テレビ放送が始まった頃、先代の三遊亭金馬を見て大笑いをした。小学三、四年だったと思う。なんというか仕草や顔付きが可笑しく、近所の遊び仲間の子供達と一緒に笑い転げた。話の内容は良く憶えていないが、なんだか蒸かし芋を食べて放り投げるような話だった。
長じて金馬はやや異端とされ名人扱いしない世間の評価を知ったが、私は声顔に親しみが沸いてなんだか可笑しい金馬こそ、第一等の噺家だと思っている。明るく楽しい、これに如く落語はあるまい。
その金馬が大の釣り好きで、「江戸前釣り師」という本を書いている。十五六の頃だったと思う。たぶん新聞広告を見て?、親に頼んで買って貰ったのだろう。少年釣り師だった私には実に面白く何度も読んだ。
大切な愛読書だったのに、引っ越しを繰り返すうちなくしてしまった。もう十年近く、古本市の目録を見て出ていないか捜していたのだが、見当たらず諦めていた。
先日そうだこの手があったと思い付き、ネットで捜したら直ぐヒットした。もっと早くネット検索を思い付けば良かったのに迂闊だった。購入できたのは文庫本で、小振りなのは物足りないが、懐かしい文章に感激している。
何というか、金馬の人となりと生きた時代が渾然一体となった明朗闊達な文章で、世事歴史に関わる蘊蓄もあり味わい深い。面白さは記憶以上で銘菓を頂くようにゆっくり読み返している。開高健の釣り紀行も好きだが、金馬の文章はプロの作家に引けを取らない。
二人の対談が残っていれば最高だが、おそらく開高健が釣りにのめり込んだ頃には金馬は居らず、出会いはなかったろう、残念だ。もし実現していれば深更まで酒杯を傾けての法螺の吹き合い、おそらく開高健が参ったと弟子知りしたのではないか。
長じて金馬はやや異端とされ名人扱いしない世間の評価を知ったが、私は声顔に親しみが沸いてなんだか可笑しい金馬こそ、第一等の噺家だと思っている。明るく楽しい、これに如く落語はあるまい。
その金馬が大の釣り好きで、「江戸前釣り師」という本を書いている。十五六の頃だったと思う。たぶん新聞広告を見て?、親に頼んで買って貰ったのだろう。少年釣り師だった私には実に面白く何度も読んだ。
大切な愛読書だったのに、引っ越しを繰り返すうちなくしてしまった。もう十年近く、古本市の目録を見て出ていないか捜していたのだが、見当たらず諦めていた。
先日そうだこの手があったと思い付き、ネットで捜したら直ぐヒットした。もっと早くネット検索を思い付けば良かったのに迂闊だった。購入できたのは文庫本で、小振りなのは物足りないが、懐かしい文章に感激している。
何というか、金馬の人となりと生きた時代が渾然一体となった明朗闊達な文章で、世事歴史に関わる蘊蓄もあり味わい深い。面白さは記憶以上で銘菓を頂くようにゆっくり読み返している。開高健の釣り紀行も好きだが、金馬の文章はプロの作家に引けを取らない。
二人の対談が残っていれば最高だが、おそらく開高健が釣りにのめり込んだ頃には金馬は居らず、出会いはなかったろう、残念だ。もし実現していれば深更まで酒杯を傾けての法螺の吹き合い、おそらく開高健が参ったと弟子知りしたのではないか。