高速道路のパーキングで、『パパ!』と声をかけられたような気がして振り向きました。幼い女の子と母親が笑顔で、すれちがった若いパパに呼びかけていたのです。パパがそばに行くと、娘と母の笑顔は、こぼれんばかりです。娘をさっと抱き上げた時のパパの笑顔も最高でした。親子三人の温かい心の絆を感じる一コマでした。
昔のことになりますが、自分が若いパパだった頃を思い出しました。初めて『パパ!』と呼ばれた時の感激。我が子の首がすわるようになった時、ハイハイができた時、つかまり立ちができた時、言葉が言えるようになった時、本を読めるようになった時、それぞれ成長の節目で感じた感動。妻とともにその成長の喜びを共有できたことを、うれしく そして なつかしく思い出しました。
仙台市の本屋で、『お母さん、だあい好き!』という子どもの声が聞こえ、声のする方を見ました。お母さんを下から笑顔で見上げる子どもと その子を優しい笑顔で見つめる母親の姿がありました。つなぎ合うその手に、母子のこれまでの温かくて深いつながりを感じました。
先日の天声人語で、歌人:河野裕子さんの作品が紹介されていました。その一つに次の短歌がありました。
『朝に見て 昼には呼びて 夜は触れ 確かめをらねば 子は消ゆるもの』
わが子への切々とした思いが伝わってきます。母親だからこそ抱くことできる、かけがえのないわが子を慈しむ熱い思い(愛)なのだと思います。二児を育児放棄という形で死に至らしめた母親に、事が起きる前に読んでもらいたかった歌でもあります。
愛されたことを覚えている人は、愛を与えることもできる人だと思います。小さい頃から親の愛の中で育った子どもは、やがて自らが親になった時に同じように愛を与える親になっていくのではないでしょうか。命のリレーと同様に、愛もリレーのように人から人に引き継がれていくものなのかもしれませんね。