駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

見知らぬ世界

2018年12月18日 | 小考

      

 

 一昨日のNHKの将棋講座で視覚障碍者の方の将棋大会の様子が放送された。皆さん実に楽しそうに将棋を指されていた。優勝された方など対局姿勢も立派で実力も高段者と見受けた。私など目が見えていてもへぼなのに目が見えないのによく指せるなあと感心した。盲人用の将棋盤はマス目が盛り上がり触って駒の位置が分かるようになっている。駒は勿論触って、これは歩これは銀と確認できる。おそらく頭の中に将棋盤が思い浮かんでいるのだろう。プロの中には目隠し将棋が指せる人が居るので同じ理屈なのかもしれない。参加者が音楽と将棋は健常者と同じように楽しめますからと嬉しそうに話されるのを見て、目の見える自分の方がよほど世界が見えていない気がした。

 人間は五感から情報を入れ、それを脳で処理して世界を理解していると思われるが、その中で視覚の果たす役割は大きく80%などと言われる。私など目が見えなくては二メートルも動けない。今両目を閉じても、既に今までに視覚から得た情報で世界を理解しているから、生まれつき目の見えない人の世界を想像理解することは至難だ。大変だろうななどと言う感想では及ばない世界があるような気がする。それでも想像してみることは人間に欠かせない素養だと思う。見知らぬ世界を垣間見ることや理解できない世界を理解しようと想像力を働かすことで人間や世界をより深く理解できるのではと感じた。 

コメント
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