映画を観た。
★ブロンド少女は過激に美しく
原題:SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA
原作:エサ・デ・ケイロス
監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
キャスト:リカルド・トレパ、カタリナ・ヴァレンシュタイン、ディオゴ・ドリア、他
2009/ポルトガル・フランス・スペイン
《妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし・・・》と、秘密めいた話だが、それはなんともお粗末な顛末で、これでは暇つぶしに他人に語るよりしかたがない。できるだけ優雅に、できるだけ謎めいて。それで結局、《過激に美しい》彼女は何者だったんだろうか。どうでもいい話だったが、その一点がとても気になった。原作者 エサ・デ・ケイロス(1845-1900)の本を読むよりしかたがないが、さて、日本で翻訳が出ているのかどうか。それくらい無名の短編小説である。タイトルだけが独り歩きしそうな恐ろしく美しい文学的タイトルである。
パソコンのキーボードがあったので、現代の話ではあるが、現在と過去が入り乱れ時間が歪みながら、しだいに感情までが揺らぎ始め、ドビッシーの「アラベスク」がハープの音色で流れた辺りから、迷宮の世界へと入り込む。そもそもドビッシーをハープで聞いたのは初めてである。夕暮れの街の景色は一層魔術的世界を演出し、時間を溶かしぐにゃりぐにゃり。ダリの絵画のような世界に落とし込められた。これが100歳を迎えた監督の夢物語である。私のような若輩者には解りようがない甘美で魔術的世界である。
ダイヤの指輪のシーンで「えっ、まさか」と思ったが、その「まさか」で夢物語は突然苦々しく終わった。余りにもこのオチは呆気無い。彼女はいったい何者だったのか?