世界の競馬の潮流が、よりスピード重視になって久しい。
あの欧州ですら、種牡馬ガリレオが亡くなったあと、今や生産界はフランケルの独壇場になりつつあります。ご案内のとおり、フランケルは欧州のマイルの絶対王者であり、ラストは英チャンピオンズCも制して芝2000mまで無敗の王者として君臨した名馬。しかし、英2000ギニー以外の3歳クラシックはもちろん、キングジョージ&クイーンエリザベスSや凱旋門賞などの伝統的なチャンピオンレースとは無縁でありました。
この傾向は国内にもすでに及んでおり、その年の日本一決定戦がジャパンカップでもなく、ましてや暮れの有馬記念でもなく、10月末の天皇賞秋であることの方が違和感のない年が多くなっております。
昨年2021年のエフフォーリア、コントレイル、グランアレグリアの三強対決は記憶に新しいところですが、2020年のアーモンドアイ、フィエールマン、クロノジェネシスの天皇賞秋、さらに2019年のアーモンドアイ、ダノンプレミアム、アエロリットの天皇賞秋は、1分56秒2のレコード決着を見ても判るとおり、JRA近代歴史の中でも究極レベルのレース内容でありました。あのサートゥルナーリアですら、あの時のスピードの持続力勝負には、途中で付いていけなかったほどの究極レベルの闘いでありました。
さて、今年も凄いメンバーが揃っております。恐らく、ジャパンカップでも、暮れの有馬記念でも、これだけのメンバーが揃うことはないと思います。凱旋門賞へ遠征したタイトルホルダーやドウデュースには申し訳ありませんが、終わってみれば、今年の最強馬決定戦は、この天皇賞秋だったと言われることになるのでは? と私は考えております。
まず古馬陣からは、昨年の日本ダービー馬で、春のドバイシーマクラシックを快勝した⑧シャフリヤール。同じく春のドバイターフを快速で逃げ切った③パンサラッサ。そのパンサラッサを札幌記念で競り落として勝ち切った⑨ジャックドール。府中2000mのスペシャリストで春の大阪杯GⅠを制した④ポタジェ。府中におけるスピードの持続力では国内トップ級の地力を誇るオークス馬⑭ユーバーレーベン。活躍の場をマイルから中距離に伸ばしてきた②カラテ。
そして充実の3歳陣からは、皐月賞・ダービーともに惜しい2着であり、初GⅠ制覇を天皇賞秋で飾りたい⑦イクイノックス。今年の皐月賞馬で芝2000mがベストの⑥ジオグリフ。皐月賞・ダービーともに4着ですが、潜在能力は3歳トップ級と評価されている⑤ダノンベルーガ。
恐らく、人気は、ルメール騎手が騎乗する3歳牡馬⑦イクイノックスが1番人気、快速馬⑨ジャックドールが2番人気、そしてCデムーロ騎手が騎乗する⑧シャフリヤールが3番人気になると思います。ただ、このレースには、⑨ジャックドールと③パンサラッサという2頭の快速馬が揃いましたので、夏の札幌記念同様に、究極のスピードの持続力勝負になることが想定されます。
今年の札幌記念では、1番人気のソダシが全く勝負に参加できなかったように、高いレベルでのスピードの持続力勝負に耐えられる馬でないと上位には食い込めないと思います。単に瞬発力が凄いとか、絶対的なスピードがある、だけではダメで、1ハロン11秒台の消耗戦を2000mまで耐えられる特殊なスピード持久力を求められるということ。
これは、2019年の天皇賞秋と同じようなレースと言う方が判りやすいと思います。あの時は、快速馬アエロリットがレースを引っ張り、その直後にダノンプレミアムが控えて、全く淀みのないスピードレースになりました。当然のごとく、後ろから追いかける馬たちの多くは脚を使ってしまい、前には取り付けない。唯一、アーモンドアイだけが前に取り付いて、この2頭を差し切って勝利しました。あの時のアーモンドアイの勝ち時計は1分56秒2。究極のスピード持久戦のレースでありました。
今回も、③パンサラッサと⑨ジャックドールが、アエロリットとダノンプレミアムと同じ役割を果たすと思います。アーモンドアイに替わる馬がいれば、その馬が勝利。いなければ、⑨ジャックドールが押し切ると思います。
さて、今年の⑦イクイノックス、あるいは⑧シャフリヤールが、2019年の時のアーモンドアイになれるのでしょうか?
それとも、サイレンススズカの再来と呼ばれる⑨ジャックドールが、スズカの魂と共に、府中2000mを駆け抜けるのでしょうか?
天皇賞秋のレースの舞台は東京競馬場。10月30日(日)午後3時40分スタートとなります!