AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

アキたかも

2018年03月17日 | しねしねシネマ
昨年12月、京都MetroにてSalyuのライブを見に行った時、隣にいた若者2人が岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』のことについて話しているのが聞こえてきたので、耳をダンボにして盗み聞きしていると、先日京都みなみ会館で岩井俊二ナイト(オールナイトでその監督作品ばかりを上映するやつ)を観たことを話しており、その会話の中で信じられない情報が私の耳に飛び込んできた。

「京都みなみ会館、来年の3月で閉館するってよ」

ああ、またしても古き良き時代の昭和の遺物がなくなってしまう・・・・




まぁ追悼記事はまた後日書くとして、今年に入ってから京都みなみ会館は様々なさよなら企画を催しており、今週はフィンランド映画の巨匠アキ・カウリスマキ監督強化週刊として、最新作(といっても昨年すでに上映されたやつ)『希望のかなた』が上映されていたので、男客1100円のマンデーに仮病を使って観にいってきた。てか、これは別にさよなら企画ではなかったのかな?
もちろんこの映画館ならではのこだわりで、シネコンのようなデジタルではなく、35mmフィルム上映ってのがオツだね。 
午前中に同監督作『ル・アーブルの靴磨き』も同時上映していたが、見てない作品だったらよかったのだが、こいつは3年ほど前に近所のシネコンで見たので。




まぁ今回の『希望のかなた』も、チラシを見て『ル・アーブル~』と同様、難民救済映画らしいっていうのは観る前からわかっていた。
アキ監督はどうやら“難民三部作”として、もう一本撮るつもりだそうだ。
本作はシリアの内戦からフィンランドに亡命してきたアラブ系難民がテーマに取り上げられている。

まず、『過去のない男』であの強欲警備員(名犬ハンニバルの飼い主)の役をやっていた役者さんが主役をはっていたのでテンションあがった。
あの仏頂面はまさにアキ作品にはピッタリ。
他にも、、『街のあかり』で見かけた女優さんや、マルコ・ハーヴィストとポウカハウタなどのカメオ出演にアキ映画好きはハッとさせられたかと。

映像のコントラスト、坦々とした話の運び、親切な街の人々、役者の感情のなさ、犬、バンド演奏と、良くも悪くもいつものアキテイストがフンダンに盛り込まれた内容。
まぁ個人的には新鮮味も意外性も感じられなかったというのが正直な感想。
だって展開が読めちゃいますものね。
『ル・アーブル~』の記事の時にも言ったけど、自分の中で最初に見て衝撃を受けた『過去のない男』が評価基準となってしまっているので、どうしてもハードルが上がってしまいモノ足りなく感じてしまう。
それに今回のは『ル・アーブル~』の二番煎じ感が否めなかった。かつ『ル・アーブル~』ほどスマートでもない。


オシャレな表紙のパンフは買わずにはいられませんわな。



中身も充実。



レストランのオーナーとデコボコ従業員たちが店の再起を図って始めた見よう見まねのすし屋のシーンは確かに笑えた。
これは、日本好き(というより小津安二郎好き)のアキ監督の趣味が色濃く出た場面かと思われるが、ただ、「ここで笑ってくれよ日本のみなさん」ていう、タランティーノの『キル・ビル』にも通じるあざとさを勘ぐってしまったのは、私が日本人であるが故のことだろうか?


そもそも、フィンランドに観光に来た日本人団体客が、わざわざ外国のインチキくさいすし屋に押し掛けるかっつーの!
いやいや、それもアキ一流のユーモアですよと言われたらそれまでだが。


今回やたらバンド演奏(あるいは弾き語り)のシーンが盛り込まれていたが、バンドマン自身はあまり物語には関わってなく、ただ監督が好きな音楽を挿入したかっただけとしか思えなくて、まぁそれもひっくるめてアキテイストなのかもしれないが、少々押しつけがましく感じられた。



登場シーンこそよかったものの、犬の役割もこの物語ではあまりにも希薄すぎた。



ヨーロッパでの深刻な難民の境遇を描くという問題提起を目的としたアキ監督の意図してることや意気込みはわかるんだが、ただただ困ってる奴と許せない乱暴者、そして親切なフィンランド人が露骨に描かれているだけというか、せっかくいい味の役者さんや素材がそろってるのに、なんか活かしきれてないというか。

う~ん、期待してただけに残念な内容だった(個人の感想です)。


オススメ度:★★★





今日の1曲:『SKULAA TAI DELAA』/ Dumari ja Spuget
コメント
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