A&K の NOTES

あちこちスケッチ行脚 。映画館で映画を見ることが楽しみ。いつか何処かでお会いしましょう。

完全なる首長竜の日

2018-05-02 | 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本を読んだ。

★完全なる首長竜の日
著者:乾緑朗
出版社: 宝島社

文庫本の帯に《映画化》と。
ならば読んでみよう、一気読み。

時空間の歪んだ語り口に初めはだいぶ悩まされました。
此れはいったい何を語っているのか?読みながらシュールな映像を思い浮かべます。
サスペンスの高まりに少しホラーが加わります。
しかし、一貫して、語り手である《私の視覚のぶれ》ですので、しだいにその感覚世界に慣れてゆき、そしてついにその謎が解けます。

物語はいわゆる《胡蝶の夢》がテーマ。
そのテーマを《いかに手際良く描ききるか》ということに作者は細心の注意を払いながら進行させます。
しかしその謎?に気づいた瞬間に、この物語への興味は薄れました。
ラスト、ちょっと衝撃でしたが、これも《イメージの増幅》の手段でしょう。
尽きることのない《現実と夢》の追いかけっこ。

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きのうの神様

2018-04-20 | 

本を読んだ。

★きのうの神様
著者:西川美和
出版社:ポプラ社

映画「ディア・ドクター」を観たのち、
こんな映画を作った西川美和という人はいったいどんな感覚の持ち主なんだろうか、
という素朴な好奇心が沸き上がってきた。
映画とは違った時間軸、
つまり小説ではいったいどんな感覚を見せているのだろうか。

「僻地の医療を題材にした映画を作りたい」とい想いから始めた取材は、
「ディア・ドクター」の脚本の素材となっているが、
映画だけでは収まらない様々なエピソードや人の生き方を、
本の短編集の中でも生かしている。

しっかり捕まえないと読み流してしまいそうな人の息づかいが語られている。
田舎しかも街から遠く離れた僻地で生きることそしていつか死ぬということ、
そこに関わるきれいごとではない医療の現実を、
人の内面にそっと入り込んで内側から覗くように描いている。
あっさり描いているが、視線はねっちり細やかである。
ボクのような淡白人間には得難い感覚ではあるが、
ある意味女性特有の感性かなとも感じ、その感性は、映画にも通じている。

「1983年のほたる」少女の内面の心理描写が面白い。
「ディア・ドクター」「満月の代弁者」は映画の番外編みたいで、
映画を観ていなければ、これはこれで面白い物語だ。

煩雑な日常時間がふっと止まったようで、
何処かに置き忘れてきたような感覚、
さらりと揺れるような余韻が残った。

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仙台ぐらし

2018-04-12 | 

本を読んだ。

★仙台ぐらし
著者:伊坂幸太郎
出版社:集英社


本屋さんで、伊坂さんのエッセイを見つけましたので読んでみました。

伊坂さんの日常の素の姿は?
どんな事書いてるんだろうか?
2011年以前の文章がほとんどですので、
現在からすれば、何処かボケています。
伊坂さんらしいおとぼけですが、
今となってはやっぱりどこかピンぼけ感がするんです。

他所もんにわかりやすく仙台のことを描いたろうとか、
ちょっとした洒落た小話で楽しませたろうか
とか、
などなど、
変な力みがなく好感が持てます。
でも何処か軽味に流れて、ピンぼけ感もします。

《ずうずうしい猫が多すぎる》
《消えるお店が多すぎる》
には、
わかるなぁ
へっ、へっ(笑い)
と、愉しませていただきました。

軽妙文章ですのでスラスラ読み終えました。
ちょっと意外感がのこりましたが、
でも、これが本来あるべき日常なのかなとも感じました。

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アート:“芸術”が終わった後の“アート” (カルチャー・スタディーズ)

2018-04-11 | 

本を読んだ。

★アート:“芸術”が終わった後の“アート” (カルチャー・スタディーズ)
著者:松井みどり
出版社: 朝日出版社


最近の《アート解説書》としては、とても解りやすく読みやすい。
(といっても、10年以上も前の本です)
90年代ぐらいまでの「アート」をざっくり知るにはわかりやすい。
そして、90年以後から21世紀初頭の現在に至る時代について。
松井さんはかなり整理して方向性を示してくれている。
が、僕は、
現在は前の時代の拡散再生産の時代ではないか?
アートインテリやアートファンの《プライベートおもちゃ》みたいなもの?
ぐらいに思っている。



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「世界の名画」謎解きガイド

2018-04-10 | 

★「世界の名画」謎解きガイド
著者:日本博学倶楽部
出版社: PHP研究所

名画と言われる作品には、何故か謎が多い。
謎が謎をよび、名画としての関心を喚起しつづける。

最新のかなり確信ある情報です。
中には、「えっ?」と、自分の脳内をひっくり返すものもあります。

「へぇ、そういうことだったんか」と
謎解きに妙に納得安心するものもあります。

寝る前の、やすらぎのひと時、
ページをめくるには最適です。

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ショパンを嗜む

2018-04-02 | 

本を読んだ。

★ショパンを嗜む
著者:平野啓一郎
出版社:音楽之友社

平野啓一郎が小説《葬送》の取材ノートをもとに、ショパンについて綴った本である。 

《日蝕》、《一月物語》と読んで、《葬送》が出版されるとすぐに購入。
ドラクロアについて読みたかったのである。
が、途中まで読んで、、、いまだそのままになっている。
ドラクロア、ショパン、、、、と想いながら、ああ、ほっている。
時間がたつのは早い。

まずはこの《ショパンを嗜む》から。

ショパンとドラクロアの友情についても書いているが、
面白いのは、
ドラクロアはショパンの音楽を愛したのに対し、
ショパンはドラクロアの絵を理解しなかったらしい。
芸術家同士の友情というのは、《互いの芸術の尊敬》とばかりではないということ。
意外とよくあることかもしれない。

因に僕の好きなショパンのピアノ曲は、

1、ポロネーズ6番(英雄)…格調高く、気高く、気が引き締まる。気合いを入れる時はこれに限る。
2、舟歌…ただただ美しい、とろける。
3、マズルカ(何番でもいい)…ショパンの故郷への想いが伝わる。

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島はぼくらと

2018-03-28 | 

本を読んだ。

★島はぼくらと
著者:辻村 深月
出版社: 講談社

辻村さんの書き下ろし小説。
彼女、直木賞作家、
ライトな感覚でいまや人気女性作家の一人になった。

母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。
美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。
父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。
熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。
(登場人物4人の紹介文はAmazonより)
4人の物語のようで、実は島に住む様々な人たちが登場する。
高校生青春物とは早計には言い切れない、辻村さんの想いが綴られているのだ。

島の子ども達は、中学までは地元の学校で過ごすが、高校はフェリーで本土の高校へ通う。
多くの子ども達は、島で育ちながらも、いずれは進学就職で島を離れる。
親はそのことを解りながら、《いずれは島を離れる子ども》を覚悟しながら子育てをする。
《故郷を巣立つ》ことの想い、
《故郷に留まる》ことの想い。
島の共同体社会の現実と未来を重ねながら、いろんな人の想いがいっぱい詰まった作品。
ちょっとうまくでき過ぎの物語ではあるが、
読書途中、そして読後に爽快感が残り心地よかった。
ひょっとしたら、
《これはとてもいい作品なのではないか》

 

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京都とっておきの道を歩く

2018-03-08 | 

本を読んだ。

★京都とっておきの道を歩く
著者:井上明久
絵や地図:藪野健
出版社:メタモル出版

この本で紹介されている道はよく知っている。
時々、探索気分で歩く。
タイムスリップ感に目眩がする。

京都本の挿絵は、まったりとした絵が多いが、
この本の藪野さんの絵は、線が鋭く、色彩の鮮度が高く、観ていて気持ちがいい。
このスケッチを手元でゆっくりみたく本を購入。
画家のスケッチである。

文章はね、別にどうでもいいんです。
作者も言っているが、観光案内本ではない。
でも、
もう少し丁寧な説明があってもいいと思うのだが、、、。

作者にその気がないので、ただただ漠然とした内容ではあるが、
京都の街は歩くのが一番いい。



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京都を古地図で歩く本

2018-03-06 | 

本を読んだ。

★京都を古地図で歩く本(文庫本)
著者:ロム・インターナショナル(編)
出版社: 河出書房新社

ただいま京都の本屋さんで大人気本です。
小ネタがいっぱい詰まった京都散策本。
ちょっとハナタカうんちくを語るにはちょうどいい。

学術的センスが漂っていたらもっといいのですが。
ガイドブック的文章が惜しいと思いました。

 

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祈りの幕が下りる時

2018-03-05 | 

 

★祈りの幕が下りる時(講談社文庫)
著者:東野圭吾
出版社: 講談社


加賀は体格がよく、精悍な顔つきをした人物だった。
三十歳前後だろうか。彫りが深く目つきが鋭い。
いかにも正義感が強そうな印象を受けた。
差し出された名刺には、
警視庁捜査一課という職場名が記されていた。
(本文より)


映画《麒麟の翼》での阿部寛そのものである。
阿部寛の姿が頭から離れず、本を読んだ。


登場人物の視点がそれぞれに重なりあい、
《過去の記憶》が濃密に炙りだされる。
《人の想い》が重なることで
《物語の時間》が生まれることを改めて認識。
ねっちりした人情物を読んでいる感覚。
浪花節みたいな。
東野圭吾はやっぱり大阪人やなぁ。


とくに東野ファンというわけではないが
《東野圭吾恐るべし》と再び納得した一作。


ちなみに、
いままで読んだ東野作品の中では、
『容疑者Xの献身』が深く身震いする。 

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京都、オトナの修学旅行

2018-03-05 | 

 

 

 

本を読んだ。

★京都、オトナの修学旅行(ちくま文庫)
著者:山下裕二×赤瀬川原平
出版社: 筑摩書房

「日本美術応援団」の続編です。
学生服のコスプレで、《オトナの修学旅行》という企画は面白い。
ですが、表紙を観た時、学生服というより、昔の海軍軍服のようにみえました。

修学旅行ということで、京都の名所を漫談調で紹介してくれます。
オトナというより言葉に期待しましたが、
内容がちょっと中高校生級のところが残念。


京都を《火事の都》と評したところが、やるっ!

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舟を編む

2018-02-17 | 

本を読んだ。

★舟を編む
著者:三浦しおん
出版社:光文社

先日、行きつけの本屋さんでたまたまこの本が眼に留まり、
《辞書作りの話が、何で舟を編む?》と頭の中に?マーク。
というわけで、単行本ですが、軽そうでしたので、購入。

三浦しおんさんの本を読むのは初めてでした。
そもそもがただいま人気絶頂の女性作家であることさえも知らなかったのですから。
《まほろ駅前多田便利軒》で第135回直木賞受賞(2006年上半期)。
自分の視界はこんなにも狭いのか。

女性らしい細やかな描写での辞書作りの物語は
《なるほど、なるほど》と興味深いことばかり。
紙質にまで拘るウンチク話はとても新鮮でした。

《西行》についての項目は、痺れました。
《なるほど、なるほど》

DVDをレンタルしてきましょう。

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凡人として生きるということ

2018-02-10 | 

本を読んだ

★凡人として生きるということ
著者: 押井 守
出版社: 幻冬舎

「凡人として生きるということ」ー押井 守さんー幻冬社新書

押井さんという人は「とてもナイーブ」というイメージを持っていた。インタビューなどのメッセージを読んでいてもそんな印象を与えてくれる。ところが、この本を読むと、「なんだぁ、なかなか大変な老獪オジンだぁ」とイメージ変化が起きてしまった。嘘でもいいからもう少し繊細でくすぐるような内容の文章を期待していたのに。

「自由自在なオヤジたちの生き方」の文章の中で、宮崎駿さんとの違いについて面白いことを述べている。

オヤジは大人なので、本音と建前に準じて生きていこうとする人もいる。それはそれで本人の自由である。問題は、建前に準じた生き方をしていたとしても、自分のやっていることの正体がわかっているか、ということだ。 、、、、、。

これは映画製作者としての、宮崎駿監督と僕の違いでもある。宮さんは青春を賛歌する作品を作り、僕は青春の苦味を描こうとしている.宮さんの映画に出てくる少年少女はどれも健全で、まっすぐで、若者にこうあってほしいという彼の思想があらわれている。僕の映画には、彼の作品に出てくるような若者は登場しない。
 宮さんと僕の間に違いがあるとすれば、若者の姿に限って言えば、宮さんは建前に準じた映画を作り、僕は本質に準じて映画を作ろうとしているという、映画監督の姿勢の差異だけだ。宮さんだって、事の本質はみえているはずで、あえて本質を語っていないだけだ。オヤジというものはそういう生き方もできるのである。

「これって、やっぱり老獪オジンの論法だな」
どちらもオヤジだろう?
この本には映画の話はよく出てくる。
いろんなことが書かれているので、なるほどそういうことかと思う事はあるが、
問題は読後の爽快感を感じなかったことである。
むしろ微妙な屈折感にも似たものを感じてしまった。

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クレィドゥ・ザ・スカイ

2018-02-08 | 

本を読んだ。

★クレィドゥ・ザ・スカイ
著者:森 博嗣
出版社: 中央公論新社

一人称の「僕」で語られる物語だが、
この「クレィドゥ・ザ・スカイ」では
、誰が語り部なのか、はっきりしない。
「フラッタ・リンツ・ライフ」の結末からすれば、「クリタ」のようだが、
登場人物の関係からすれば「クサナギ」とも思える。
最後の部分で新聞記者に「カンナミ」と呼ばせる事により、
この物語の不思議な連続性を暗示し、
想いは1冊目の「スカイ・クロラ」に戻る。
降りる事の出来ない心地よい回転木馬。

ここまで読み続けて、ようやくスッキリ感が出てきた。
抽象的な言葉で端的にいうと、
「日本的叙情感溢れる詩的な物語」である。
「無常をテーマに生と死を描いた物語」である。

空にいるような浮遊感と澄み切った空気に浸ろう。
哀しいくらい美しい物語のリズムに酔いしれよう。
ただそれだけ。

 

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フラッタ・リンツ・ライフ

2018-02-08 | 

本を読んだ。

★フラッタ・リンツ・ライフ
著者:森 博嗣
出版社: 中央公論新社

「スカイ・クロラ」シリーズ4冊目。
一人称で語られる「僕の視点」は、「スカイ・クロラ」ではカンナミ。
「ナ・バ・テア」、「ダウン・ツ・ヘヴン」はクサナギ。
そして、この「フラッタ・リンツ・ライフ」ではクリタ。

この物語の主人公たちは、薬害によって生じた、十代の子どものまま成長することがない「キルドレ」である。老いることなく時間を過ごすことになる彼らの視点は、余計なものが刻々とそぎ落とされ、澄んだ青空のごとくよりピュアーな世界に注がれる。生きることにとても誠実であり、時に詩的で、時に祈りにも似た視点である。

我々が「それこそ人生」というべき「この世のしがらみ」は、彼らにとっては未来への展望をまったく開くことのできないくだらない世界。より高く、より遠く、そしてより長く空を飛びながら、敵と戦うことによってのみ刹那的な生のビートを刻む。そして空を飛ぶ度により軽くより純度を増してゆく。個体として死に近づいていくようだ。

作者である森さんは、生きることを描きたいのか、それとも死を描きたいのか。

 

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