映画を観た。
★レイチェルの結婚
監督:ジョナサン・デミ
キャスト:アン・ハサウェイ、ローズマリー・デウィット、デブラ・ウィンガー、他
2008/アメリカ
この映画は『レイチェルの結婚』というタイトルだが、アン・ハサウェイ演じるキムを中心に物語は展開する。アン・ハサウェイ(キム)の黒のアイラインに、ただならぬ気配を感じる。遠くを見つめるような視線だが、焦点が定まらず、精神の不安定さが滲み出る。生きる精気が感じられず、まるで人形のようだ。
キムというキャラクターはとても難しい。キムは麻薬から立ち直ろうとはするが、施設を出たり入ったり。今回は姉の「レイチェルの結婚」ということで、仮に出てきている。周りを気にせず所構わず煙草をスパスパ吸うのに、他人の自分を見つめる視線がとても気にかかる。人の気持ちを逆なでするかのように、気持ちを探るかのように、刺激な言葉を投げつけるが、自分を受け入れてほしい。いわゆる「肉親から捨てられた感情」で溢れている。そんなエキセントリックな女性キムを、アン・ハサウェイがすばらしく熱演。
人は誰でも、自分ではどうしても扱いきれない何かを抱えながら生きている。ただ普段は、「何もない」ようなふりをして生きているだけだ。多くの場合それでも生きていける。何とか帳尻を合わせて生きていく。でも、キムの場合は、余りにも深い傷であり、一人の力では克服できない。その「怖さ」を、家族の人間関係を描く事によって、一層際立たせている。
映像は手持ちカメラで撮っている。ブレ、揺れ、そしてその手軽さが、さながらドキュメントような臨場感を持たせ、キムの不安な心情にストレートに迫っている。音もほとんど編集することなく、その場の雰囲気を自然に伝え、感情移入しやすくしようという意図が読み取れる。
映画を観ていて気づく事は、多様な価値観が語れている事だ。家族それぞれの言葉が、それぞれの考え方、生き方を表現している。いい悪いの押しつけではなく、それぞれの生き方として描く。
いろんな人たちが登場し、世界の奥行きの広さも見せてくれる。そして、たえず、いろんなジャンルの音楽が流れている。多様な世界観を意識的に出しているように思えた。
多様な価値観を許容することは、ある意味、大変なことのようだ。
この世はいろんなもので満ち溢れているのに、、、、。
人はすぐにボーダーを引きたがる。
縄張り行動だろうか。