昨日は教育テレビでETV特集「沖縄学のまなざし」を見る。伊波普猷と仲宗根政善のおもろそうし研究を中心に沖縄学の過去と現在を取材した面白い番組だった。
私も若い頃おもろそうしに興味を持って高円寺の球陽書房という沖縄民俗関係の本を扱う本屋さんに足繁く通い、竹富島の種子取祭を取材しに行ったりして私なりに沖縄に燃えた時期があった。
私の沖縄への興味は高嶺剛監督の映画「ウンタンマギルー」を見て喚起された。その特異な文化への興味が私の眼を沖縄へ向けさせ、沖縄へ歩み寄らせた。
映画「ウンタマギルー」は沖縄人によって戯画化されたシュールな沖縄であり、実像とは程遠い。けれども、そこで扱われている民俗や文化、音楽の豊かさは一目瞭然であり、若い私を沖縄に近づけるのに十分な説得力があった。
特に私の眼を釘づけにしたのが照屋林助氏の歌と話芸である。バーバーてるりんと称して奥深い歌と笑いを披露する照屋林助氏を生んだ沖縄の豊かさに眼が眩んだ。義賊、運玉義留の民話も沖縄の産物であり、妖精キジムナーも沖縄の伝承の産物であり、話は荒唐無稽だが、素材は飽くまでリアルだった。
私は沖縄へ飛び、御嶽の森を眼にし、神司の神秘を眼にし、弥勒信仰に心を奪われた。
特に大好きな照屋林助氏の私邸がコザにあり、ライブスタジオとして公開されていて、照屋林助氏が実際に歌と話芸を披露するのに接することができたことが私の宝となった。
照屋林助氏は自曲の元歌となった沖縄各地の民謡の民俗的な背景を冗談交じりに語り、私はその沖縄民俗への造詣の深さに感服して帰った。
その頃はおもろ辞典を買おうにも買えず、おもろそうしの外間守善氏の文庫の校注版も出版されておらず、おもろそうしに近づくのは容易ではなかった。ETV特集「沖縄学のまなざし」では外間守善氏の名前が一回も出て来なかったのは不可思議なことだと思う。
ラジオでビギンの人が、おおたか静流が「花」を流行させ、りんけんバンドやネーネーズが本土で認知され、連続ドラマ「ちゅらさん」で沖縄人気が定着した流れを驚きを持って見ていたと語っていた。沖縄人である居心地の悪さが一転して、沖縄人で羨ましいとさえ言われるようになり隔世の感があると言う。
おもろそうしを歌う歌唱法が伝授されているのには驚いた。沖縄を彷徨った日々を思い出す。