させる生物兵器のガスかなんかの漏出が原因で発生するという設定が主流である。私は学生の頃深夜テレビでたまたま放映していた『バタリアン』を鑑賞して以来、この設定に嫌悪感を抱くようになり、ヴァンパイアやゾンビ映画自体嫌いになってしまった。あのしつこさが面倒くさいというか。
でもこのラムジー・キャンベルの『湖畔の住民』を題材にこのグラーキ設定で、サム・ライミあたりが監督して映画撮ったら、斬新で面白いものが出来るんじゃないかなぁ~なんて、ガストのドリンクバーのマズい煎茶をすすりながらボ~っと考えていた。


すると突然、外からドーーン!!という音とともに、奈良の夜空に張り裂ける邪悪な光をガストの禁煙席の窓ごしに目撃した。
なんのことはない。それはただの打ち上げ花火であったが、もうとっくに夏も終わっているのに、このような奈良市内の街中で、いったいどこの酔狂めいた私設団体の仕業なのだろうと不審に思えてならなかった。
しかし、しばらくして、窓の外の夜空に舞いあがったものが、棘々とした不気味なウニ状の形に変化したとき、(ちょうど『グラーキの黙示録』の記述の箇所を読んでいたこともあって)それをあの<湖の住人>と錯覚し、私は人目もはばからず、こう叫んでしまったのであった。


窓に!窓に!



今日の1曲:『Zombie Ritual』/ Death
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誰が殺したクットゥルー神

2013年03月05日 | ルルイエ異本
ああ、クトゥルー神話探究心が嵩じて、まさかブックオフで立ち読みしてる女の子に交じって、少女マンガ本まで買い漁ることになろうとは・・・・

白泉社の“花とゆめCOMICS”レーベルより刊行され、80年代に絶大なる人気を博した魔夜峰央先生の長寿サスペンスギャグ漫画『パタリロ!』は、アラフォー世代の方には馴染み深いかと。私も幼少の頃、夕方に放映されていた『パタリロ』のアニメをよく見ていて、笑い転げていた記憶がある。放送コードスレスレのホモセクシャルなシーンも、幼心に直視してられぬ禁断的な刺激があったし、クックロビン音頭もよく真似したっけか。
実はこの『パタリロ!』の作者である魔夜峰央先生は、大のクトゥルー神話好きで有名で(てゆーか怪奇・ミステリー小説全般の愛読者なのであろう)、『新編 真ク・リトル・リトル神話体系 6』の巻末に先生のインタビュー記事が掲載されているほどである。

今回105円コーナーで入手したのは、『パタリロ! 第69巻』。本巻には、「バンコランVSベールゼブブ」という、パタリロたちが魔界の大公爵と対決する長編ゴシックホラーものが掲載されているのだ。
ここでパタリロが、彼の先祖パタリロ6世が記した日記を取り出してきて、その内容を紹介している。なんでも彼の祖先はお金欲しさに悪魔に魂を売り渡し、この日記は、パタリロ6世が魔界で大公爵の下僕となって働いていた頃に書いた魔界の記録なのだとか。



以前、第62巻に掲載されている「再び東カリマンタン」の巻では、パタリロが「いや、取り越し苦労はやめにしよう。クトゥルーの邪神が宇宙の深淵から攻めてきたらどうしようと心配するようなもので、可能性はほとんどゼロに等しい。」と、クトゥルーの実在を否定するかのようなひとり言を漏らしているが、本編では完全にクトゥルーの邪神と人間との関わりを容認している。
パタリロ6世の日記によると、人間とはクトゥルーの邪神どもが地球に送り込んだ夜鬼どもを駆逐するために、<旧神>が送り込んだ創造物であるということがほのめかされている。う~む、『狂気の山脈にて』では、地球の先住種族である<古のもの>が造り出した失敗作だとされているが、魔夜先生は<古のもの>=<旧神>という論説をお持ちなのであろうか。
いずれにせよ、不思議な復元能力を持つパタリロは、魔界からのなにか、クトゥルー神のなんらかの能力を受け継いだものであることは確かなようである。


魔夜峰央先生の作品でもうひとつ、プリンセス・コミックスから刊行された『アスタロト外伝』という幻の著作があるが、これは魔夜先生のクトゥルー趣味が爆発した、禁断の闇黒神話マンガと呼ぶべき奇作。
主人公のアスタロト公爵は、バンコラン風の美男子キャラクターであり、美少年たちをかこって少年男娼を営む魔界から地上に降り立った大悪魔。ま、飽くまでノリはコメディータッチで『パタリロ!』と大差はない。



クトゥルー神話体系の教義は随所に渡って言及されており、『アッシュールバニパルの写本』、『ネクロノミコン』(バチカン宮殿付属図書館の禁書室に所蔵)など、続々と闇黒魔書も登場する。そして、この魔界の大公爵と対峙するは、這い寄る混沌“ナイアルラトテップ”!
残念ながら、両者の決着はつかぬまま未完となってしまっている。おそらくテーマがマニアックすぎるため打ち切られたのであろう。
まぁ、2ページにも渡って何の挿絵もはさまず(いや、あんたマンガ家だろ!)ダラダラとわけのわからん闇黒神話の教義をたれ流されたら、そりゃ普通の読者はついけいけまへんで。
私としても、少女マンガの線の細い描写(切り絵っぽい)は苦手で、クトゥルーものとしてはちと迫力に欠ける。
ただ、一世を風靡した人気マンガ家であったにもかかわらず、これほどまでに踏み込んだコズミックホラーマンガに挑んだ先生の、クトゥルー愛とその意気込みには敬意を表したい。


社会現象にまでなった「クックロビン音頭」


今日の1曲:『Beelzebub』/ Bill Bruford
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東亜九頭龍絵巻

2013年03月01日 | ルルイエ異本
現在、熟読中の書き下ろし<クトゥルー神話>アンソロジー『秘神界』であるが、入手困難であったこの稀覯書を手にした時の感激とは裏腹に、なかなか読み進めないでいる。
これまで幾編かの日本人作家によるクトゥルー作品を読み漁ってきたけど、まぁ最初の頃は和風テイストを暗黒神話に盛り込む作家のギミックの妙を大いに楽しませていただいていたが、今となってはその新鮮さも驚きも減退してきている。
本書でも、『ネクロノミコン』を『涅久録之密経』といった程度のあて字遊びが随所に出てくるが、そういうのにも飽きた。

歴史編は先月読了したが、様々な舞台、時代のクトゥルー神話が掲載されていた。
『邪宗門伝来秘史(序)』という物語では、キリスト教を布教しに日本に渡来したフランシスコ・ザビエルが、突如「ダニチ(大日如来)」なる邪教に帰依し、日本各地で暗黒の布教活動を行う話であるが、アイデアとしては面白いし、歴史資料などを丹念にリサーチして、史実に沿ってうまい具合にクトゥルーテイストを盛り込む作者の努力は認めるが、いかんせん、ストーリー展開が単調かつ稚拙でつまらない。



本書中、最も始末に負えなかったのが、『五瓶劇場 戯場国邪神封陣』という歌舞伎作家を主人公とした江戸物クトゥルー話。まず漢字の多さに辟易させられる。顔見世興行のシステムやうんちくをイヤというほど説明され、葛飾北斎や森島中良、十返舎一九などの江戸時代に活躍した著名な浮世絵師や浄瑠璃作家などが節操なく続々と登場し、その著作をダラダラと並べたてるという・・・いや、禁断の書物を並べたてるってのは、クトゥルーもんの慣習ではあるが、日本文学史の講釈聞きたいのとちゃいまんねん!
そのくどくどしさに、何度も本を床に叩き付けたくなる衝動にかられたが、なんとか正気を保っていた。で、肝心の邪神退治の場面は、緊張感もクソもなくアッサリとかたづけられるという、知識は残らないが、疲労感だけが残る駄作。

ツイッターで偶然見つけた『九頭龍浮世絵図』。あまりのセンスの良さに正気を失いかけた。
http://cybernetic.blog.shinobi.jp/



ただ、中には暗黒神話慣れしきった私の下劣な好奇心を大いに満たしてくれる作品も何編かあって、『西遊記』をベースにした『苦思楽西遊傳(クスルウーさいゆうでん)』は、大いにこころ騒がされる傑作であった。
古代中国を舞台としたこの物語は、「孫悟空の述懐」、「緒悟能の記憶」、「沙悟浄の物語」という、三つの章から構成されており、各章で3キャラクターが語り部として物語が進んでいく。各々の語り口調や語気にもそれなりの個性や迫力があって、本格的な中国伝奇小説を読んでるかのような雰囲気が楽しめる。
彼らが目指すは、超知識の宝庫、全ての事柄を記した図書館と言われる“無名都市”。ま、西遊記でいう“天竺”だ。五感を敏感にする“遼丹”、黄金の蜜酒+横笛+呪文でもってして出で現れる“白竜”(バイアクヘー?)など、気のきいた神話的小道具も随所に出てくる。
そして彼らが師匠、三蔵法師玄奘の双眼には、ポッカリと黒い穴が穿たれていたのであった!
ここまで説明したら、この物語がなんのパロディか、もうおわかりですね。
まぁ、ダーレス原作の元ネタ作品はダラダラと退屈な話であったが、クトゥルー神話を体系化させるにあたって、確かにあれはクトゥルーネタの宝庫的作品であったことを再認識。
でも、こっちの『苦思楽西遊傳』の方が、スマートにまとめられていて好み。



今日の1曲:『MONKEY MAGIC』/ ゴダイゴ
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サーペンス・アルバム

2013年01月09日 | ルルイエ異本
今年は巳年ということで、ヘヴィメタルバンドの蛇的なジャケットを並べてみようかと思ったんだが、ホワイトスネイクのアルバム以外は、Y&Tの『MEAN STREAK』が思い浮かんだぐらいで、あれのアナログ盤どこいったか忘れた。
あ、そうだ!メタリカのブラックアルバムも確か蛇がトグロまいてるやつだったな、と思ったが持ってなかったことに気づいた。

さて、巳といえばやはり思い起こされるのが、世界各地で見られる蛇神崇拝のことである。
南米のアステカの神話の中にでてくる“ケツァルコアトル”という蛇神は、緑色の翼のはえた巨大な蛇で、人の姿をとることもある。言い伝えによれば人間に火を与えたとされる。
中国の太古の龍伝説にも、“伏義”と“女媧”という兄妹神がでてきて、頭は人だが、身体が鱗を覆っていた。易という占いの起源となる八卦も生み出し、やはり人間に火を与えたという。

しかし、中でも極めて偏執狂的なのが、アメリカは中央オクラホマの特定のインディアン部族の間で盛んな蛇神“イグ”信仰であろう。
イグは、“外なる神”の一柱であり、あらゆる爬虫類の始祖とされることもある。イグの眷属にあたる蛇を害する者を蛇に変え、おぞましい死を与える。ゼリア・ビショップの著作にある、オクラホマで蛇を殺した夫婦がイグによって呪い殺される話は有名だ。
そう、イグは子煩悩で知られる神性なのだ。
しかるがゆえに、蛇に敬意をもって接する限り、危害をもたらすことはない。それどころかイグの恩寵を受けた者には、絶大なる富が与えられるという。



現在では絶版となって、闇黒神話としてはすこぶる希少価値の高い朝松健氏が編纂したクトゥルーアンソロジー『秘神界』の“歴史編”と“現代編”の2冊を、昨年末にセットで入手することに成功した。
その“歴史編”の中に収録されている、末殿理央という作家が著した『蛇蜜』という物語がかなり興味深く、日本人が書いたとは思えないほど西洋的闇黒神話の雰囲気が出ており、構成力も豊かで読み応えがあった。
主人公が自分が“イグの仔”であるという、己のおぞましい運命に目覚めていく半生を追ったもので、まぁ言うなれば「インスマウスの影」のイグ版といったところであろうか。
この物語の中で、彼の父ジェイムズ・ジョンソンが著した『アメリカ大陸と東洋における蛇神崇拝について』というオリジナルの文献が出てきて、彼はミスカトニック大学付属図書館で、ルドウィック・プリンの『妖蛆の秘密』を読み耽っているうちにイグの蛇神崇拝のことに触れ、ある日突然中央オクラホマに旅立ち、数年後にひとりの息子をもうけて帰ってきたのだそうじゃ。その男の子は、一見普通の子であったが、予知能力に長けているほか、10月から12月にかけて異常な飢餓感に苛まれ、凶暴化し手がつけられないありさまだったという。
しかし、その男の子の予知能力のおかげで、ジェイムズは貿易事業で巨万の富を得たのだそうじゃ。
彼は息子アルバートに謎の手記を書き残して、ほどなくしてこの世を去った。

ああ、誉むべきかな蛇神イグ。その仔らに永久の栄えあれ!


で、なにが言いたいのかというと、今年は巳年ということもあるので、蛇を大切にしようということである。
とくにオクラホマでは何人も蛇を殺してはいけません。

さて、今宵はカテドラルの1st『この森の静寂の中で』に収められている宗教ナンバー“蛇眼”でも聴いて、蛇神イグの呪わしく甘美な蛇蜜に思いを馳せることにいたそうか。

大蛇の出現を待つ夜に
その魂をたたえる歌を、召還の呪文を
大蛇召還を待ち我らは改宗す




てな感じで、今年も自由奔放に何のためにもならないブログ記事を更新していく所存にございます。
謹んで、新春のお喜びを申し上げます。

今日の1曲:『Serpent Eve』/ Cathedral
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今日の魔女信仰

2012年11月24日 | ルルイエ異本
悪魔主義的ドゥーム・メタル・バンドの重鎮たるElectric Wizardのすでに廃盤で入手困難であった2007年作の6th『Witchcult Today』を入手。

エレクトリック・ウィザードは、カテドラルのリー・ドリアンが主宰するRise Aboveレコードのお抱えバンド。
全編に渡ってズルズルと引き摺るような濁ったギターサウンドが渦巻いており、古色蒼然たるヴォーカルスタイル、おどろおどろしい楽曲センス共に懐古趣味も甚だしい70年代ハード・ロック・スタイルを貫いている。まぁ私もこの手のバンドはどちらかというと好んで聴く方なのだが、このエレクトリック・ウィザードに関してはなかなか琴線に触れてくる要素が見当たらない。
根幹にあるのはブラック・サバス直系のヘヴィネスなのだが、サバスほどの表現の自由さや拡がりは持ち合わせていないし、さほど個性も感じられない。
ブックレット内の黒魔術儀式の写真といい、かつてサタニックなハード・ロックを求めて止まなかった若かりし頃に、バンド名やジャケットに惹かれ購入してしまったBlack Widowの『悪魔と魔女と生贄』に近いものを感じた。雰囲気はそれなりに出せてはいるものの、表現力が安直というか、アイデアに乏し過ぎるというか。
まぁ徹底した重苦しいドゥーム感、悪魔主義を貫いた結果なのであろうが、せっかくオルガン奏者とかいるんやったらそれをもっと効果的に活用して欲しかったかと。


もう容貌からしてヤバすぎるな。ちなみにドラマーのショーン・タラーは、実際悪魔崇拝儀式で毎晩7時間叩いていたという経歴の持ち主だそうだ。



日本盤はヘビー・サウンド・ロックの(帯より)「リーフハウンドレコード」からリリースされており、帯にはレトロな字体で『今日の魔女信仰』というステキなタイトルに、曲全てに邦題が付けられていて70年代的アナログ感を演出してくれている。まぁそこまでやるんやったら紙ジャケにしてくれよと言いたいところだが、今回は別にそういうのが目的じゃない。

実は私があまり好みではなかったエレクトリック・ウィザードのこの背徳的作品をどうしても手に入れたかったのは、本作に“DUNWICH”(邦題「忘却の村」)というタイトルの曲が収録されていたからにほかならない。

ホラー映画マニアのジャスが、1970年に映画化された『H.P.ラヴクラフトのダンウィッチ・ホラー』というタイトルから拝借したとのことだが、ブックレットの謝辞リストにラヴクラフトの名前がクレジットされており、元々ラヴクラフト小説のファンであったのだろう。




まぁ“DUNWICH”を「ダニッチ」と発音する方が正しいのか、「ダンウィッチ」と発音する方が正しいのかと、闇黒神話論者の間で長年議論され続けたテーマであった。
創元推理文庫の『ラヴクラフト全集5』では「ダニッチの怪」のタイトルで掲載されているが、人間椅子の楽曲のタイトルを含め、ハヤカワ・ミステリのアンソロジー『幻想と怪奇2 英米怪談集』などの古い文献では「ダンウィッチの怪」のタイトル表記であり、スペル的にもこっちの方が妥当なのではないかと。
で、今回のエレクトリック・ウィザードの“DUNWICH”を聴いてみると、やはり「ダンウィッチ」と聴こえるので、それを確かめられただけでも本作を長年探し求めた(といっても3年程度か)甲斐があったというものである。


そうだ、この曲をかけながら今度、『ネクロノミコン』に載っていたドゥホウ=フナの呪文、イルからヌフングルまでの呪文を試してみよう。




今日の1曲:『忘却の村』/ Electric Wizard
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魔女よ、誘惑するなかれ

2012年11月17日 | ルルイエ異本
前回の『みなせゼミの名状し難き夏休み』の記事で、アーカムの魔女“キザイア・メイスン”についてちょっと触れたので、もう少し言及しておこうかと思う。
みなせゼミ民俗学探索パーティの一員である眼鏡美人の古物商、信濃川さんが「アーカムの魔女といえば、アセナス・ウェイトかケザイア・メーソンかというぐらい有名な魔女です。」と言っていたことからも、この魔女がいかに畏怖すべき存在であるかが窺い知れることだろう。

アメリカ合衆国はマサチューセッツ州に実在する田舎町セイレムは、1692年の魔女裁判で有名な土地。
200名を越える住民が魔女の嫌疑をかけられ逮捕され、獄死したものを含め死者の数は25人にも上ったという。(ウィノナ・ライダーが告発人役を演じる映画『クルーシブル』でもその時のことが克明に描かれてるのでご参考までに。)
ほとんどの者が無実の罪であったらしいが、キザイア・メイスンはこの逮捕者の中のひとりで、一時はセイレムの刑務所に投獄されたが、死刑宣告後、まんまと脱獄に成功してアーカムに落ち延び、とある駒形切妻造りの屋根裏部屋を隠れ家として暗躍していたという。それ以来、この屋敷は<魔女の家>と呼ばれるようになる。
キザイアの独房の壁には、赤いネバネバした液体で描かれた特異な曲線や角度が残されており、当事者であるコットン・マザー(『不可視世界の驚異』などの著書で魔女狩りを扇動した聖職者)もこの脱走劇の謎を解くことは出来なかったという。
キザイアは脱獄前、高等刑事裁判所にてホーソーン裁判官に、「ある種の直線と曲線をもってすれば、空間の壁を抜けて、そのむこうの別の空間に通じる方向を示せる」ことを告げている。
あと、<暗黒の男>と呼ばれる存在との契約のこと、その存在に“ナハブ”という別の新しい名前を授かったことも語ったという。
この<暗黒の男>こそ、『ネクロノミコン』でほのめかされている<ナイアルラトホテップ>の顕現にほかならない。

また、キザイア・メイスンは“ブラウン・ジェンキン”という人間くさい名前を持つ使い魔を飼っており、おぞましくも己の血を吸わせて育てていたという。
ブラウン・ジェンキンは、大型の鼠くらいのすばしっこい毛むくじゃらの生物で、鋭い牙を持ち、髭を生やした人間の顔をしているという。あらゆる言語を話し、なにかにつけて鼻をこすりつけてきたりと、とにかくタチが悪くおぞましい存在だという。

<魔女の家>は実在する。傾斜した屋根裏の外壁と内壁の間には、三角形の空間があるという。


ミスカトニック大学の理数系の学生ウォルター・ギルマンは、かつてキザイア・メイスンの隠れ家であった切妻造りの屋根裏部屋に下宿しており、その部屋の壁と天井にやけに不規則な傾斜を見いだし、その壁と天井のおりなす奇妙な角度になにかしら数学的な意味合いを読みとってから、測り知れない太古から連綿と伝えられる魔術伝承と高等数学とを結びつける、ある種の直線と曲線による空間移動の可能性を解き明かそうと躍起になっていったのだった。
彼は大学の付属図書館で恐るべき『ネクロノミコン』や断片だけが残る『エイボンの書』、ルドウィク・プリンの『無銘祭祀書』などを調べるうちに、すでに空間の特性ならびに、既知の次元と未知の次元の繋がりに関わる自らの象徴的な方程式に関連をもつ空恐ろしい手がかりを見いだしていたのだ。
深みにはまった彼は毎晩悪夢を見るようになり、夢の中でキザイア・メイスンが執り行うおぞましいサバトの闇黒の儀式に立ちあったり、怒号する果てしない薄明の深淵や、隆起をもった樽状のグロテスクな小像の並ぶ欄干のテラスに立っている妙な夢の情景にうなされるようになる。
そして、ある夜ギルマンは、屋根裏部屋のベッドの上で心臓をえぐられた変死体と変わり果ててしまうのであった。
床には人間の手に似た小さな血の足跡が残っていたという。

実は私の住んでる部屋の天井の壁にも、奇妙な角度をもった出っ張りが見いだされる。
幸い私は高校卒業が危ぶまれたほどに昔から数学が大の苦手なので、そっからキザイアの移動した空間などを見いだすことはまずないだろう。
まぁ1階に住む迷信深い住民が哀れっぽい祈りを唱えはじめたり、南天の海蛇座とアルゴ座のあいだにある一点に引き寄せられそうになったら、せいぜい気をつけようかと思う。

念のためお札と警護は配してある。


今日の1曲:『魔女よ、誘惑するなかれ』/ Black Sabbath
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己の正気度を試せ!

2012年11月15日 | ルルイエ異本
いやいや、また読むクトゥルー本がなくなっちまって、とうとうこんなもんに手を出してしまった。
表紙からしてなんかヤバい方向に行ったのかと誤解を受けるかもしれないが、これもレッキとしたクトゥルー読み物の一種でエロマンガではない。

『みなせゼミの名状し難き夏休み』という、「クトゥルフ神話TRPG」のリプレイ本である。
といっても、なんのこっちゃわからんかと思われますが、実は私もこの手の分野には携わったことがない。 
「TRPG」とは、“テーブル・トークRPG”のことで、4~5人の人間同士が実際卓を囲って競うアナログなロール・プレイング・ゲームのことらしい。
「クトゥルフ神話TRPG」の最大の特徴として、ライフ値とかの代わりに“正気度”(SAN値とも)というものがあり、神話的恐怖に直面したり、宇宙的恐怖の真理を理解してしまう度に<正気度>ロールを行わなくてはならず、出た目の数によってその“正気度”が失われていくといった具合だ。
一度の喪失量の度合いによっては一時的狂気に陥ったり、<クトゥルフ神話>ポイントが加算されたりするところなんかは、実にクトゥルー的で興味深い。

で、本書はTRPGのシナリオライターである著者が、ゲームを進行していく<キーパー>(ゲーム機でいうところのCPU?)となってゲームを実際にプレイしている現場の実施模様や会話を記録し、ゲームの進め方やルール、シナリオの作り方、プレイテクニック、クトゥルフ神話用語などを解説していくという趣旨のものであった。
だから、ちくいちコロコロ・・・って、サイコロをころがさないと話が進まないので、テンポも悪いし、もちろん緊張感もクソもない。
まぁ、もともと読み手に宇宙的恐怖を体感させるのが目的のテキストじゃないから仕方ないけど。
しかし、このTRPGってのは、<キーパー>のさじ加減次第みたいなところがあって、なんかシナリオライターの自己満的なきらいがあって、読んでてこういったゲームは私の肌には合わないようだ。まぁゲーム機でもRPGもんは辛気臭くて昔からやったためしがない。


現場では実際このようなダイスを振ってプレイされているのかと思うと、心騒がされるものがある。


本書には、計3話のクトゥルフ神話TRPGのリプレイが収録されており、舞台はいずれも日本なので、日本の民俗学とクトゥルフ神話を巧く掛け合わせたちょっとしたジャパネスク・クトゥルフ・ストーリーを味わうことができる。

第一話「水底の早贄」では、ラムジー・キャンベルが創作した“グラーキ”ものを題材に、四国は高知県のダム湖を舞台にしてクトゥルフ神話を展開させており、日本ではグラーキもんは未訳なので、ちょっとはその雰囲気を窺い知ることができる。
『グラーキの黙示録』や、エジプトの神官が使用していたという「タグ・クラトゥアの逆角度」なる未知の小道具なども飛び出しなかなか雰囲気を盛り上げてくれている。
ま、でもこの話の概要からして、キャンベルの原作も単なるゾンビものなのかなと、グラーキものに対する期待感が半減してもた。



第2話「湖あふれる海」は、福岡の港町を舞台にした“ディープ・ワンズ”もので、題材としてはありふれているものだから、展開も大体予想がつく。
ただ、『太平記』に言及されているという“安曇磯良”がクトゥルフの落とし仔であるという設定にして、日本神話とクトゥルフ神話とを巧く掛け合わせているところはおもしろかった。

第3話「仮面の送り火」では、秋田県の田舎町でキザイア・メイスン(ここではケザイア・メーソンと表記)というアーカムの魔女(ラヴクラフトの『魔女の家の夢』参照)を蘇らせて暗躍させるといったマイナー路線で攻めてくるところは大変興味をそそられた。
秋田の鹿島信仰と結びついた“ういか様”と呼ばれる巨大藁人形が実はニャルラトテップの化身で、最終的にはニャルラトテップの第二形態である“血塗られた舌の神”に変貌するという展開はおもしろかったが、しょうもない小道具であっけなく倒されるのには尻つぼみ感が否めなかった。まぁでもリプレイ本にこれ以上の宇宙的恐怖を求めるのは野暮というものである。

まぁ私みたいなものぐさ人間の場合、ゲームのシナリオそのものを読むのが一番だと思うのだが、ヤフオクでもシナリオだけを出品してるのを見かけるけど、高価でなかなかな手が出せない。
この著者のHPをチラっと覗いてみたんだけど、どうやらアニオタ系の人種のようで、まぁ実はTRPGを入り口にクトゥルー神話にハマっていく人も多く、この方面の人らってやっぱ萌えアニメ好きの人種が多いのかなって。
実際近年の日本におけるクトゥルーブームはニャルラトテップをパロった萌え系アニメが要因であるようだし、ソッチ系の人ってもともと緻密な性格なのか、暗黒神話に対する造詣もハンパなく深くて、シナリオとか書かせたらすごい知識とセンスを発揮するのかもしれない。
本書の表紙も若干の色気というかエロを漂わせているが、著者によれば発行元である新紀元社側から挿絵で使うお色気サービスシーンは必ずひとつ盛り込むようにと要望されたらしい。
つまり企画側がそういう体質なんだろう。

今日の1曲:『唐変木のためのガイダンス』/ キリンジ
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物体エッキス その他の恐怖

2012年09月02日 | ルルイエ異本
先月上映された『遊星からの物体X ファースト・コンタクト』の便乗本として、時を同じくして扶桑社より刊行された『クトゥルフ神話への招待 -遊星からの物体X-』を先日入手。

まぁタイトル見てもろたら分かるように、いまだカルト的人気を誇る『遊星からの物体X』の3回目の映画化上映に乗じて、SFホラー映画ファンをクトゥルー神話の世界に引きずり込むことを目的とした布教企画本であろう。
本書には、J・W・キャンベルJr.が著した原作の新訳版のほか、クトゥルー神話関連作品の中短編が複数収録されている。

「え?『遊星からの物体X』って、クトゥルー神話だったの?」って驚かれた方もいらっしゃると思うが、実はそういうワケではなく、南極大陸が舞台の、悠久の太古に外宇宙から到来した未知の生物との遭遇という設定で、原作が発表されたタイミングからしても、この作品はH.P.ラヴクラフトの長編傑作『狂気の山脈にて』からインスパイアされた物語ではないか?と、クトゥルーシンパ側が勝手に騒いでいるだけというのが実情のようだ。
おそらく作者本人からも、そのような言質はとれてないんだろう。

“狂気の山脈”にて、ミスカトニック大学探検隊が<古のもの>と遭遇する場面。


実は私、映画自体も見たことなくて、この際だからキャンベルJr.の原作読んでみましたけど、うん、旧支配者も出てこないし、『ネクロノミコン』や『無名祭祀書』などの魔道書も参考にされない。
いわゆるパラサイトもので、血清検査とか、生物学的見地に基づいて未知のクリーチャーと対峙するという、わりと論理的で構成のシッカリした物語だった。
夢を介してクリーチャーが人間になんらかの影響を及ぼすというところは、確かにクトゥルー神話に通ずる宇宙的恐怖を感じるものがあったが。

つーかそれがしの本書購入目的は、まぁクトゥルーファンはほとんどがそうだろうけど、ラムジー・キャンベルの未訳作品5編。
なぜ今回の企画にラムジー・キャンベル作品が選ばれたのかと問うならば、単にキャンベル繋がりということだろうか?だったらロバート・キャンベルもいるし、ヴィヴィアン・キャンベルもいるじゃないかって、こいつらは作家じゃねぇか・・・
未読のブリチェスターものが読めるのは我々クトゥルーファンにとっては有難いが、『物体X』ファンからするとおそらく「なんのこっちゃい!?」って気がする。
しかも今回のキャンベル短編諸作品、ブリチェスターが舞台っつーだけで、クトゥルー要素も薄く単なる心霊譚やんって感じのものがほとんどで、正直つまらんかった(ラストの『恐怖の橋』は未読。こいつに期待)。

そして、最後になぜかH.P.ラヴクラフトの代表中篇作『クトゥルフの呼び声』の新訳版が収録されてある。
はぁ?それやったら『狂気の山脈にて』を収録するのが筋ちゃいまっか?
とは思うんだけど、『物体X』ファンの方をクトゥルー世界に取り込むにあたって、いきなりあないなくどい超形容文体で、「未知なるカダス」だの「原形質のかたまり」だの「テケリ・リ!テケリ・リ!」だのと、わけのわからんクトゥルー用語の羅列された長編を読ませられても困惑するばかりだろう。私も学生時代初めて読んだ時はティンプンカンプンやったもんなー
よって、物語としても比較的スマートでわかりやすく、クトゥルー神話の入門書としても最適な『クトゥルフの呼び声』がチョイスされたのだろう。

しかし、カヴァーイラストが『ヴィジュアル版クトゥルー神話FILE』と全く同じなことも含め、この一貫性に欠けたコジツケ感甚だしい今回のアンソロジー企画は、クトゥルーファンとしてもなんだかなー
ま、『遊星からの物体X』の原作に興味おありの方なら、是非本書をオススメしておきましょう。
同時収録の『クトゥルフの呼び声』は、SF怪奇小説としても一読の価値ありの傑作ですので。
私も今度レンタル屋で『遊星からの物体X』をかりてきて見ようかと思う。




今日の1曲:『狂気山脈』/ 人間椅子
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昆虫採取

2012年08月12日 | ルルイエ異本
お盆休みに突入し、ロンドンオリンピックも大詰めとなってまいりましたね。
やっぱなでしこジャパンサイコー!!

さて、オリンピック観戦でイギリスにご旅行中の方へ、もうひとつのオススメ穴場スポットをご紹介いたしましょう。
まぁ、予想はついてる方もいらっしゃるでしょうが。

以前紹介しましたブリチェスター近郊の町で、ゴーツウッドという小さな町があります。
この土地は大地母神シュブ=ニグラスを信仰していることでも知られておりまして、町の広場に建つ“ムーンレンズ”と呼ばれる奇妙なガラス状の物体を取り付けた金属の塔はぜひ見ておきたいところ。
運がよければ、“千匹の仔を孕む大いなる森の黒山羊”シュブ=ニグラスの召喚の儀式に立ち会えるかもしれません。

お子様との夏の思い出作りとして、ゴーツウッドの森の広場に行ってみるのもいいかもしれませんね。
夏休みの昆虫採取の課題なんかには、まさにうってつけの場であるかと。
森へ入ると、まずノッペラボーの卵みたいな円筒形生物が寄ってくるらしいのですが、そいつらをうまいことふりきって奥に進むと広い空き地に出ます。
この空き地はかつて魔女どもの黒ミサの集会所になっていたらしく、その魔女たちはかの悪名高いマシュー・ホプキンスに捕らえられ、全員処刑されたのだそうです。

マシュー・ホプキンスに関してはCathedralの曲“Hopkins(The Witchfinder General)”を参照。


その空き地の中央に、光を反射しない不思議な灰色の金属でできた円錐塔が聳え建っているのだそうです。
この灰色の円錐塔こそ、我々の望遠鏡の可視範囲のはるか彼方、宇宙の外縁近くにある二重太陽の惑星シャッガイからやってきた昆虫種族の神殿なのであります。
まぁこの神殿はいわば昆虫族の博物館といった様相を呈しており、地面から出ている部分は入り口にすぎず、実はその下に埋まっている下層部にワクワク胸躍るような博覧施設が広がっているのだそうです。



シャッガイの昆虫族は好奇心旺盛な種族で、新しい奇怪なものを求めて他の惑星へ出かけて行く習性があり、その惑星で隷属させた種族を拷問にかけて楽しむという、とてもサディスティックな種族なんですね。
ゴーツウッドの森をうろついている「昼の衛兵」と呼ばれるノッペラボーの円筒形生物も、かつて昆虫族に植民地化された惑星ザイクロトルから連れて来られた種族で、空き地の警護役として使役させられているわけなんです。
あと、シャッガイの昆虫族が入植した惑星に、太陽系のルギハクス(天王星)なんかがあります。
ここにはたくさんの脚を持つ金属の立方体種族が生息しているといい、彼らは比較的下等な神格ルログを崇拝しているのだそうです。
彼らと昆虫族の間では、けっこう宗教上の争いが絶えなかったそうです。



これらの生物がどんなものかをご覧になりたければ、円錐塔の地下にある「思い出の部屋」に行ってみるとよいでしょう。ここでは、昆虫族に隷属させられた種族たちから一体ずつ標本として持ってきた目のない死体標本が展示されてあるのだそうです。
ま、手っ取り早く視覚的に昆虫族の植民地活動の歴史を知りたければ、人間の脳に昆虫族の記憶を注入するという、彼らのサイケデリックな術によってトリップするのもひとつの方法です。
ただ、この術は麻薬中毒者が薬物による幻覚症状の中に快楽を求める感覚に似た作用が起こるので、健康上、お子様の教育上あまりオススメはできません。

「思い出の部屋」の先には身の丈6メートルにもおよぶ「邪神アザトートの巨像」が展示されていて、これは外宇宙に追放される前のアザトートの似姿を模ったものなのだそうです。
この施設に訪れたことのあるイギリスの作家ロナルド・シアさんの話によれば、その姿とは・・・・

「基本的には、何対ものしなやかな脚に支えられた二枚貝で、半ば口を開いた貝殻から、先端にポリプ状の付属物がついた節のある円筒形のものが数本延びちょった。
貝殻の内側の闇のなかに深く窪んだ目を持ち、ヌメヌメと光る黒髪に覆われた、身の毛もよだつほど残忍な口のない顔が見えたような気がしたっけ」とのこと。



そしてこの円錐形の神殿の最下層には、昆虫族が“外から来る者”として崇拝しているアザトートを召喚するための『多次元の門』が広がっているという。


ま、この昆虫族は鳩ぐらいの大きさとのことなので、虫獲り網で十分捕獲可能かと思われますが、精神波とかとばしてくるやつらなので、逆に捕らえられて拷問にかけられた末、人間採取の標本にされるようなことにならないようにね!


今日の1曲:『Hopkins(The Witchfinder General)』/ Cathedral
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スグルーオ・サウンド

2012年07月29日 | ルルイエ異本
「智慧をその源泉に求めて門の彼方に入りこみ、その地に棲むものにたずねなければならぬ場合、入念に準備を調えなければならない。ヨグ=ソトースが守る門の彼方の他の宇宙について、我らはほとんど何も知らぬからである。
門を通過してこの世界に住みつくにいたったものどもについて、誰も知るものはいないが、イブン・スカカバオが述べるには、スグルーオの湾からひそかに入りこむものは、音によってその存在がわかるかもしれない。

その深淵では、世界そのものが音であり、物質は臭いとしてのみ知られ、この世界で我らの気管が発する音は、スグルーオにて美をつくりだすこともあれば、忌むべきものをつくりだすこともある。
障壁が薄くなって、どことも知れぬところから音が聞こえれば、スグルーオに棲むものに注意せよ。彼らはこの地球のものに害をおよぼせないので、ある種の音が彼らの宇宙でつくりだすもののみを恐れよ。」

アブドゥル・アルハザード著 『ネクロノミコン』より


もしあなたがブリチェスターの丘陵地帯を訪れたのなら、そこの平屋内に設置されているといわれる“異次元通信機”をぜひとも体験しておきたいところ。
ドラえもんの四次元ポケットから出てきそうな名称のこの異次元通信機は、前ブリチェスター大学教授のアーノルド・ハード氏が作製したものらしく、この装置に関しては、彼が所持(あるいは大学で閲覧)していた『グラーキの黙示録』の第9巻、2057―9ページにその設計図が載ってあるとのこと。

かれはこの丘陵地帯で奇妙な怪音現象に遭遇し、そこに平屋を建ててこの怪音現象を調査しだしたその夜から、次元の彼方に棲まう奇妙なスグルーオ人の夢を見だしたのだという。
スグルーオ人は他の次元から夢を介して意思疎通をはかる種族であり、地球においてはやはり夢の中での交信を持続させるのは困難らしく、スグルーオ人の指南するところによれば、アルハザードの禁断の魔道書『ネクロノミコン』の中に夢の中でスグルーオ人と接触を保つ方法が書かれてあるのだとか。
その方法とは“マオ典礼”と呼ばれるものである。

「スグルーオに棲むものが門を通過するのを助けるつもりなら、魔術師が“マオの儀式”として知る呪文を、ヌグ=ソスの文字とイルアーンの黒き印によって使用するのが最善である。」(『ネクロノミコン』より)



ただ、この典礼はかなりの危険性を伴なうもので、時間と空間の戸口のすぐ外で待つ、人間の作業や夢のすべてに破滅をもたらすものどもを呼び寄せるおそれがあり、接触地域の内側で音を立てると、スグルーオ人の棲む次元に引き込まれる危険性がある。

そこで、夢の中でと同じく音を目に見える形に変換してスクリーンに映し出す装置というのが、“異次元通信機”というわけだ。
ただ、この装置を使用すれば100%安全が保障されているというわけではない。

ハード教授の手記にこうある。

「スグルーオ人の意図は測り知れない。かれらは意図を隠蔽するのが巧みであり、変換装置を介して何を送りこんでくるか、予測はまったくつかない。
したがって変換装置を使用する場合、“弦を張った反響装置”を身近に備えることが賢明である。スグルーオ人に損傷を与え得る地上の武器はこれしかなく、かれらが敵対行動にでたら、即刻この弦楽器装置を使用すべし。」

万が一この装置を使用する時のために、エイトフィンガー奏法を習得しておいた方がいいかもしれない。
(エイトフィンガー奏法については、ジェフ・ワトソンのギター教則ビデオを参照のこと)


なお、ハード教授は、セヴァンフォードの楽器店でギターの弦を買い求めているところを目撃された後、消息がわからなくなっている。


弦楽器を使用したトリッキーな装置は、日本でも作製されている。



パット・メセニー氏のこの驚異的な音響装置は、スグルーオ人に対して強力な武器になりうるかもしれない。


今日の1曲:『Sentimental Street』/ Night Ranger
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マジカル・ミステリー・ツアー

2012年07月26日 | ルルイエ異本
いよいよ今週末からロンドンオリンピック開催ですか。
いや~今から楽しみですよね?
つーか昨夜すでになでしこジャパンが試合やって勝ったんすよね。
まずは勝ち点3おめっとう!

それはそうと、ロンドンオリンピックのマスコットがなかなかナイスですね!
キュクロプスを想わす大きな一つ目といい、鋭い鉤爪といい・・・いや、これはもう完全にグレート・オールド・ワンのなんらかの類ってとこですわな。
このキャラクターをデザインした人は、おそらく後でご紹介します『グラーキの黙示録』の図解を参考にしたんではないかと思うんですよね。

で、これからロンドンにオリンピックを観戦されに行く方もいらっしゃると思いますんで、今回はわたしが是非足を運んでいただきたいと思うイギリスの隠れ観光スポットなんぞを紹介しようかと。


~のどかな田園風景と不穏なアイホート信仰の残る田舎町ブリチェスター~
イギリス南東部、のどかな田園風景の広がっているグロウスターシャー州セヴァン渓谷の程近くにあるブリチェスターは、この地域で有数の近代的な町であり、同時にまたオックスフォード、ケンブリッジに次ぐ英国有数の学術機関であるブリチェスター大学のホームタウンであります。
まずはこのブリチェスター大学の図書室で、この地域にまつわる不穏な伝説について記述されている『グラーキの黙示録』などの案内書をかりていくのがよいかと思われます(かしてもらえなきゃ羊皮紙にメモメモ)。



郊外にある「魔女のすみか」から入り込むことができるセヴァン渓谷の地下迷路には、ブリチェスターとその近くにあるカムサイドという町において、狂った人間達から崇拝されている“アイホート”という名の旧支配者がパッカパッカとうろついているといいます。
腐ったパン生地のような青白い楕円形の胴体と、楕円形のゼリー状の眼、先端に蹄のついた幾つもの脚を持つこの旧支配者については余り多くのことが知られてませんが、このクリーチャーは“アイホートの雛”と呼ばれている落とし仔を引き連れてるのだそうです。
この“アイホートの雛”というのが、おそらく今回のオリンピックキャラクターのロックウェルでありマンデヴィルなんじゃないかなぁ~なんて推測ちゃうのはイケないことですか?

ウマ科?ひょっとしたら今年のオリンピックのマスコットモデルになっていたかもしれない。


またブリチェスター北部のセヴァン湖、遥か昔に落下した隕石の衝突によって出来上がった通称“幽霊湖”の底には、巨大なウニのように無数の尖った棘を生やした楕円形の体をもつ旧支配者グラーキが棲みついているといいます。
グラーキは幽霊湖から夢を送り込むことによって犠牲者を自分の元におびき寄せ、その体に生えている金属のような棘で刺し殺し、ブードゥー教のゾンビのような従者を作り出すという。
グラーキについては、19世紀の始めにグラーキを崇拝する教団によってまとめられた『グラーキの黙示録』に詳しいので要チェック。

ウニ科?獲ってごはんにまぶして食ったら美味そうだが、刺されると死ぬ。


なお、ブリチェスター郊外にある「悪魔のきざはし」という岩山には<ユゴスよりのもの>(甲殻蜥蜴みたいな種族)の前哨基地があり、頂上にはユゴス(冥王星)へと繋がっている石塔が存在しているといわれております。
この秘密の異次元通路を通って、ユゴスの漆黒の採掘都市を見学しにいくのもオツかもしれません。
なんでも、今年のロンドンオリンピックのメダルは、この星でしか採取できないといわれる<クトゥ=ル>なる鉱物資源で造られてるとかいないとか。
この秘密の通路の場所については、やはりブリチェスター大学出身のエドワード・テイラーさんが一番詳しいかと。
テイラーさんは、『グラーキの黙示録』も所持していらっしゃって、『ネクロノミコン』の内容にも詳しいそうです。<ユゴスよりのもの>をおびき出すための“ヴーラの秘儀”なんかにも通じているらしいとのこと。
ただ、彼は現在廃人同様の身となっており、カムサイド精神療養所に収容されて面会は難しいかもわかりません。

『グラーキ黙示録』

あと、ブリチェスターの四角い平地の平屋にある異次元通信機を使って、はるか彼方の次元に棲むスグルーオ人との接触を試みてみるのもおもしろいかもしれません。


今日の1曲:『Your Mother Should Know』/ The Beatles
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