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あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

パブロ・カザルスの言葉

2010-08-05 21:53:09 | インポート

ちくま文庫から出ているジュリアン・ロイド・ウェッバー編・池田香代子訳『パブロ・カザルス 鳥の歌』を読みました。この本は、カザルスの言葉を中心としながら、カザルスに関わる他の人々の言葉も併せて収録した内容となっています。

カザルスという高名な音楽家を理解し、その思いや考え、人間性を知るうえでとても参考となると共に、他の人がカザルスの演奏を聴いてどう思い、カザルスの思いや考えを聞いてどう感じたかも書いてあるので、多面的にカザルスという人を知ることができる本です。

次に、本の中で印象に残ったカザルスの言葉をいくつか紹介します。

・ 私の演奏歴のなかで、演奏前に緊張したりあがったりしなかったことは一度もなかった。これまで、何千回とコンサートをしてきたが、そのたびに初舞台のときとおなじくらいあがる。君、気がついていた? 

・ わたしの一番古いもっとも気心の知れた友人はチェロだ。

・ もしも世のすべての母親が息子に、「あなたは殺したり殺されたりするために生まれてきたんじゃないのよ。だから戦わないで」  と言いきかせれば、戦争は起こらないだろう。

・ 私はまず第一に人間です。第二に芸術家です。人間として、私の第一の義務は私の同胞たちの幸せをはかることです。私は、神が私に与えてくださった手段である音楽をつうじてこの義務を果たそうと努力しようと思います。なぜなら音楽はことばや政治体制や国境を越えるものだからです。世界平和への私の貢献など、ささやかなものかもしれません。しかしすくなくとも、私が神聖と考える理想のために、私にできることはすべてしたと思いたいのです。

・ 教育ほど大切な職業は考えられない。よい教師、本物の教師は生徒の第二の父親のようなものだ。

 <96歳の時のカザルスの言葉> ・ 私が、若くないというのは事実だ。たとえば、私は私が90歳だったころよりは若くない。歳というのは相対的なものだ。もしも私たちが活動を続け、私たちのまわりの世界の美を自分に取り込むなら、歳を重ねるということは老いぼれるということを必ずしも意味するものではないと気づくだろう。いま私は90代だが、ある種のことは若い頃よりも強烈にかんじる。そして人生は日々ますます魅力を増す。

 カザルスという人が優れた音楽家である同時に魅力的ですばらしい人間であるということが、紹介した言葉からも読み取れることと思います。アルベルト・シュバイツァーとカザルスが愛国者としての芸術家の役割について話し合った時、シュバイツァーは、「創造活動は抵抗運動にまさりますよ。」と言います。それに対してカザルスは「創造し抵抗する。両方すればいいではありませんか。」と問いかえしたそうです。スペインを独裁者として支配したフランコ将軍に対する抵抗を続け、戦争のない平和な世界を求め続けた、カザルスの強い意志を感じる言葉だったのではないかと思います。

 明日は、8月6日で広島に原爆が投下された日でもあります。改めて、核のない平和な世界が近い未来に実現することを、カザルスの意志と共に心から祈ります。

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