診察における問診の重要性は今も昔も変わらないはずであったが、どうもこの頃典型例が減少し思わぬ伏兵というか非典型例に出くわすようになった。検査の進歩により診断力が上がり、以前は見逃されていた症例が捉えられるようになった側面もあるとは思うが、それだけでなく確かに非典型例が増えてきている印象がある。
インフルエンザは鼻水や咳嗽といった感冒症状が先行しない急激な高熱発症が特徴で、倦怠感や多発関節痛などを伴うので流行期には話を聞いただけで検査をする前に診断が付くのだが、この頃は軽症非典型例が結構ある。
どうされましたか?。二三日前から喉が痛いんです。熱は?。37C前後の微熱が続いてます。咳や痰は?。少し出ます。だるいですか?たいしてだるくありません。診察では咽頭に軽度の発赤を認める他には異常がない。
唯一引っ掛かるのは微熱ではあるが熱が続いているところだ。違うと思いますがインフルエンザの検査をしておきますか?。はあ、お願いします。と答えるので、医者患者とも違うだろうなと思いながら検査をするとばっちりA型インフルエンザが陽性だったりする症例に出くわす。
インフルエンザワクチンが打ってあったんだ。それで軽いんですねと言えればよいのだが、ワクチンは打っていませんとお答えになる。ああ、そうですか、熱は高くないけど、インフルエンザのお薬は飲んでおきましょう、会社はちょっと休んで頂くことになりますと、続けることになる。
インフルエンザだけでなく、盲腸(急性虫垂炎)なども非典型例が増えたように思う。
何だか変だというのでは、非科学的で頼りないが、気候も景気も人心も昔聞き知っていたものと違ってきた。