超人日記・俳句

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

<span itemprop="headline">音楽という抜け口</span>

2011-05-19 22:42:03 | 無題

アブラヴァネルのミュージカル・コンセプツ社のマーラー全集は、交響曲第五番と印字してあるCDに第五番が入っておらず、私の購入店ではいったん廃盤で、6月になってから購入者に再プレスされた代替CDを送付するという。厄介な話だ。
アブラヴァネルのマーラー全集なぞ、マーラー・イヤーのどさくさでないと当分発売されないだろうから、マーラー好きとしては飛びついた。だが、いくらマーラー好きでもティルソン・トーマスの2万だか3万のSACDは高すぎて広告を読む気にもならない。
アブラヴァネルの全集はオケが弱く、ゆるい。このようなマーラー全集だけだと困るが、このようなマーラー全集もあっても良い、と誰かが書いていたが言い得て妙だ。アメリカの田舎オケの古き良き時代の楽天的な明るさがある。いくら気張っても力が抜ける。この脱力感がアブラヴァネルの持ち味だと言えよう。
復活と千人の交響曲がそれぞれ一枚にまとまっているのも聞きやすい。さすがに三番と九番は二枚に分かれているが、三番の後半と四番が一枚に収められ、九番の後半と十番のアダージョが一枚に収まっているので、九曲プラスアダージョでたった10枚というコンパクトな全集になっている。オケの弱いこの演奏が妙に暑苦しくない昨今の空気とシンクロナイズしている。非常に淡白な気安いマーラー全集に仕上がっている。
これが全てが嫌になった人、重荷を背負った人の休息の木陰を提供していると言っても過言ではない。私なら疲れている時はバーンスタインは嫌だ。仕事も家事も何もかも放り出して、山荘かどこかでビールを一杯飲みながら、大音量で聞くならアブラヴァネルだ。一日の色々もろもろの苦悩を忘れて、窓辺で庭を見ながらほっと一息つくならアブラヴァネルだ。
そんなわけで技量の弱い、初期全集の先駆けである当全集はすべての疲れた人、重荷を背負った人の安息のアイテムとして語り継がれるのにふさわしい。私は救いは音楽に有ると思っているので、こういう難のある全集でもいつくしんで聞いてしまう。第五番が再プレスされるのを待ちながら、残りの9枚を鼻歌交じりに聞いている。
アブラヴァネルを聞き、ふと思う。結局は逃げ場が欲しいのだ。
ラテン語で逃げ場という語調べ上げ何度も唱え音楽を聴く



コメント
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