NHKスペシャルの未解決事件を見た。第一回はグリコ森永事件を取り上げている。ドラマ化して担当した事件記者の目から見た進行に、実際に事件を担当した人達の証言を連続させる趣向だ。いくつか新事実が明らかになり、面白く見たが凄い秀作というほどではなかった。
作品の出来はともかく、なぜこの事件が解決できなかったかが明らかになったことは大きな収穫と思う。つまり、駄目な指揮官と硬直した役所組織が犯人を取り逃がしている。もしかいじん21面相が見ていれば同じ感想をもったのではないだろうか。いつも同じ轍を踏んで、誤りが繰り返されるのにはうんざりというか、同時代を生きる者として臍をかむ思いがする。リーダーに相応しくない人が指揮を執っている組織が力を発揮するわけがない。どうしてそういう人が組織の中で昇進してゆくのだろうか。個人への非難もあるが、それよりもそういう人が役職に着きやすい組織の性質構造に問題ありと考える。
現行犯逮捕ができなかったことの反省分析はともかく、これだけ多くの遺留品があり少なくとも五名以上の犯人がいるのに十六年の歳月をかけて解決できなかったことはむしろ不思議な気がする。いみじくも担当した記者が吐露しているように、この事件を分水嶺に以降事件解決力が低下の一途を辿っていく。グリコ森永事件が躓きの第一歩になってしまった。どうも下降は捜査能力だけでなく、この時期以降日本のさまざまな分野で起きている恐れを感じる。
もう遅いのかもしれないが、異なる視点から洗いなおせば盲点が消えて新しい犯人像が浮かび上がるのではないかと思う。警察よ衆知を集めるのに躊躇うこと勿れと申し上げたい。
それにしてもこれだけの手がかりがあるのにと、思っております。