望子のただいま稽古チュッ!

稽古、公演、プライベート
・・・オバサン役者、木村望子の日々。

舞台の裏のウラ話<アンサンブルにもいろいろあって・その5>

2020-05-02 12:44:15 | 舞台・ウラ話

1日空いちゃいましたが、
まだ続けます~。

タチの悪い団体に知らずに参加して、
初顔合わせに出たときの話でした。


大量のアンサンブルに、アンダーキャストの発表?
ここは、どんな所なんだ??

と混乱しているうちに、
いよいよもって、驚きの発表が・・・。



たとえば、私の役が「メアリー」だったとすると、

「メアリー役のアンダーキャストは、
 Aさん、Bさん、Cさん、Dさん。
 この方たちは、メアリーの台詞を、
 覚えておいてください」

と、こんな感じで、どのメインキャストにも、
アンダー、つまり代役の人の名前が、
ずらりと読み上げられたのです。


いやいやいや、
普通、アンダーなんて、いても1人。
大劇場のロングラン公演だって、
そんな沢山作らないって!

と、ドン引きしている私をよそに、

名前が呼ばれた人たちは、
嬉々として、メモったり、
メアリーの台詞にマルをつけたり。

「私、メアリーだって!」
とお隣とおしゃべりしたり・・・。


    そうか!


その姿を見て、やっとわかりました。

要するに、メアリーならメアリーの台詞を、
覚えようとすることで、
自分がその役になったような、
錯覚をおこすんですね。

そして台詞を覚える、
という作業をすることで、
満足感が持てる。

自分の役には台詞がないので、
「ユメ」を見られるんです。
まず叶うことのない「ユメ」を。


いやぁ・・・、

これを考えた人の見事な悪知恵に、
ある意味、感心してしまいました。


しかし、面と向かって、
「私、望子さんのアンダーなので、
 今、台詞覚えてます!」

なんて言われるのは、
あまり気分のいいもんじゃありません。

だって、アンダーというものは、
本役(この場合、私)が、
大事故か重病にでもならない限り、
必要ないんですから。
もしかして、階段から突き落とされるんじゃ
なんてビビりましたが、

ご本人は、なーんにもわかってなくて、
いたって無邪気に言っただけ。

つまり、この「幻のアンダーキャスト」は、
何も知らないアンサンブルの新人さんたちには、
効果絶大だったんです。


そして、そんな錯覚のまま、
新人さんたちは、
次なる仕事へと駆り出されていきます。


(写真はイメージです)


    (つづく)





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