Where the Crawdads Sing 「ザリガニの鳴くところ」を読んだ。ノースカロライナの海岸線の湿地帯がどんなところか、行ったことはなく想像するしかないが、その場所がこの小説の背景になるだけでなくこの小説を生み出したと言っても過言ではないだろう。
幼くして母に去られ飲んだくれの父もやがて去り、一人の少女がたった独りでザリガニの鳴く湿地帯で僅かな理解者の手助けを受けて生き成長してゆく。周囲の人の眼には湿地帯に住む風変わりな少女と映り理解されないが、彼女の魂を理解し惹かれる少年やがて青年も現れる。事件が起きミステリーが展開されるのだが、見捨てられ湿地帯の多様な生物と共に生きてきた少女の魂がこの物語の核心と思う。
なぜこの年になって小説を読むか、それはたぶん本の虫だった母と愛読書と愛読著者の影響だろう。小野寺健先生のイギリス的人生を読み返し、藤本和子さんのどこにいても、誰といてもを手に取り、小説や物語りでしか知ることのできない世界を歩いている。