駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

時間が掛かり証明困難だと

2010年03月08日 | 世の中
 例えば、毎日ココアを一杯飲むと一年長生きをすると言われても、それを証明するのは容易ではない。毎日飲む人一万人と月に一杯しか飲まない人一万人を三十年観察して差が出るだろうか?。きちんと対照的に観察できるかも心許ないし、まあ実際的には実行不可能だろう。そこに風評の陥穽がある。
 十年一昔というのは日本では実に的を得た捉え方で、十年すると日本人の頭の構造が変わったのではないかと思うくらい、すっかり一昔前のことを忘れて他のことに目が移っているのが常だ。まして三十年という長さでは憶えている人の方が少ないだろう。
 似たような事例だが、血圧が下がる健康食品というのは、本当だろうか。これも本当のようで本当でないとはいいきれないという微妙なものだ。例えば145の血圧が144とか143とかに下がるくらいの血圧降下作用はあるらしい。その程度の降下作用はいやそれ以上の降下作用が僅かな減塩で実現できる。厳格に減塩を行えば10も15も血圧が下がる。人によっては正常化してしまう。そして僅か血圧を1や2に下げるのであれば、その健康食品でなくても食事内容への僅かな気遣いで可能だろう。高価だと効果があるように感じやすいが、健康食品を免罪符に食べ過ぎては元も子もない。メタボの人は何でも少しずつ食べて5%体重を落とすことだ。この少しばかりの体重減少が健康をもたらすことは科学的に証明されている。
 なんだかつい言い募ってしまったが、医療費が高いとぶつぶつ言うおばさんに、健康製剤を五年分何十万円で買ったなどと聞かされると、健康製剤でも副作用が出ることもあるんだがと思いながら、折角最善の費用対効果を考慮しながら診療しているのにと苛立ちを感じてしまうのだ。しかし、買う方も買う方売る方も売る方だと思う。
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