A&K の NOTES

あちこちスケッチ行脚 。映画館で映画を見ることが楽しみ。いつか何処かでお会いしましょう。

フィッシュストーリー

2017-09-04 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★フィッシュストーリー
監督:中村義洋
出演:伊藤淳史、高良健吾、多部未華子、濱田岳、森山未來 、他
2009/日本

伊坂幸太郎さんの「行ったり来たりの時空間」ワールドを、
中村義洋監督がどう自分の世界に取り込むか。
これが一番の興味だった。
「フィッシュストーリー」、原作は読むどころか、存在さえ知らなかった物語だが、伊坂さんお得意の「一つのキーワード」を繋げていくホラ話だろうということは想像できた。問題は中村監督がどこでマジで、どこでゆるいのかという一点である。

という具合にちょっと斜めに構えて、ゆったり気分で観ていると、所々でガツン、ガツンとやられた。繋がりがギクシャクしながらも結構それがマジだなと感じたのである。それぞれの時代シーンで出てくる俳優さんがそれぞれ個性的でガツンである。 2012年のオープニング、中古レコードショップ店。「世界の終わり」とか「彗星の衝突まであと5時間」とか、ほぼSFの世界。1982年の気の弱い大学生の自分探しの世界だけど、ちょっとホラーっぽく、なかなかハラハラ。99年の世界の終わりの予言。ノストラダムスを思い出させる。ほとんど漫画世界で嫌悪感さえ感じた。 さらに75年に解散したパンクバンド逆鱗(ゲキリンと読む所がミソ)の話。
これがバツグンに良かった。といってもここがこの物語の始まりだから。

〈逆鱗〉が最後にレコーデイングした「FISH STORY」の思いが、時代を繋ぐキーワードであることを知る。そして、09年のシージャックへと展開。可愛いー感と爽快感を感じた。
キーワードが繋がっているので、結末は想像できる。 再び2012年、正義の味方の活躍で人類は救われる。

5つの時代のエピソードが交錯し、時系列が自由に飛びまわるが、〈逆鱗〉の演奏する思いが、時空を越え伝わる。斉藤和義さんの音楽がジーンと沁みた。

感情があちこち飛び回り、ちょっと疲れたが、
それなりに楽しんだ。



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死神の精度

2017-09-04 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★死神の精度
監督:筧昌也
キャスト:金城武、小西真奈美、富司純子、光石研、石田卓也、他
2008/日本

人気作家の作品の映画化にあたり、製作チームは、イメージをどの方向に広げ、原作にない、あるいは足りない何を加えようとしたのか。

原作「死神の精度」は六話の短編で構成されているが、実質的にはそれぞれが繋がった連続性のある物語といっていい。伊坂さんのミステリーの魅力は、フャンタジーなイメージの連続性、コミックな会話、何気なく張られた伏線が最後になって見事に読者を欺くところ。非日常的な視点から人間社会を見ることによって、人間の生の面白さを見つけ、新しい物語を描こうとする意欲が感じられる。この手法自体は特に新しい試みではないが、見慣れた日常を再構築するうえで効果的やり方である。

読んでいると、この表現は新鮮だよねと思わせるフレーズがあちこち出てくる。時々思わせぶり表現だなと感じないわけでもないが、明らかに著作権は彼にあるなと感心する。「村上チルドレン」とよばれることもあるようだが、これも現代人気作家稼業の証である。

さて映画の話。「アヒルと鴨のコインロッカー」はかなりミステリアスでポップな物語展開に釘付けされ、最後のオチにストーンと解放された。今回はどちらかといえばいまいち陳腐な物語展開で、登場人物もどこか堅物で一昔前の人物像だった。昭和演歌の世界かと懐かしく感じたほど。しかし、じっくりと物語テーマを追いかけ、生きることの意味を問いかけることに一歩近づいている。原作では、不器用にうそぶく死神に焦点を合わせ、人物の細やかな表情や感性を描くには不十分だった。映画では死神に取り憑かれた?3人の人物にうまく焦点が合い、役者さんの演技力で真剣に生きようとする姿が描き出されていた。でも、ちょっと現実感が乏しい。

死は誰にでもやってくるので特別なことではないけれど、ひとり一人にとってはとても大切な事。生きる時間のリアリティを醸し出し、「生きる精度」もしくは「生きる純度」を描きたかったんだろうと思う。原作に不足な分、映画ではその方向で役者さんはがんばっていた。

死神は言う。「人が生きているうちの大半は、人生じゃなくて、ただの時間、だ。」人間が哲学するようになってから、いまだに人を引き付けてやまない魅力的な言葉である。

死神役の金城さん、主役なんだけど、物語の進行係みたいでした。
ワンちゃんは大当たり。  

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