超人日記・俳句

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

<span itemprop="headline">メタモルフォーゼン礼賛</span>

2011-08-18 02:32:54 | 無題

最近私が気に入っているのはリヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」という曲である。ドイツが陥落寸前の時に暗澹たる気分で書かれた去りゆく時代の挽歌であり、単純なフレーズが絶妙に変化し、時に無調に近く聞こえる。
私が初めてこの曲を聞いたのはラジオでアシュケナージ指揮のチェコフィルの演奏だった。余りの耽美的な無調ぶりに驚いてこのCDを買いに行ったのを覚えている。
けれどルドルフ・ケンペのリヒャルト・シュトラウス集で聞けるメタモルフォーゼンは音階も明確で無調という感じがしない。
アシュケナージのメタモルフォーゼンの解説には確かにこの曲は無調に限りなく近づいている(「調性感がきわめて薄くなっている」よしむらけい)と書いてあった。
ヒトラーは無調を頽廃音楽だと言っていたので、ドイツが陥落寸前だからこそ書けた曲かもしれない。フルトヴェングラーの録音も幸い残っている。ユーチューブで一曲丸ごと聞ける。
暮れ行く時代の憂愁の挽歌であり、ある階層の没落の憂鬱を表すこの曲が、憂鬱な時の私の慰めになっている。私が良く聞くのはカラヤン指揮のメタモルフォーゼンで、聞きどころを要所要所押さえた定番となっている。
実は余りに娯楽寄りのリヒャルト・シュトラウス全部が好きなわけではなく、自伝的な英雄の生涯とこのメタモルフォーゼンが取り分け気に入っている。
バスで近郊の町まで移動するとき、最近メディアケグに同期したこのメタモルフォーゼンを聞きながら、車窓を眺め、自分の憂鬱に一時浸ってみる。
ローマン・コフマンのショスタコーヴィチ全集の憂鬱もいいが、リヒャルト・シュトラウスの黄昏の悲愴ぶりには特別な何かがある。
好きな作曲家ではマーラーとブルックナーをまず挙げるが、耽美的な憂鬱に浸れる曲を一曲選ぶとすれば、このメタモルフォーゼンである。避暑地に持って行って川の流れを見詰めながら聞きたい一曲である。

音を立て崩れる時に様々に変容をする自己を見つめる



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする