駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

マジックの効かない人

2013年03月18日 | 人物、男

           

 今期の将棋NHK杯戦はまるで仕組まれたように最強者同士、羽生三冠対渡辺竜王の決勝戦となった。結果、渡辺竜王が羽生マジックを平然と受け流し、踏み込んで勝利し初優勝した。

 羽生三冠はNHK杯戦四連続優勝しており五連続優勝(25連勝)が掛かっていたのだが、渡辺竜王がそれを阻止した。何となくほっとした(羽生ファンには怒られるが)、というのは、解説の藤井九段がもしNHK杯戦五連覇(25連勝)すれば、それは人類が滅ぶまで破られることのない記録だろうと言ったからで、そんな恐ろしいことは目撃したくない気がしたからだ。

 渡辺竜王は唯一人羽生三冠に勝ち越している棋士で、羽生マジックが掛かりにくいようだ。これが如何に凄いことかは、将棋をご存じない方には説明しにくいのだが、羽生マジックというのは極く僅かに不利になった時に、相手がどうすれば有利を拡大あるいは有利を保てるかがわかりにくい局面に誘導する能力で、多くの棋士は勝利への道を歩んでいたら突然広い荒野が出現して方向を間違えてしまうのだ。

 羽生さんは天才としか言いようのない人だが、その人となりまではよく存じ上げない。一度お見かけしたことがあるが、天才のオーラというか凄みを漂わせておられた。渡辺さんは「妻の小言」を通じて多少私生活が垣間見え、飾らない正直で鷹揚なお人柄に親しみを感じている。

 藤井九段の解説は呟くように、味わい深い内容を楽しく語られるもので、決勝戦にふさわしいものだった。二天才に藤井九段がこの手はないと解説した手を指され、面目を潰されそうになったが悪びれず、次に展開されたのは感じがよかったと申し上げたい。

 司会で聞き手の矢内さんは、多分今期限りだろう。NHK杯戦の聞き手を務められるうちに柔らかく綺麗になられた。おじさんはどうぞ良いご縁が、と余計なことを申し上げたい。

コメント (2)
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