昨日の続きであります。
昨日は、種牡馬エピファネイアの産駒が、けして早熟とは言い切れないという点を、同じ世代の2歳時のAEI(アーニング・インデックス)と、3歳以上の時を含んだAEIを比較することで明らかにしました。
本日は、エピファネイアの最初の4世代と、過去の名種牡馬ディープインパクトおよびキングカメハメハの最初の4世代の比較をしてみることにします。ただし、エピファネイアの4世代は現役バリバリで、まだ走り終えていません。すでに走り終えているディープ産駒とキンカメ産駒の最初の4世代の数字は単純比較はできませんので、そのあたりは慎重に比較する必要があります。後ほど触れます。
まず、種牡馬エピファネイアの世代別AEI(2022年11月27日現在)を再掲します。
2017年生まれ 勝利数101 AEI 1.44 獲得賞金25億48百万円 重賞勝馬数3
2018年生まれ 勝利数 88 AEI 1.60 獲得賞金22億03百万円 重賞勝馬数1
2019年生まれ 勝利数 66 AEI 1.28 獲得賞金10億72百万円 重賞勝馬数1
2020年生まれ 勝利数 30 AEI 1.64 獲得賞金 3億45百万円 重賞勝馬数0
【参考】以下は産駒が2歳時のみの成績
2017年生まれ 勝利数 31 AEI 1.30 獲得賞金 3億34百万円 重賞勝馬数0
2018年生まれ 勝利数 23 AEI 1.30 獲得賞金 3億26百万円 重賞勝馬数0
2019年生まれ 勝利数 25 AEI 1.59 獲得賞金 3億96百万円 重賞勝馬数1
2020年生まれ 勝利数 30 AEI 1.64 獲得賞金 3億45百万円 重賞勝馬数0
次に、種牡馬ディープインパクトの当初4世代の世代別AEIをお見せします。
2008年生まれ 勝利数241 AEI 3.35 獲得賞金65億34百万円 重賞勝馬数13
2009年生まれ 勝利数276 AEI 3.72 獲得賞金83億33百万円 重賞勝馬数19
2010年生まれ 勝利数207 AEI 3.76 獲得賞金61億61百万円 重賞勝馬数11
2011年生まれ 勝利数224 AEI 3.18 獲得賞金63億70百万円 重賞勝馬数11
【参考】以下は産駒が2歳時のみの成績
2008年生まれ 勝利数 41 AEI 2.72 獲得賞金 5億37百万円 重賞勝馬数1
2009年生まれ 勝利数 35 AEI 2.32 獲得賞金 4億86百万円 重賞勝馬数3
2010年生まれ 勝利数 39 AEI 2.02 獲得賞金 4億27百万円 重賞勝馬数0
2011年生まれ 勝利数 38 AEI 2.12 獲得賞金 4億62百万円 重賞勝馬数1
まず両者を比較して言えるのが、①AEIの絶対水準が違い過ぎる、ということ。ディープインパクト産駒は4世代ともにAEI 3.0以上という別次元であることが判ります。また2歳時のAEIも全て2.0を超えており、こちらも別次元。また、平均して産駒が走っているデータとして、重賞を勝った馬の数を示しています。②重賞勝馬数も安定して多く存在する、という点も大きな相違点です。
ちなみに、エピファネイア産駒は、初年度産駒からは、デアリングタクト・アリストテレス・イズジョーノキセキの3頭が重賞勝ち馬が出ていますが、第2世代からはエピファネイアのみ、第3世代もサークルオブライフのみです。また第1世代もデアリングタクトがGⅠを3勝もしていることから、それぞれの世代のイメージは、1頭のスーパーホースの存在が評価を高めていると考えられます。
一般的に、種牡馬の評価は、AEIのような平均データよりも、1頭のGⅠホースの出現の影響が短期的には大きく出る傾向があります。事実、上記のディープインパクト産駒の初期の評価は、少なくとも第2世代が3歳クラシックを迎えるまでは散々なものでした。冷静にAEIで見れば、上記のように別次元の成績を残していましたし、第1世代からも桜花賞馬マルセリーナや、安田記念馬リアルインパクトが出ていました。しかし、どちらも世代トップのチャンピオンホースではなく、当時の評価は『やや期待外れ』という感じ。
あの血統評論で有名な吉沢譲治氏ですら、2011年の秋頃までは『種牡馬ディープインパクトは失敗かもしれない』と、産駒の馬格の無さなども併せてネガティブな評価を下していました。AEI等では別次元の成績をすでに残していたにもかかわらず・・です。
しかし、AEIの数字は、結局嘘をつきませんでした。ディープインパクトの第1世代からも、このあとトーセンラーとダノンシャークがGⅠを勝ちますし、第2世代からは、ジェンティルドンナという牝馬七冠馬や最初のダービー馬ディープブリランテが出てきて評価が一変します。そのあとは今に至るように、サンデーサイレンスと並ぶJRA史上最高の種牡馬という評価を獲得していきます。
ちなみに、当時のディープインパクトの種付料は初年度2007年の1200万円から、2010年には900万円、2011年には1000万円と、当初からは評価を下げていました。すでにAEIは3.0を超過している時期でしたし、2歳馬の活躍も別次元でありましたが、まだ世代のチャンピオンホースが出現する前だったため、種付料は低下気味という状況に留まっていました。
こう考えると、エピファネイアの種付料1800万円はどう評価すべきでしょうか?
1世代で1頭しかいないGⅠホースの存在に引きずられ過ぎている値段に見えてしまいます。
もちろん、現在の2歳リーディングサイヤー争いでは、圧倒的に種牡馬エピファネイアが1位であり、またミッキーカプチーノのように来年のクラシックの主役候補も輩出していますが、AEIが2.0を超えることはなく、ディープインパクトの種牡馬実績とは比較しようがありません。
ご参考までに、種牡馬キングカメハメハの当初4世代の世代別AEIもお見せします。
2006年生まれ 勝利数205 AEI 1.72 獲得賞金38億73百万円 重賞勝馬数3
2007年生まれ 勝利数243 AEI 3.03 獲得賞金70億29百万円 重賞勝馬数13
2008年生まれ 勝利数213 AEI 2.35 獲得賞金48億38百万円 重賞勝馬数3
2009年生まれ 勝利数184 AEI 1.74 獲得賞金35億96百万円 重賞勝馬数2
【参考】以下は産駒が2歳時のみの成績
2006年生まれ 勝利数 25 AEI 1.62 獲得賞金 3億80百万円 重賞勝馬数1
2007年生まれ 勝利数 30 AEI 2.14 獲得賞金 4億56百万円 重賞勝馬数2
2008年生まれ 勝利数 32 AEI 1.43 獲得賞金 3億12百万円 重賞勝馬数0
2009年生まれ 勝利数 19 AEI 1.05 獲得賞金 2億13百万円 重賞勝馬数0
こちらの方が、エピファネイアの種牡馬成績に近くてイメージしやすいかもしれません。それでも、AEIの絶対的な水準はキングカメハメハの方が上です。。しかも、この頃のキングカメハメハの種付料は400~600万円というレベル。キンカメが亡くなる直前でも1200万円というお値段ですから、キンカメとの比較感からも、今のエピファネイアの1800万円というお値段は高すぎると思います。
社台スタリオンステーションの皆さん、嫌がらせの記事みたいで申し訳ありませんが、もう少し種付料を適性水準に近づけないと、結局のところ、生産者のコストを必要以上にアップさせることになります。また、競走馬の値段も割高に出てしまうことになって、そのうち誰もセレクトセールで割高な馬を買わなくなってしまいます。
AEIは嘘をつきませんので、悪しからず。