駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

忙しすぐ戻れない

2019年03月29日 | 小考

     

 

 医師の時間外労働が問題になっている。これを世間並みに短くするのは難しい感じがする。一つには伝統というか、俺達は毎日十五時間働いていた、修業時代は家には週三日帰れば十分、そうやって一人前になったんだという副院長院長が揃っていることだ。それが良いかどうかは議論があるところだろうが、医療界にそうした過去がある。二つには診療や研究は効率化がほとんど不可能な領域で、八時出勤十八時帰宅では優れた成果は得られない。

 さて、それで昔過労死が多かったかと言えばそうでもなかったのではないかと思う。上に長時間働いても過労は避けさせるような世間知というか工夫があった気がする。下に誤解を招くかもしれないが過労死をしない訓練というか強さというか狡さがあったように思う。そのままでは問題はあるだろうが、欠かせないものは何とか引き継ぐ必要がある。

 世の中は変わってゆくから旧弊を引き継ぐことはないが、何でも同じ安全均一でひとまとめにすると、科学技術で中韓の後塵を浴びることになる。そんな馬鹿なという人は現実認識が不足している。平成の安逸に浸れるのも、八時十八時でなく頑張った人達の力が大きい。平成の付けを払わせられる年号を人気取り(に見えてしまう)で自ら発表する言葉でまやかすその場しのぎの人とその人の足を引っ張ることしか能のないような人達では、次の年号の世は凌げまい。優れた人と優れた考えを見出し許容する、人を生かす世を目指して蟷螂の斧を振るいたい。

コメント
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